十全(読み)ジュウゼン

デジタル大辞泉 「十全」の意味・読み・例文・類語

じゅう‐ぜん〔ジフ‐〕【十全】

[名・形動]
少しも欠けたところがないこと。十分に整っていて、危なげのないこと。また、そのさま。万全。「十全を期して念を入れる」「十全な(の)備え」
概念または判断が、その表す対象と完全に相応すること。
[類語]完全十分完璧かんぺき万全両全満点金甌きんおう無欠完全無欠百パーセントパーフェクト全くまった文句なし大丈夫無傷間然かんぜんする所がない水も漏らさぬ非の打ち所がない

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精選版 日本国語大辞典 「十全」の意味・読み・例文・類語

じゅう‐ぜんジフ‥【十全】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 形動 ) 欠点がないこと。完全であること。また、そのさま。万全。
    1. [初出の実例]「雨不雲弓絶弦、医門能事尽依然、十全歳後初麟角、百疾人間是乳泉」(出典田氏家集(892頃)中・奉酬傷菅侍医早亡詩)
    2. 「日と星と十全にそなわらぬを云ぞ。いむ心ぞ」(出典:玉塵抄(1563)一四)
    3. [その他の文献]〔周礼‐天官・医師〕
  3. ( 形動 ) 全く危険がないこと。もっとも安全なこと。また、そのさま。
    1. [初出の実例]「即坐に拝味せば十全なるぞ」(出典:随筆・孔雀楼筆記(1768)三)
  4. ( [ラテン語] adaequatio の訳語 ) 哲学で、完全に一致または適合すること。概念の指示するものの本質を概念が完全に表わすとき、その概念をいう。スコラ哲学では、真理とは、知性事物に完全に合致することにあるとする。

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普及版 字通 「十全」の読み・字形・画数・意味

【十全】じゆう(じふ)ぜん

完全。すべてよい。〔周礼天官医師には則ち其の事を稽(かんが)へ、以て其の(禄)を制す。十を上と爲し、十に一を失するもの之れにぐ。~十に四を失するを下と爲す。

字通「十」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「十全」の意味・わかりやすい解説

十全
じゅうぜん

哲学用語としては、ラテン語のアダエクアティオadaequatioないしそれに相当する近代ヨーロッパ語の訳語として、「完全」に相応することをいう。中世スコラ哲学で、真理が知性と事物の相応として定義されて以来、現代の確率論的発想に至るまで、十全の概念は多様な解釈を受けてきた。

[坂部 恵]

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