改訂新版 世界大百科事典 「ゴ氏」の意味・わかりやすい解説
ゴ氏 (ゴし)
10世紀,ベトナムが中国から自立しようとした時期の土豪政権。呉氏とも書く。930年クック(曲)氏が南漢に敗れ,ベトナムは再度中国の支配下に入るが,翌年クック氏の旧将ズオン・ディン・ゲ(楊廷芸)が決起して漢将を敗走させ自立を回復した。しかし937年には牙将のキエウ・コン・ティエン(矯公羨)がズオン・ディン・ゲを殺して自立する。これに対しズオン氏の旧将ゴ・クエン(呉権)は938年に兵を挙げ,キエウとこれを助ける南漢の軍をバクダンザン(白藤江)に破って,939年ロアタイン(螺城)に都し,即位してゴ王と称したといわれる。944年ゴ・クエンは死に,かわって一時外戚のズオン・タム・カ(楊三哥)が権力を握るが,950年頃ゴ・クエンの子ゴ・スオン・バン(呉昌文),ゴ・スオン・ガプ(呉昌岌)が復権する。しかし965年頃スオン・バンの死とともにベトナムは再びスークアン(十二使君)といわれる乱世に入る。このような状況から,現在ではゴ氏が果たしてベトナムの統一権力を握ったかどうか,疑問も出されている。
執筆者:桜井 由躬雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報