世界大百科事典(旧版)内のPicanderの言及
【受難曲】より
…これらのテキストでは聖書の言葉はほとんど完全に排除されているが,前者はヘンデル,テレマン,R.カイザー,マッテゾンらによって,後者はカルダーラ,N.ヨンメリ,パイジェロらによって作曲された。他方,J.S.バッハの《ヨハネ受難曲》(1724)は,部分的にブロッケスの詩をとり入れてはいるが,福音史家の記述を中心として受難曲本来の叙事詩的な性格を回復した名作であり,彼の《マタイ受難曲》(1729)は,ピカンダーPicander(本名Christian Friedrich Henrici,1700‐64)の宗教詩をとり入れながらもさらに聖書的な性格が強く,叙事的・抒情的・劇的な要素を壮大な規模で有機的に統合した記念碑的な作品である。
[受難オラトリオ]
バッハの没後は,宗教的な劇音楽の演奏の場所がしだいに教会から演奏会場へ移るのに伴って,本来の意味での受難曲は衰微し,代わってイエスの受難を題材としたオラトリオが主流を占めるようになった。…
【マタイ受難曲】より
…とくにJ.S.バッハの作品(BWV244)が有名で,プロテスタント教会音楽の最高峰に数えられる。《マタイによる福音書》26~27章を中心にして,ルター派の賛美歌(コラール)と抒情的な宗教詩を配したピカンダーPicander(本名Christian Friedrich Henrici,1700‐64)の台本によって作曲され,1729年4月15日(一説では1727年4月11日)の聖金曜日にライプチヒのトーマス教会で初演された。全体は2部68曲から成り,十字架の預言,最後の晩餐,ゲッセマネの祈り,捕われ,裁判,ゴルゴタの丘,死と埋葬などの場面が,福音朗読者(テノール)の朗唱を中心として,劇的な合唱や内省的なアリア,また味わい深いコラールによって感動的に描かれ,キリスト受難の意味を鋭く問いかける。…
※「Picander」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」