大方(読み)オオカタ

デジタル大辞泉 「大方」の意味・読み・例文・類語

おお‐かた〔おほ‐〕【大方】

[名]
物事や事柄の大体。大部分。あらかた。「大方は理解できた」「給料の大方が食費に消える」
普通の物事。世間一般。世間一般の人。「大方のご希望に添いたい」
[副]
だいたい。大部分。あらかた。「仕事は大方かたづいた」
恐らく。たぶん。「大方寝坊でもしたのだろう」
(多く、話を切り出すときに用いて)大づかみに言えば。だいたい。およそ。そもそも。
「―、この京のはじめを聞ける事は」〈方丈記
(否定の語を伴って)いっこう。全然。
「人を遣りて見するに―逢へるものなし」〈徒然・五〇〉
[形動ナリ]普通であるさま。一般的なさま。ひととおり。
「世にある人の有様を、―なるやうにて聞き集め、耳とどめ給ふ」〈末摘花
[類語]大半大多数絶対多数九分通り九分九厘1大部分殆ど多く総じておおむね大概全般百般万般多数数多無数あまたあまねく通じてあらかたほぼおよそおおよそ大体総体大略押しなべて/(2けだしたしか文字通りまさにまさしく大抵多分たぶん恐らくまず十中八九およ

たい‐ほう〔‐ハウ〕【大方】

度量の大きいこと。また、その人。
学問や見識の広いこと。また、その人。
ほとんど。大部分。おおかた。副詞的にも用いる。
「―の花主おとくい」〈魯文西洋道中膝栗毛
立派な道。仏の道。
「久しく―に迷ふ」〈霊異記・上・序〉

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精選版 日本国語大辞典 「大方」の意味・読み・例文・類語

おお‐かたおほ‥【大方・大抵・凡】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 事柄の量、範囲などについて、その大部分。副詞的にも用いる。あらかた。だいたい。ほとんど。全般的に。総じて。
      1. [初出の実例]「おほかたのみなあれにたれば、『あはれ』とぞひとびといふ」(出典:土左日記(935頃)承平五年二月一六日)
      2. 「おほかたの風体、序破急の段に見えたり」(出典:風姿花伝(1400‐02頃)六)
    2. 事柄の質、関係、程度などが、特殊でなくて一般的なこと。副詞的にも用いる。世間一般。普通。並ひととおり。一般に。一般問題として。尋常に。
      1. [初出の実例]「大方(おほかた)は何かも恋ひむ言挙せず妹に寄り寝む年は近きを」(出典:万葉集(8C後)一二・二九八一)
      2. 「此ほど家質に銀かるさへ大方(カタ)のぎんみにてはかさざりしに」(出典:浮世草子・傾城色三味線(1701)江戸)
    3. 多くのひと。
      1. [初出の実例]「どこがわるいといふ理くつも見出だし得ず謹んで大方の教を俟つ」(出典:筆まかせ(1884‐92)〈正岡子規〉一)
  2. [ 2 ] 〘 副詞 〙
    1. 次に述べる事柄に関して、細かいことはともかく、大づかみにいえば、の気持を表わす。言いだしや書きだしに用いることが多い。だいたい。およそ。
      1. [初出の実例]「おほ方わらはべなるほどの心地にも、親の昼寝したるはより所なくすさまじくぞありし」(出典:能因本枕(10C終)二二)
    2. 否定の語を伴って用いる。ほとんど。全然。少しも。
      1. [初出の実例]「すべて、蔬(くさびら)、おほかた見えず」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)一)
    3. 推量の語を伴ったり、推量の意味の文脈に用いる。たぶん。恐らく。きっと。
      1. [初出の実例]「大方『世になありそ』となんめりと、むつかしければ」(出典:狭衣物語(1069‐77頃か)三)
  3. [ 3 ] 〘 形容動詞ナリ活用 〙
    1. 事柄の量、範囲などについてその大部分に及ぶさま。あらかた。だいたい。ほとんど。おおざっぱ。
      1. [初出の実例]「お前に候はん。おほかたに人なければ、おそろしくおはしまさん物ぞ」(出典:落窪物語(10C後)一)
      2. 「いたづらなる娘もちたる母なれば、大かたなる事は聞(きか)でも合点して」(出典:浮世草子・好色五人女(1686)四)
    2. 事柄の質、関係、程度などが、一般的なさま。普通であるさま。世間一般。尋常。大体において適当なさま。→おおかたなし
      1. [初出の実例]「もえ渡る歎は春のさがなればおほかたにこそあはれとも見れ〈よみ人しらず〉」(出典:後撰和歌集(951‐953頃)春中・六六)
    3. いい加減であるさま。疎略
      1. [初出の実例]「いと物さわがしう、おほかたなれば、かたき御物忌にてあしかるべければ」(出典:夜の寝覚(1045‐68頃)一)

たい‐ほう‥ハウ【大方】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 度量が大きいこと。また、その人。
  3. 学問・見識の高い人。博学の人。賢い人。転じて、敬意をこめて世間一般の人をいう。
    1. [初出の実例]「子亦命之以童子問。要明以告于大方也」(出典:童子問(1707)上)
    2. 「今其大概を記して、大方(タイハウ)の参考に供せん」(出典:妾の半生涯(1904)〈福田英子〉四)
    3. [その他の文献]〔荘子‐秋水〕
  4. 大きな国。大国。
    1. [初出の実例]「思欲決大方之教海、灌東垂之亢旱」(出典:性霊集‐五(835頃)与越州節度使求内外経書啓)
  5. 禅宗で、大きな寺。禅林。大叢林。
    1. [初出の実例]「若能応命而叨臨大方、不咲於広衆」(出典:空華日用工夫略集‐延文五年(1360)八月)
  6. 大きな道。立派な道。仏の道。
    1. [初出の実例]「坎井(かんせい)の識、久しく太方に迷(まど)ふ」(出典:日本霊異記(810‐824)上)
  7. 夫を失った、高貴な女性。〔日葡辞書(1603‐04)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「大方」の意味・わかりやすい解説

大方
おおがた

高知県西部、幡多郡(はたぐん)にあった旧町名(大方町(ちょう))。現在は黒潮町の南西部を占める地域。土佐湾に面する。旧大方町は、1943年(昭和18)町制施行。1956年白田川村を合併。2006年(平成18)佐賀町と合併して、黒潮町となる。土佐くろしお鉄道中村線、国道56号が通じる。『和名抄(わみょうしょう)』の大方郷、中世の一条氏の大方荘(しょう)。式内社加茂神社などの所在地で、尊良(たかなが)親王関係の史跡もある。海岸には戦国時代以来の潮害防備の保安林である国指定名勝入野松原(いりのまつばら)が3キロメートルほど続いている。稲作を中心に、キュウリを主とする蔬菜(そさい)や花卉(かき)の施設園芸、砂地利用の玉ラッキョウ栽培が盛んで、シラス漁など沿岸漁業もみられる。入野地区の土佐西南大規模公園内には国土庁(現、国土交通省)のモデル定住圏構想によるふるさと総合センターがある。

[大脇保彦]

『『大方町史』(1963・大方町)』『『大方町史 改訂版』(1994・大方町)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「大方」の意味・わかりやすい解説

大方
おおがた

高知県南西部,黒潮町南西部の旧町域。土佐湾に面する。 1943年町制施行。 1956年白田川村と合体。 2006年佐賀町と合体して黒潮町となる。大部分が山地。蛎瀬川と吹上川に挟まれた平野部で施設園芸が行なわれる。特に海岸部でつくられるラッキョウは味のよさで知られ,県内有数の生産高を誇る。上川口港,田野浦港は大敷網漁業を行なう漁港。南部の海岸沿いにある入野松原 (国の名勝) は入野県立自然公園に指定され,キャンプ場がある。ほかに有井庄司の墓,田ノ口古墳が知られる。

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普及版 字通 「大方」の読み・字形・画数・意味

【大方】たいほう(はう)

地。大法。大道。〔荘子秋水〕河伯始めて其の面目を旋(めぐ)らし、洋をみ、(海)に向ひてじて曰く、~吾(われ)子の門に至るに非ずんば、則ち殆(あやふ)かりしならん。吾、長く大方の家に笑はれんと。

字通「大」の項目を見る

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改訂新版 世界大百科事典 「大方」の意味・わかりやすい解説

大方 (おおがた)

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