日本歴史地名大系 「因幡民談記」の解説
因幡民談記
いなばみんだんき
一〇巻
異記 稲場民談記・稲葉民談記 小泉友賢著
成立 元禄元年頃か
写本 鳥取県立図書館(一五巻八冊本)ほか
解説 鳥取藩の侍医であった小泉友賢によって編集された藩内初の地誌・歴史書。自筆本は享保年間火災によって失われたが、友賢の墓誌銘および「因幡志序」によると、もと一〇巻であったという。延宝元年頃ほぼ完成し、その後加筆されて元禄元年頃には完成したとされる。内容は因幡国郡郷山川図名所・国主之部・筆記之部・郡郷之部・詩文之部・諸歌誹諧之部・神社之部・仏閣之部の八部に分けられている。このうち筆記之部にはすでに散逸している貴重な文書・記録を含み、また郡郷之部には因幡国郡郷保庄記という貴重な史料を載せるなど資料的価値が高い。しかし本書の中心である国主之部については、戦国期因幡・但馬両国の山名氏の対立抗争の事実が隣国但馬村岡に六千七〇〇石を有する旗本交代寄合山名家への遠慮から、十分に記述されていないなどの限界をもつと指摘されている。
活字本 因伯文庫一―二・因伯叢書一
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報