知恵蔵 「日米新ガイドライン」の解説
日米新ガイドライン
日米間の軍事的な同盟関係を規定する基本には、日米安全保障条約がある。安保条約では、日本が米国に基地を提供することと、日本の施政の下にある領域に対する攻撃に日米が共同行動をとることが定められている。ただし、海外で米軍の支援を日本が行うことは、日本国憲法が交戦権を認めていないことから定めることはできない。このため、東西冷戦の深刻化と米国とソ連邦(当時)の対立激化を背景に、ソ連の侵攻を想定して1978年に策定されたのが、初めてのガイドラインである。冷戦終結後の97年には、北朝鮮の弾道ミサイル発射実験などにより朝鮮半島有事を念頭に改定が行われ、2度目のガイドラインが策定された。以降18年ぶりとなる15年の改定は、中国の海洋進出や米国の軍事費削減など国際情勢の変化を反映させたものといわれている。
15年の改定では、「切れ目のない対応」と称し日米が有事のみならず平時から軍事的な協調行動を行うという。更に、周辺国有事の際の後方支援に限らず、地域を限定せず、極論すれば世界のどこででも自衛隊は米軍の後方支援をする。また、宇宙空間やネット空間についての安全協力なども盛り込まれた。日本側としては、安倍政権の主張する「積極的平和主義」や「集団的自衛権」の行使容認の流れに乗ったもので、今国会に政府が提出する、新たな安全保障法制を先取りした内容となっている。憲法や安保条約が許容する防衛協力を逸脱した拡大解釈ではないか、軍事支援が地理的にも内容的にも際限なく拡大するのではないかと懸念する声が大きい。
(金谷俊秀 ライター/2015年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報