鮟鱇(読み)アンコウ

デジタル大辞泉 「鮟鱇」の意味・読み・例文・類語

あん‐こう〔‐カウ〕【××鱇】

アンコウ目アンコウ科の海水魚総称キアンコウホンアンコウ)とアンコウ(クツアンコウ)の2種がある。全長約1メートル。大きな口をもち、体は縦扁し、丸く、尾は小さい。骨は軟骨が多く、肉は弾力に富む。上唇の上部にある細長い突起を動かして小魚を誘い寄せて捕食。日本の沿岸海底にすむ。冬季に鍋料理にする。肝臓は特に美味。 冬》「―の骨まで凍ててぶち切らる/楸邨
1の動きが鈍いところから》愚かな人。
「この祐経、―らしくだしぬかれ」〈浄・加増曽我〉
呼樋よびどい」に同じ。

あん‐こ【××鱇】

鮟鱇形あんこがた」に同じ。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「鮟鱇」の意味・読み・例文・類語

あん‐こう‥カウ【鮟鱇】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「あんごう」とも )
  2. アンコウ科の海魚。全長一メートルに達する。頭部が扁平で大きく、胴は細く短い。口が著しく大きく、よく発達した内側にだけ倒れる歯をもち、きわめて貪食。うろこはない。尾鰭の前方の四本の棘は互いに離れる。第一番目の棘は誘引突起となり、その先端に擬餌状体と呼ばれる皮弁を備え、これを動かして動物を誘い、近づいたものを吸い込むようにして丸飲みにする。日本各地に分布し、岩礁付近や海藻の生えた海底にすむ。旬は冬で、あんこう鍋にして食べる。あんこ。あんご。あご。《 季語・冬 》
    1. [初出の実例]「鮟鱇(アンコウ)は 汁。さしみ。すい物」(出典:料理物語(1643)一)
  3. アンコウ科の海魚の総称。キアンコウ、ヒメアンコウなど。
  4. 山椒魚の類をいう。
    1. [初出の実例]「鮟鱇 アンガウ 有足魚也」(出典:伊京集(室町))
  5. ( などの動作が鈍いところから ) ぼんやりしている者、愚か者のたとえにいう語。
    1. [初出の実例]「暗向 アンカウ 虚者」(出典:黒本本節用集(室町))
    2. 「あんこうに巾着切が二三人」(出典:雑俳・柳多留‐一二(1777))
  6. ( などがぼんやりと餌を待っているところから ) 寄せ場などで、ぼんやりと仕事を待っている日雇い労働者をいったもの。
  7. ( が切り身にされて売られるのにちなみ、身を切り売りにする意から ) 娼婦の異称。近世末期の語。
  8. 和船の船尾材戸立(とだて)のほぼ中央部両側のかどで、中棚を取り付けるとき、その上縁がここに一致する。「切上げ」の俗称。訛って「あんご」と使われる場合が多い。〔和漢船用集(1766)〕
  9. ( に形が似ているところから ) 武具指物の名。袋形をしたもの。風嚢(かざぶくろ)
  10. 家の軒樋(のきとい)竪樋(たてとい)とをつなげるための曲がっている樋。よびどい。
  11. 唐物茶入れの形の一種。広口で肩がつまり、下(しも)ぶくれ。口付の口を開いた形をしているのでいう。
  12. 竹製の花器。一重切(いちじゅうぎり)の生け口の大きくて、の口に似た形をしたもの。あんこうがた。あくびがた。あんこうぎり。
  13. ひきがえる」の異名。〔物類称呼(1775)〕

鮟鱇の語誌

「鮟鱇」は古い漢籍には見えず、アンカウの語源も未詳。文明本などの諸節用集では、の意味には「鮟鱇」、の意味には「暗向」が専ら用いられているが、「暗向 アンガウ 魚」〔元亀本運歩色葉〕からは、この二つが通用してもいたことがうかがえる。中国では、形が琵琶に似るところから「琵琶魚」とも表記される。


あん‐こ【鮟鱇】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「あんご」とも。「あんこう(鮟鱇)」を短くいったもの ) =あんこう(鮟鱇)〔かた言(1650)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

動植物名よみかた辞典 普及版 「鮟鱇」の解説

鮟鱇 (アンコウ)

学名:Lophiomus setigerus
動物。アンコウ科の海水魚

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

今日のキーワード

発見学習

発見という行為の習得を目指す学習。または,発見という行為を通じて学習内容を習得することを目指す学習。発見学習への着想は多くの教育理論に認められるが,一般には,ジェローム・S.ブルーナーが『教育の過程』...

発見学習の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android