典型(読み)テンケイ

デジタル大辞泉 「典型」の意味・読み・例文・類語

てん‐けい【典型】

規範となる型。基準となるもの。
「此等の人の遺せる標準のり―に由て観るときは」〈中村訳・西国立志編
同類ないし同種のものの中で、それらの特性を端的に示しているもの。代表例となるもの。「現代の若者の典型」「アールヌーボー典型とされる作品」
[補説]書名別項。→典型
[類語]手本模範規範モデルかがみ亀鑑規矩きく原型原形プロトタイプ模範的象徴的代表的典型的標準的ティピカル規矩きく準縄規則決まり定め規定規律ルールおきて文範見本範例標本サンプル雛形ひながた書式好例適例スタンダードフォーマット王道師表基準規準り所類型定型様式化スタイルフォーマル公式正則正統正統派正調本式本格的正規正式まっと正道折り紙付き太鼓判をパーフェクト非の打ち所が無い完璧万全完全無欠傑出大出来紋切り型腐ってもたい

てんけい【典型】[書名]

高村光太郎の詩集。昭和25年(1950)刊。昭和22年(1947)発表の連詩「暗愚小伝」を収録。

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精選版 日本国語大辞典 「典型」の意味・読み・例文・類語

てん‐けい【典型】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 基準。規範となる形式。また、その形式をそなえたもの。てほん。
    1. [初出の実例]「洵聖代之典型、而万世之標準也」(出典:明治改元の詔‐明治元年(1868)九月八日)
    2. [その他の文献]〔説文段注‐一三篇下・型〕
  3. 同類の中で、その本質・特徴を最もよく表わしているもの。代表例となるもの。類型。
    1. [初出の実例]「日本には見られないやうなコケットの典型」(出典:或る女(1919)〈有島武郎〉後)

典型の語誌

日本では、幕末・明治初期から公文書などにおいて見られるようになり、意味・用法も漢訳洋書のそれに沿うの意であった。しかし、明治二〇年(一八八七)代以降、英語 model, type や pattern の訳語となり、明治末期ごろからの意味へと変化した。

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改訂新版 世界大百科事典 「典型」の意味・わかりやすい解説

典型 (てんけい)

高村光太郎の詩集。1950年刊。41編。第2次世界大戦における日本の敗戦は,率先して戦争協力の詩を書いてきた高村にとって深刻な衝撃だった。疎開先の岩手県花巻市から,その西郊の稗貫郡太田村山口へ鉱山小屋を移築して住みつき,自己流謫の7年間を送った。聖戦と信じて全身全霊うちこんできた戦いにおける自己の行動,その基盤をなす生いたちや思想形成,それらを検討し直し,自己の弱点をえぐり出すべく,〈暗愚小伝〉(1947)20編を書き,さらに他の作品を書きついだ。〈暗愚小伝〉は戦争責任の問題ともからんで大きな論議をまきおこし,厳しい批判にさらされた。自己の歴史を近代日本の歴史と重ね合わせ,暗愚なる者の典型と自己処断しているが,作品には独特の自己肯定の調べが持続していて,様相は複雑である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「典型」の意味・わかりやすい解説

典型
てんけい
type

「日本人の典型」「典型的な日本人」などの用例が示すように,一般には同類のもののなかでその特徴を最もよく表わしているもの,代表例となるものをいう。芸術学における「典型」もこの意味に基づく。すなわち対象の個性の捨象,一般的なものの抽象によって成立する概念的表現とは異なり,芸術的表現は個性を本質的要素とし,個性的なもののなかに普遍的なものを表現する。これが最も成功したとき,その芸術的表現は典型とされ,規範的意味をもつ。特に社会主義リアリズム芸術論 (→社会主義リアリズム〈美術〉,社会主義リアリズム〈文学〉) では,ある社会勢力の本質を表現したものを「典型」ととらえ,ここに表現を集中することが要求された。また「典型」を芸術の類型的区分 (たとえば「素朴的」と「情念的」,「アポロン型」と「ディオニュソス型」のごとき) とみて,それが理想的,模範的形態の意味を伴うとき,価値概念として成立するともいえる。 (→類型 )

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「典型」の意味・わかりやすい解説

典型
てんけい
type 英語
Typus ドイツ語
type フランス語

タイプの訳語で、このほか、型、範型、類型などと訳される。一般に存在するものの、発生や現象や機能に関する類似性、共通性を概念化してタイプとよぶ。この語は多くの学問分野で独自の意味に用いられていて、けっして一義的ではない。たとえば、文化現象や社会現象については、M・ウェーバーやディルタイが文化現象の理想的な型や世界観の型を示し、論理学の分野では、B・ラッセルが階型理論theory of typesを組み立てて集合のパラドックスを解決しようとした。カントは、叡智(えいち)界に根拠をもつ道徳法則感性界において実現される行為との間を媒介するものとして、範型を措定(そてい)した。

 理論哲学における図式に対応するもので、感性界と叡智界との間の総合的接点として、範型は注目される概念である。タイプの概念は、現実的存在と一種理念的なものとの媒介という性格をいずれの場合にももっていて、哲学的にみて重要である。

[武村泰男]

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普及版 字通 「典型」の読み・字形・画数・意味

【典型】てんけい

規範。手本。宋・文天祥〔正気の歌〕詩 哲人、日に已にし 典型、宿昔に在り 風簷(ふうえん)に書を展(の)べて讀めば 古、顏色を照らす

字通「典」の項目を見る

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