無形文化遺産(読み)ムケイブンカイサン(その他表記)Intangible cultural heritage

デジタル大辞泉 「無形文化遺産」の意味・読み・例文・類語

むけい‐ぶんかいさん〔‐ブンクワヰサン〕【無形文化遺産】

無形文化遺産保護条約に基づいて登録された、世界各地の芸能口承文学、社会的な習慣儀式祭事、自然に関する知識や慣習、伝統工芸技術などのさまざまな無形の伝統文化遺産。日本の文化では能楽結城紬などが取り上げられている。その他に、馬頭琴伝統音楽モンゴル)、バヌアツ砂絵、カラワヤ族のアンデス的宇宙観(ボリビア)など。
[補説]日本の無形文化遺産(かっこ内は記載年)
能楽(平成20年)
人形浄瑠璃文楽(平成20年)
歌舞伎(平成20年)
雅楽(平成21年)
小千谷縮越後上布(平成21年)
石州半紙(平成21年)※「和紙」に統合
日立風流物(平成21年)※「山・鉾・屋台行事」に統合
京都祇園祭山鉾行事(平成21年)※「山・鉾・屋台行事」に統合
甑島こしきしまトシドン(平成21年)※「来訪神」に統合
奥能登のあえのこと(平成21年)
早池峰神楽(平成21年)
秋保あきう田植踊(平成21年)
チャッキラコ(平成21年)※「風流踊り」に統合
大日堂舞楽(平成21年)
題目立だいもくたて(平成21年)
アイヌの古式舞踊(平成21年)
組踊(平成22年)
結城紬(平成22年)
壬生みぶ花田植(平成23年)
佐陀さだ神能(平成23年)
那智なち田楽(平成24年)
和食 日本人の伝統的な食文化(平成25年)
和紙 日本の手漉てすき和紙技術(平成26年)
屋台行事(平成28年)
来訪神 仮面・仮装の神々(平成30年)
伝統建築工匠の技 木造建造物を受け継ぐための伝統技術(令和2年)
風流踊り(令和4年)

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共同通信ニュース用語解説 「無形文化遺産」の解説

無形文化遺産

2006年発効の無形文化遺産保護条約に基づき、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が登録する無形の文化。伝統芸能や工芸技術、祭礼行事など多岐にわたる。183の締約国から選ばれた24カ国で構成する政府間委員会が毎年1回、60件程度を上限に審査。評価機関の勧告を踏まえて登録の可否を決める。登録がない国の審査を優先しており、日本など登録数の多い国は実質2年に1回の審査となっている。

更新日:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「無形文化遺産」の意味・わかりやすい解説

無形文化遺産
むけいぶんかいさん
Intangible cultural heritage

2003年の国連教育科学文化機関(ユネスコ)総会で採択された「無形文化遺産の保護に関する条約」(無形文化遺産保護条約)に基づいて選定される、芸能、伝承、慣習、儀式、祭礼、工芸など、不動産である「世界遺産」の範疇(はんちゅう)に入らない文化活動の総称。この条約の発効以前は、「人類の口承及び無形遺産の傑作の宣言」という名称で、2001年から隔年でリストアップされていたが、2008年に「無形文化遺産」の一覧表に統合された。2023年11月時点で、世界182か国がこの条約を締結しており、日本は、世界で3番目に早く、2004年(平成16)に締結している。この条約によって、世界遺産条約が対象としてきた有形の文化遺産に加え、無形文化遺産についても国際的保護を推進する枠組みが整った。

 同条約によると、無形文化遺産とは「慣習、描写、表現、知識及び技術並びにそれらに関連する器具、物品、加工品及び文化的空間であって、社会、集団及び場合によっては個人が自己の文化遺産の一部として認めるものをいう」(第2条)としている。無形文化遺産に含められるものとしては、(1)口承による伝統および表現(伝達手段としての言語を含む)、(2)芸能、(3)社会的慣習、儀式および祭礼行事、(4)自然および万物に関する知識および慣習、(5)伝統工芸技術、などがある。

[佐滝剛弘 2024年2月16日]

資料 日本の登録物件一覧

日本からの登録は2023年(令和5)11月時点で以下の22件である。


【2008年】
能楽
人形浄瑠璃文楽
歌舞伎(かぶき)(伝統的な演技演出様式によって上演される歌舞伎)

【2009年】
雅楽(ががく)
小千谷縮(おぢやちぢみ)・越後上布(えちごじょうふ)
奥能登(おくのと)のあえのこと
早池峰神楽(はやちねかぐら)
秋保(あきう)の田植踊(たうえおどり)
大日堂(だいにちどう)舞楽
題目立(だいもくたて)
アイヌ古式舞踊

【2010年】
組踊(くみおどり)
結城紬(ゆうきつむぎ)

【2011年】
壬生(みぶ)の花田植
佐陀神能(さだしんのう)

【2012年】
那智(なち)の田楽(でんがく)

【2013年】
和食:日本人の伝統的な食文化

【2014年】
和紙:日本の手漉(てすき)和紙技術(3件を一括登録)

【2016年】
山・鉾(ほこ)・屋台行事(33件を一括登録)

【2018年】
来訪神:仮面・仮装の神々(10件を一括登録)

【2020年】
伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術(国の選定保存技術のうちの17件)

【2022年】
風流踊(ふりゅうおどり)(41件を一括登録)

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事典 日本の地域遺産 「無形文化遺産」の解説

無形文化遺産

「無形文化遺産保護条約」(無形文化遺産の保護に関する条約)は、2003(平成15)年のユネスコ総会において採択され、2006(平成18)年発効した。世界遺産条約の適用外になっている無形の文化遺産に関してその継承・発展を図ることを目的としている。日本は2004(平成16)年世界3番目に締結し、2012(平成24)年4月現在143ヶ国が締約している。条約発効前にユネスコにより実施していた「人類の口承及び無形遺産に関する傑作の宣言」の90件(日本の「能楽」など含む)は、2008(平成20)年11月に本条約の代表一覧表に統合されている。日本からは「能楽」「人形浄瑠璃文楽」「歌舞伎(伝統的な演技演出様式によって上演される歌舞伎)」「雅楽」など21件が登録されており、2012(平成24)年3月には「和食」を記載申請している。
[選定機関] ユネスコ
[選定時期] 2006(平成18)年~
[登録・認定名] 能楽 | 人形浄瑠璃文楽 | 歌舞伎(伝統的な演技演出様式によって上演される歌舞伎) | 雅楽 | 小千谷縮・越後上布 | 石州半紙 | 日立風流物 | 京都祇園祭の山鉾行事 | 甑島のトシドン | 奥能登のあえのこと | 早池峰神楽 | 秋保の田植踊 | チャッキラコ | 大日堂舞楽 | 題目立 | アイヌ古式舞踊 | 組踊 | 結城紬 | 壬生の花田植 | 佐陀神能 | 那智の田楽

出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域遺産」事典 日本の地域遺産について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「無形文化遺産」の意味・わかりやすい解説

無形文化遺産
むけいぶんかいさん

世界無形遺産」のページをご覧ください。

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