日本大百科全書(ニッポニカ) 「レイトゥルギア」の意味・わかりやすい解説
レイトゥルギア
れいとぅるぎあ
leitourgia ギリシア語
古代ギリシアの公共奉仕。語義上は民または共同体laos, leitonのための奉仕ergon。紀元前5、4世紀のアテネのものの実態がもっともよくわかっている。市民に限らず在留外人をも含めて公共の目的のために私財支出をもって奉仕することを富裕者に義務づけた制度であって、定例のものと臨時のものとがあった。定例公共奉仕の代表的なものは、演劇上演のための合唱隊奉仕choregiaや体育競技会開催のための公共奉仕gymnasiarchiaであり、アテネ海軍の軍船である三段櫂船(かいせん)の装備や船具を整える三段櫂船奉仕は臨時の奉仕に属した。この三段櫂船奉仕の原形は、前5世紀初めのテミストクレスの造船計画、あるいはそれ以前のナウクラリア制度にみいだされる。前4世紀には公共奉仕の財政的義務負担は富裕者の肩に重く感じられ、指名撤回を求める裁判手続が設けられた。キリスト教の時代になると、レイトゥルギアの語は「神に対する奉仕」として教会堂における礼拝liturgy(英語)を意味するようになった。
[馬場恵二]