… 日本の社会の場合,漂泊民と定住民との分化が多少とも現れてくるのは,農業の開始以後であるが,14世紀ごろまでは,その区別は必ずしも明確でなく,両者の関係は流動的であった。漁労民―海民,狩猟・採集民―山民,さらに芸能民,呪術者,宗教者,商工民等が,山野河海で活動し,道を通り,市で交易活動を展開する限りにおいて,彼らは漂泊民,遍歴民として姿を現すが,その根拠地においては若干の農業に携わる場合が多かった。釣糸を垂れ,網を引く海人(あま)や斧を持つ山人,遊行女婦(うかれめ)や乞食人,山林に入り,道路を遊行する聖(ひじり),さらに時代を下れば廻船人,塩売・薬売から鋳物師(いもじ)にいたる商工民,馬借・車借などの交通業者,遊女・傀儡(くぐつ)等の芸能民などは,みなそうした人々であり,11世紀に入れば,これらの人々を〈道々の輩〉(道々の者)として一括する見方も現れてくる。…
※「海民」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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