一体（読み）イッタイ

デジタル大辞泉

いっ‐たい【一体】

［名］
１ 一つのからだ。また、同一のからだのようになっていること。同体。「一体を成す」「夫婦は一体」「三位さんみ一体」
２ 一つにまとまっていること。「クラスが一体となる」
３ 一つの体裁ていさい・様式。「書の一体」
４ 仏像・彫像などの一つ。「菩薩像一体」
５ （多く「一体に」の形で副詞的に用いて）全体にならしていうさま。総じて。概して。「一体に今年は雪が多い」「日本人は一体に表情に乏しい」
［副］
１ 強い疑問や、とがめる意を表す。そもそも。「一体君は何者だ」
２ もともと。元来。
「―生徒が全然悪いです」〈漱石・坊っちゃん〉
[類語]一般・全般に・総じて・概して・多く・おしなべて・おおむね・大概・普通・通例・通常・総体・およそ・広く・遍あまねく・広い・幅広い・手広い・広範・広範囲・多方面・多角・多面・多岐・さまざま・各種・種種・諸種・いろいろ・多様・多様化・多面的・多種・多種多様・多彩・数数・いろんな・とりどり・色とりどり・諸もろもろ・百般・万般・諸般・多元・多元的・多角的・横断的・複眼的・雑多・万よろず・各人各様・十人十色・千差万別・マルチ・事事物物・種種雑多・各様・種種くさぐさ・玉石混淆こんこう・凡百ぼんぴゃく・百態・百事・百千・万端・各般・数多あまた・数多すうた・数次・幾度・等等・諸相・諸物・山ほど・ざら・あれこれ・何やかや・何だかんだ・何のかの・何くれ・何くれとなく・あれやこれや・ごちゃごちゃ・枚挙に遑いとまがない・十指に余る・あの手この手・エトセトラ

出典　小学館

精選版 日本国語大辞典

いっ‐たい【一体】

1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
   1. ① 全体が一つのものになっていること。一つにまとまっていて、分離できないもの。
      1. (イ) 一つの身体。同じからだ。同一体。
         1. [初出の実例]「此神は木の花さくや姫の神と申て、富士一躰也」(出典：俳諧・奥の細道（1693‐94頃）室の八島)
      2. (ロ) 一つの関係。分離しがたい関係。同類。
         1. [初出の実例]「衆生の三道、彌陀の万徳と、もとより空寂にして、一体無礙(むげ)なりといひき」(出典：栄花物語（1028‐92頃）玉のうてな)
         2. 「彼母与件狼藉人一躰同心之間」(出典：東寺百合文書‐へ・文保元年（1317）七月晦日・僧定縁起請文)
         3. [その他の文献]〔儀礼‐喪服子夏伝〕
   2. ② ( 「体」は助数詞 ) 仏像、彫刻の像などの一つ。仏や神そのものにも用いる。
      1. [初出の実例]「日ごとに阿彌陀仏一躰を供養せさせ給ふ」(出典：法華修法一百座聞書抄（1110）六月一九日)
   3. ③ 一つの風体。一つの風趣。一つの様式。
      1. [初出の実例]「詞花集は〈略〉あまり一躰ばかりにをもむけられたる故にや」(出典：言塵集（1406）一)
      2. 「伊川の器量・朱子の志、みな聖人の一体あり」(出典：集義和書（1676頃）一)
   4. ④ ( 「に」を伴って副詞のように用いられることもある ) 全体。全般。一般。おしなべて。
      1. [初出の実例]「夜話四睡、是又珍抄、一躰おとなしく候」(出典：半残宛芭蕉書簡‐貞享二年（1685）正月二八日)
      2. 「どうも近来は新聞紙が一体に面白くないでは御座いませんか」(出典：雪中梅（1886）〈末広鉄腸〉下)
2. [ 2 ] 〘 副詞 〙 ( [ 一 ]④の意から ) ある事柄を全般的、概括的に考えていうときに用いる。そもそも。
   1. (イ) ある結論づけをするような場合。だいたい。もともと。一般的にいって。
      1. [初出の実例]「わしは一体(イッタイ)豆腐が大好きぢゃ」(出典：滑稽本・浮世風呂（1809‐13）四)
      2. 「一体(イッタイ)旧記の著者などと云ふ者は、平凡な人間や話に、余り興味を持たなかったらしい」(出典：芋粥（1916）〈芥川龍之介〉)
   2. (ロ) 特に疑問の気持を強めていう場合。また、相手に詰問する場合。結論的になんだか全くわからないという気持が含まれる。ぜんたい。いったいぜんたい。
      1. [初出の実例]「鳥羽画の如し・いったい飯はどこへ喰ふ」(出典：雑俳・机の塵（1843）)

いっ‐てい【一体】

1. 〘 名詞 〙
2. ① 他とは違った一種の趣。一つの特色。一風(いっぷう)。
   1. [初出の実例]「一体異様(いやう)したるやうに、風体を持つべし」(出典：風姿花伝（1400‐02頃）唐事)
3. ② 同類。同じ様式。
   1. [初出の実例]「物を縫女奉公人を、おゐまといへり。さてはこしもとなどとわかれたれども風俗一躰(イッテイ)なり」(出典：仮名草子・都風俗鑑（1681）二)

出典　精選版 日本国語大辞典