注意欠如多動性障害(ADHD)は、多動性・
学童期では出現率が3~5%、男児に多く、男女比は3~5対1です。
多動と衝動性を特徴とする行動の障害については、
画像の研究から、
基本症状は不注意、多動性、衝動性です。
不注意は、細かいことに注意を払えないという注意力の欠如、注意を持続できない、周囲の刺激に気が散る(転動性が高い)などです。日常生活場面では、不注意な間違い、始めたことをやりとげない、言われていることを聞いていない、忘れ物・落とし物が目立つなどがあります。
多動は「活動の過剰」です。絶えずせわしく動きまわる、体の一部をくねくねもじもじ動かす、多弁などとして観察されます。
衝動性は結果を考えずに判断・行動することで、その結果、自分や他人が危険にさらされる、物を破壊するなどがあります。順番を待てない、人の妨害や邪魔になる、質問を聞き終えないで出し抜けに答えるなどとして現れます。
通常、症状は幼児期から認められますが、集団生活の場で支障を来して初めて気づくことが多いようです。どの症状が現れるかによって、多動性衝動性優勢型、不注意優勢型、混合型に分けられます。
反抗的・反社会的行動、学習障害、不安・抑うつ、その他の精神医学的障害を合併していることが少なくありません。
DSMⅣでは、不注意および多動性衝動性を表す行動を、それぞれ9つからなるリストで示しています。どちらも6項目以上に該当する時、その症状をありとし、さらに以下の条件を満たす時にADHDと診断されます。
①年齢に不相応で、適応的でない、②6カ月以上続く、③7歳以前に始まる、④2つ以上の場面で現れる、⑤社会的、学業的機能に障害となる、⑥
診断は、面接、および診察室と検査場面での観察所見、標準化された評価尺度などを総合して行われます。とりわけ、生育歴と、家庭や学校など複数の場面からの情報が重要です。多動性、衝動性、不注意などの症状を直接測定する検査が客観的指標として役立ち、治療効果の指標としても利用されています。
児童期のADHDの治療目標は、この障害をもつことによる有害な影響を最小限にし、子どもが本来もっている能力を発揮し、自己評価を高め、自尊心を培うことです。そのために多面的な治療が必要とされます。
具体的には 薬物療法、ペアレント・トレーニング(親の訓練)、ソーシャル・スキル・トレーニング(生活技能訓練)、教育的介入などがあります。
一般的に発達とともに症状は軽くなりますが、基本的特徴をもち続けることが多いようです。適切な治療や対応によって、これが生活の支障とならないような工夫が求められます。ADHDに気づかれずに放置されたままでいると、反抗的になったり、不安・抑うつを来すなど二次的な問題を抱えるリスクが高まります。
ADHDは、しばしばまわりの大人や子どもにとって迷惑ごととしてとらえられます。しかし、ADHDをもつ子どもがこれらの症状のために否定的な注目を浴び、自己評価を損なうことこそが最も有害な影響といえます。
したがって、あくまでも子どもの利益のために病気を理解し、適切な治療を受けられるように考えるべきです。日本では、児童精神科および小児神経科が主な診療の窓口になっています。
上林 靖子
不注意と、多動
先天性の、脳の微細な機能的障害が原因であると考えられていますが、詳細は不明です。
多動衝動性の多くは幼児期の早くから認められることが多く、幼児期から小学校低・中学年にかけて最も激しくなります。その後、中学生の年齢になると落ち着いてきます。注意欠如に気がつくのは多動の場合よりも遅いのですが、症状は大人になるまで多少なりとも続くことが多いといわれています。
まず知能検査と脳波測定を行います。知能検査では、全体のIQは正常範囲でも内容をみると能力にばらつきがあることが多いという特徴があります。脳波測定では特徴的な所見はないといわれています。
診断は、不注意と多動衝動性のどちらか一方を満たす、あるいは両者を満たす、症状の出現が7歳未満である、症状による障害が2つ以上の場面(たとえば学校と家庭)で存在するなどが満たされることによって確定されます。
治療は心理的治療と薬物療法に大別されます。心理的治療の要点は二次的な
薬物療法は中枢刺激薬であるメチルフェニデートの徐放錠(コンサータ)と、ノルアドレナリン・トランスポーターの阻害薬であるアトモキセチン(ストラテラ)がADHDに対して保険適用を認められています。
時に“しつけの問題”として親が学校などから責められていることも多く、まず両親、教師など本人に関わる大人が障害について十分に理解し、認識を共有することが大切です。また、新たな刺激や複数の刺激の処理が困難なことが多いため、学習する場所をいつも一定にする、机の上やまわりに余分な物を置かない、などの生活環境の整備も心がけましょう。
松本 英夫
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
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