六訂版 家庭医学大全科 「二分脊椎」の解説
二分脊椎
にぶんせきつい
Spina bifida
(子どもの病気)
どんな病気か
二分脊椎は高頻度にみられる先天異常で、世界的にみた発生率は出生1000人あたり1人前後です。日本においては3000人あたり1人と欧米に比べて低率でしたが、近年増加しています。
二分脊椎は
原因は何か
二分脊椎の発生には、複数の病因の関与が推定されます。環境要因として胎生早期における葉酸欠乏、ビタミンA過剰摂取、抗てんかん薬の服用、遺伝要因として人種、
症状の現れ方
①嚢胞性二分脊椎
嚢胞性二分脊椎は
脊髄髄膜瘤ではしばしば皮膚欠損による髄液
脊髄病変による症状は両下肢の運動麻痺、感覚低下と膀胱直腸障害の組み合わせが多く、脊髄奇形の程度が強く位置が高いほど障害が重くなります。膀胱の機能障害(
②潜在性二分脊椎
潜在性二分脊椎では無症状の症例と脊髄障害の症状を呈する症例とがあります。後者の場合、しばしば
検査と診断
嚢胞性二分脊椎の診断は出生前に超音波診断や羊水検査でわかることが多く、遅くとも出生時には外表の所見から明らかになります。潜在性二分脊椎の場合は、病変部の皮膚の変化(多毛、血管腫、陥凹など)や脂肪腫の存在が診断のきっかけになりますが、気づくのが遅れることもよくあります。
脊椎・頭部の画像検査(CT、MRIなど)で病変を詳しく観察し、治療を行います。
治療の方法
①嚢胞性二分脊椎
出生時に髄液漏のある症例では、出生後48時間以内に手術(皮膚と神経の分離、皮膚の縫合)を行います。術後に水頭症が
②潜在性二分脊椎
無処置でよい例もありますが、脂肪腫の切除、脊髄稽留の解除、皮膚洞の切除などの手術が必要な例もあります。
病気に気づいたらどうする
嚢胞性二分脊椎患児の治療には脳神経外科、小児科、リハビリテーション科、整形外科、泌尿器科を含む包括的診療チームが必要ですので、このような体制の整った病院を受診するとよいでしょう。
関連項目
水口 雅
二分脊椎
にぶんせきつい
Spina bifida
(運動器系の病気(外傷を含む))
どんな病気か
胎生期に
原因は何か
椎骨の一部欠損は遺伝的因子によると思われる場合もありますが、多くは胎生期の環境因子によると考えられています。
症状の現れ方
二分脊椎は
顕在性は、椎弓の欠損しているところから髄膜のみが脱出する
一方、潜在性は椎弓の
検査と診断
顕在性二分脊椎は、腰背部の腫瘤により病変は容易にわかりますが、潜在性二分脊椎はX線検査などの画像検査が必要です。顕在性の場合は水頭症の検査、自・他動運動検査、肢位、変形、感覚などの検査を行い、どの脊髄レベルまでが正常であるかを調べます。このほかに心奇形や消化管奇形などを伴うことがあるので、合併奇形の検査も必要になります。
治療の方法
治療が必要なのは顕在性二分脊椎で、赤ちゃんをうつ伏せにして、腫瘤の保護と無菌的処置を行います。露出した髄膜や脊髄を感染から守るために、生後早期に閉鎖手術が必要です。
潜在性二分脊椎は出生時に症状が出ることはないので、治療の対象にはなりません。しかし、時に脊髄神経の異常を伴っていることがあるので、経過だけはみるようにします。ある程度成長して検査などが行いやすくなった時点でMRIを行い、脊髄神経の状態を調べます。
久保 紳一郎
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報