布の中央に穴をあけて頭を通して着る衣服のこと。原始社会に多くみられ、衣服の基本型の一つとされる。ポンチョponchoはその代表例であるが、これは本来、南米アンデス山地一帯に住むインディオの衣服であった。もともとは、麻とラマの毛の混紡の布地をさしていうことばであったのが、16世紀にスペイン人がペルーを征服したのち、服の形をさしていうようになった。
日本では奈良時代の裲襠(りょうとう)がその例であり、さらに古くさかのぼれば、『魏志倭人伝(ぎしわじんでん)』に、「長方形の一枚布の中央に穴をあけて頭を通して衣とした」という記述もある。現在では防寒用外衣や家庭のくつろぎ着などの実用着をはじめ、パーティー・ドレスに至るまで、さまざまな形で応用されている。
[菅生ふさ代]
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弥生時代の婦人の服装。「魏志倭人伝」に「衣を作ること単被(たんぴ)の如く,其の中央を穿ち,頭を貫きて之を衣る」とあるように,単被(単(ひとえ)の夜具)のような布類の中央に孔をあけて頭を貫いて着る簡略な衣服。袈裟衣(けさい)と同様に近代になってからの命名で,当時の呼称ではない。なお後代の武官の礼服である裲襠(りょうとう)も貫頭衣の形式をとるが,中国から伝来したもので両者間に関連はない。
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「ポンチョ」のページをご覧ください。
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…ナイジェリアのイボ族の女性は,結婚前は裸でいるが,婚後は木綿の巻きスカートをつける。タイの少数民族カレン族の既婚女性は色もののツーピースを着,未婚の娘は白い貫頭衣のワンピースを着ている。頭飾やアクセサリーによる表示も多い。…
…デンマークの青銅器時代の遺跡からは,スプラングsprangと呼ばれる織物と編物の中間的技法によって作られた帽子が出土しており,縫うという技法は,織物,衣服の形態とも関連した。古代地中海文明の衣服には,縫衣(貫頭衣=チュニック,トゥニカ)と無縫衣(巻き衣=ドレーパリー)とが見られるが,留具やひも,帯などで衣服を形づくる無縫衣に対し,縫衣は両脇や袖を縫い合わせて作ったものであった。一方,寒帯地方では,防寒のため四肢を包み,チュニックとズボンの二部式衣服も着用された。…
…たとえば大嘗会(だいじようえ)のさいに,神饌(しんせん)や陪膳(ばいぜん)に奉仕する女官(采女(うねめ))の装束では,白の小袖に紅の切袴(きりばかま),これに絵衣(えぎぬ)という白地に草花模様を泥絵で描いた袿(うちき)様の衣を着け,さらに波衣(なみごろも)という薄縹(はなだ)に白く青海波をあらわした唐衣(からぎぬ)様の短衣を重ね,その上に襅を打ちかけて着るのである。こういう近世の襅は,白の生絹に草花や水などの模様を藍摺(あいずり)にしたもので,形も祭事に男子の用いる小忌衣(おみごろも)と似て,身二幅に袖一幅でおくみのない,襟つきの垂領(たりくび)形であるが,本来は小忌衣が垂領形であるのに対して,襅は貫頭衣形のものであったらしい。すなわち〈ちはや〉という名称も〈いちはや〉の略語であるといわれているように,男女ともに必要に応じて衣服の上にこの貫頭衣形の短衣を着けて,ちょうどたすきをかけたように袖やたもとをその中へたくしこみ,動作をしやすくする目的の衣服であったようである。…
…古代ギリシア,ローマから中世を通して着用された下着,表着,外衣などのさまざまな種類の衣服をいう。ラテン語のトゥニカに由来し,元来は一枚の布の真ん中に穴をあけて頭からかぶり,前後に垂れた布を腰でひも結びして着たいわゆる貫頭衣で,人類の衣服の原初的な形態の一種であった。その後,ギリシアのキトンのように布を体に巻きつけた上に肩をブローチで留めたり,ローマのトゥニカのように布に穴をあけてかぶり,腋下を縫いふさいだような形に発展した。…
…【宮本 馨太郎】
【日本】
[概観]
日本は海に囲まれた島国で,温帯に属した東アジアの季節風地域にあり,その温暖湿潤気候は日本人の生活文化に強い影響を与えてきた。稲作農耕を生活の基盤とするようになった弥生時代より,貫頭衣(かんとうい)式のちはやや横幅衣(よこはばのころも)の腰巻のような南方系の衣服を基本形とするものを着用している。古墳時代には豪族の間で朝鮮半島経由の北方系衣服が採用され,ついで飛鳥,奈良時代の貴族は新しく隋・唐風の様式を導入し,北方系ないし内陸地方の服装が行われることとなった。…
…現在,中南米で広く用いられる貫頭衣の総称。アンデス高地の例でいえば,2枚の毛織布を合わせ,頭を通す部分だけを残して縫い合わせる。…
※「貫頭衣」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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