熱・暑(読み)あつい

精選版 日本国語大辞典 「熱・暑」の意味・読み・例文・類語

あつ・い【熱・暑】

〘形口〙 あつ・し 〘形ク〙
[一] 外気や物・身体の温度が著しく高く感じられる。
① (熱) 物体液体、また気体など、体の一部で感じるときの物の温度が、自分の体温よりも著しく高く感じられる。熱気を感じる。⇔冷たい
※宇津保(970‐999頃)嵯峨院「あつき火の中に住まふここちして」
② (暑) 気温など、体全体で感じる外気の温度が、人間の肉体に苦痛を覚えさせるほどに高い。暑気を感じる。《季・夏》⇔寒い
蜻蛉(974頃)中「風はいみじう吹けども、木蔭なければ、いとあつし」
③ 体温が平熱を超えて高い。病気でからだが熱っぽい。
源氏(1001‐14頃)夕顔「御ぐしも痛く身もあつき心ちして、いと苦しくまどはれ給へば」
[二] (熱) 心が高ぶって身内が熱くなるさま。興奮して前後を忘れるさまをいう。
① 怒りに逆上するさま。→熱くなる①。
② 男女が恋し合って夢中なさま。→熱くなる②。
③ (「身があつい」の形で) 窮地に陥るさま。せっぱつまって困るさま。苦しい。
浄瑠璃生玉心中(1715か)上「身があつければどのよな事しやうも知(し)れぬ」
④ 物事に熱中するさま。情熱のはげしいさま。感動感激などの度合がはげしいさま。
みだれ髪(1901)〈与謝野晶子臙脂紫「やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君」
[語誌]温度感覚を表わす形容詞は、上代では「あつし」「さむし」「ぬるし」「すずし」の四語による体系をなしている。中古になって温暖系に「あたたか」、寒冷系に「ひややか」が現われ、「あつし」「ぬるし」、「さむし」「すずし」のそれぞれの中間の温度感覚を表わして使われるようになり、一時六語による使い分けとなるが、中古半ばに「つめたし」が現われて複雑化していく。
あつ‐が・る
〘自ラ五(四)〙
あつ‐げ
〘形動〙
あつげ‐さ
〘名〙
あつ‐さ
〘名〙

あつかわあつかはし【熱・暑】

〘形シク〙 (動詞「あつかう(熱)」の形容詞化)
① 暑苦しい。
※石山寺本大般涅槃経平安中期点(950頃)九「能く一切の欝蒸(アツカハシキ)悩みを除く」
※源氏(1001‐14頃)常夏「うすものの単衣(ひとへ)を着たまひて臥し給へるさまあつかはしくはみえず」
② わずらわしい。うるさい。
※源氏(1001‐14頃)蛍「いとあまりあつかはしき、御もてなしなり」
あつかわし‐げ
〘形動〙
あつかわし‐さ
〘名〙

あつか・う あつかふ【熱・暑】

〘自ハ四〙
① 熱に悩む。暑くて苦しむ。
※書紀(720)神代上(水戸本所引江訓)「伊奘冉尊、火神軻遇突智を生まむと且(す)る時に、悶熱(アツカヒ)懊悩(なや)む。因て吐(たぐり)す」
② 病気や心労などで苦しみ悩む。思いわずらう。
※書紀(720)継体八年正月(前田本訓)「妃、床に臥して涕泣(いさ)ち、惋痛(アツカヒ)て自ら勝ふること能はず」

あつ・し【熱・暑】

〘形ク〙 ⇒あつい(熱)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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