倉橋由美子(読み)クラハシユミコ

デジタル大辞泉 「倉橋由美子」の意味・読み・例文・類語

くらはし‐ゆみこ【倉橋由美子】

[1935~2005]小説家高知の生まれ。本名、熊谷由美子。明治大学在学中に「パルタイ」で注目される。「アマノン国往還記」で泉鏡花文学賞受賞。他に「聖少女」「スミヤキストQの冒険」など。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「倉橋由美子」の意味・わかりやすい解説

倉橋由美子
くらはしゆみこ
(1935―2005)

小説家。高知県香美郡(かみぐん)生まれ。明治大学仏文科を経て同大学院中退。大学4年在学中に『パルタイ』(1960)を発表、翌年女流文学賞を受ける。カフカ、サルトルら実存主義的な手法を巧みに取り入れ、当時流行の反小説を標榜(ひょうぼう)し、女流文学に新分野を開いて注目された。初期短編、および長編小説『聖少女』(1965)、『妖女(ようじょ)のように』(1966)など、若い女性の生理感覚的イメージが強い。アメリカのアイオワ州立大学留学(1966~67)後は、ややその前衛的作風を変えたが、『スミヤキストQの冒険』(1969)、『ヴァージニア』(1970)、『反悲劇』(1971)、『夢の浮橋』(1971)、『城の中の城』(1981)、『アマノン国往還記』(1986。泉鏡花賞)などいずれも寓話(ぐうわ)的な抽象小説というべきで、第二次世界大戦後のいわゆる戦後思想に対する風刺が一貫していた。近年は翻訳活動でも注目された。

田中美代子・橋詰静子]

『『倉橋由美子全作品』全8巻(1975~76・新潮社)』『『城の中の城』(新潮文庫)』『『アマノン国往還記』(新潮文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「倉橋由美子」の意味・わかりやすい解説

倉橋由美子
くらはしゆみこ

[生]1935.10.10. 高知
[没]2005.6.10.
小説家。本姓熊谷。明治大学在学中の 1960年,『明大新聞』に発表した小説『パルタイ』が評論家平野謙に称揚され,『文学界』に転載される。パルタイ (党) を信奉する青年エゴを女性のさめた目で描き,60年安保前後の鬱屈した時代状況のなかで注目された。 1961年女流文学者賞,1963年田村俊子賞受賞。ほかに『スミヤキストQの冒険』 (1969) ,『夢の浮橋』 (1971) ,『アマノン国往還記』 (1986,泉鏡花文学賞) など,日本の女流作家としてはまれな抽象的,寓話的な作風を示した。『倉橋由美子全作品』 (8巻,1975~76) がある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「倉橋由美子」の解説

倉橋由美子 くらはし-ゆみこ

1935-2005 昭和後期-平成時代の小説家。
昭和10年10月10日生まれ。35年の明大新聞学長賞をうけた「パルタイ」が注目され,36年女流文学者賞,37年田村俊子賞。「聖少女」「スミヤキストQの冒険」などを発表,独特の反リアリズムの作風を完成した。62年「アマノン国往還記」で泉鏡花文学賞。絵本ぼくを探しに」の翻訳や「大人のための残酷童話」などでも知られる。平成17年6月10日死去。69歳。高知県出身。明大卒。本名は熊谷由美子。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

367日誕生日大事典 「倉橋由美子」の解説

倉橋 由美子 (くらはし ゆみこ)

生年月日:1935年10月10日
昭和時代;平成時代の小説家
2005年没

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android