哀れ(読み)アワレ

デジタル大辞泉 「哀れ」の意味・読み・例文・類語

あわれ〔あはれ〕【哀れ】

[名]しみじみ心に染みる感動、また、そのような感情を表す。
(「憐れ」とも書く)強い心の動き。特に悲哀哀憐の感情。不憫ふびんと思う気持ち。「人々の哀れを誘った」「哀れをかける」「そぞろ哀れを催す」
かわいそうな状態。無惨な姿。「哀れをとどめる」
底知れないような趣。情趣。ものがなしさ。
「心なき身にも―は知られけりしぎ立つ沢の秋の夕暮れ」〈新古今・秋上〉
どうすることもできないような心の動き。感慨
「―進みぬれば、やがて尼になりぬかし」〈帚木
しみじみとした情愛・人情。慈愛の気持ち。
「子ゆゑにこそ、よろづの―は思ひ知らるれ」〈徒然・一四二〉
[形動][文][ナリ]感動を起こさせる状況、しみじみ心を打つもののさまを広く表す。現在では、多く悲哀・哀憐の感情に限定される。
(「憐れ」とも書く)かわいそうに思われるさま。気の毒だ。惨めだ。「その姿はいかにも哀れであった」
しみじみともの悲しく感じるさま。はかなく、また、さびしく思われるさま。「夕暮れは、なんとなく哀れに思われてしかたがない」
しみじみと心を打つ風情があるさま。趣があるさま。
「滝の音、水の声―に聞こゆる所なり」〈宇津保・忠こそ〉
しみじみと心に染みて愛着を感じるさま。いとしいさま。かわいいさま。
「なま心なく若やかなるけはひも―なれば」〈空蝉
しみじみとした愛情があるさま。優しいさま。
「見る人も、いと―に忘るまじきさまにのみ語らふめれど」〈かげろふ・上〉
感服させられるさま。感心だ。殊勝だ。
「―なるもの、けうある人の子」〈・二九〉
尊く、ありがたいさま。
霊山りゃうぜん釈迦仏の御すみかなるが―なるなり」〈・二〇八〉
[派生]あわれがる[動ラ五]あわれげ[形動]あわれさ[名]
[感]
ものに感動したときに発する語。感嘆賞美の場合にも哀傷の場合にも用いる。ああ。
「―、あなおもしろ」〈古語拾遺
「―あれをはしたなく言ひそむこそ、いとほしけれ」〈・八〉
願望の気持ちを表す。ぜひとも。
「―、よい所もあれかし」〈虎寛狂・今参〉
囃子詞はやしことばとして用いる。
「いで我が駒早く行きこせ待乳山まつちやま待乳山」〈催馬楽・我が駒〉
[補説]本来、自然に発する感動の声に基づく感動詞として上代から用いられているが、平安時代以後、感動の声を発せさせられるような状況をいう形容動詞用法や、さらに、そのような状況のときの感情、心のありさまを表す名詞用法が生じて広く用いられた。近世以後は主として悲哀・哀憐の感情を表すのに限定される。なお、中世ごろ「あっぱれ」を派生している。
[類語](1びんびん切切せつせつ痛切切実深刻ひしひしつくづくしみじみじいん心からせつ哀切哀感悲哀哀愁哀憐憐情哀れみ悲しい物悲しいうら悲しいせつないつらい悲愴ひそう悲痛悲傷沈痛もの憂い苦しい耐えがたいしんどい苦痛であるやりきれないたまらないる瀬ない断腸の思い胸を痛める胸が痛む胸が塞がるけだるいアンニュイ胸が裂ける胸が張り裂ける胸がつかえる胸が潰れる胸がつまる気を重苦しい滅入る気遣わしい塞ぐ塞ぎ込む消沈しょげるしょげ返る沈む憂鬱憂愁沈鬱メランコリー気鬱気塞ぎ鬱鬱陰鬱暗鬱鬱屈鬱結鬱気うっき鬱悶うつもん鬱積抑鬱憂さ鬱陶しい悶悶もんもん/(1哀切可哀相かわいそう気の毒不憫ふびんいじらしい痛ましいみじ悲惨情けない見るに忍びない痛痛しい

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