即ち(読み)スナワチ

デジタル大辞泉 「即ち」の意味・読み・例文・類語

すなわち〔すなはち〕【即ち/則ち/×乃ち】

[接]
前に述べた事を別の言葉で説明しなおすときに用いる。言いかえれば。つまり。「日本の首都―東京」
前に述べた事と次に述べる事とが、まったく同じであることを表す。とりもなおさず。まさしく。「生きることは―戦いである」
(「…ば」の形を受けて)前件の事実によって、後件の事実が自然に成り立つことを表す。その時は。そうすれば。「戦えば―勝つ」「信じれば―救われる」
[名]
(連体修飾語に続けて)その時。
綱絶ゆる―に八島かなへの上に、のけざまに落ち給へり」〈竹取
むかし。あのころ。当時。
若宮は、―より寝殿に通る渡殿におはしまさせて」〈栄花・楚王の夢〉
[副]
すぐに。たちまち。
「立てめたる所の戸、―ただ開きに開きぬ」〈竹取
もう。すでに。
「頗る出精せしが、今は、―し」〈蘭学事始
[補説]この語の語源は、いわゆる「時を表す名詞」の一種であり、平安時代以後、「即・則・乃・便」などの字の訓読から接続詞として用いられるようにもなったと考えられ、現在ではその用法に限られるといってよい。
[類語](1つまり・言い換えれば・要するに裏を返せば裏を返す早い話がひいてそれからそしてそうして次いでして次についてはひいてはそれ故だから従ってよって故にですからその上それにてて加えてあまつさえ更にかつまたなおかつおまけに加うるにのみならずしかのみならずそればかりかこの上それどころか/(2取りも直さずまさしくほかでもないそく/(3必ずきっと絶対是非何としてもどうしても何が何でも是が非でも押してたってどうぞどうかくれぐれも願わくはなにとぞなんとかぜひともまげてひとつ必ずや必然必定不可避誓っててっきり違いないはず決まって否が応でも否でも応でも無理遣り無理強いて敢えて努めてできるだけ極力なるたけなるべく可及的必死いやでもいやとも無理算段無理無体無理押し無理強制的強引強気強行独断独断的理不尽強硬頑強問答無用強要力尽く力任せ腕尽くごり押し断固一刀両断横柄威圧的否応無し頑として横紙破り横紙を破る有無を言わせず腕力に訴える横車を押す押し付けがましいねじ伏せる首に縄を付ける遠慮会釈もない無遠慮高圧的高飛車頭ごなし押し通す押し付ける一方的豪腕

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精選版 日本国語大辞典 「即ち」の意味・読み・例文・類語

すなわちすなはち【即・則・乃】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. ( 多く連体修飾語を受けて ) ある動作の終わったその時。途端。
      1. [初出の実例]「霍公鳥(ほととぎす)鳴きし登時(すなはち)君が家に行けと追ひしは至りけむかも」(出典万葉集(8C後)八・一五〇五)
      2. 「すは声を出すよと、諸人一同に待ち受くるすなはちに、声を出すべし」(出典:花鏡(1424)時節当感事)
    2. 過去のある時をさす。その時。当時。
      1. [初出の実例]「爰にはすなはちより、御夜中暁の事も知らでやと歎き侍りしかど」(出典:落窪物語(10C後)三)
      2. 「おびたたしく震(ふ)る事は、しばしにて止みにしかども、その余波(なごり)、しばしは絶えず。〈略〉すなはちは、人みなあぢきなき事をのべて、いささか心の濁りもうすらぐと見えしかど」(出典:方丈記(1212))
  2. [ 2 ] 〘 接続詞 〙
    1. 前の事柄を受け、その結果として後の事柄が起こることを示す。文中にあっては、「…ば、すなわち」と条件句を受ける形で用いられることもある。そこで。そうなると。それゆえ。
      1. [初出の実例]「天皇聞しめして傷恨みたまふ。迺(スナハチ)使者を遣して津に迎へて慰め問はしむ」(出典:日本書紀(720)欽明一六年二月(北野本南北朝期訓))
      2. 「狂人の真似とて大路を走らば、則狂人なり」(出典:徒然草(1331頃)八五)
    2. 前の事柄を受け、後の事柄を言い出す時に軽く添える。さて。ここに。そして。
      1. [初出の実例]「則板之事申遣し候間、慥(たしか)成便に此書状江戸へ急便に頼存候」(出典:去来推定)宛芭蕉書簡‐元祿七年(1694)九月一〇日)
    3. 前の事柄に対し、後の事柄で説明や言い換えをすることを示す。つまり。いいかえると。ということは。
      1. [初出の実例]「近き世に、その名聞えたる人は、すなはち僧正遍昭は、歌のさまはえたれども、まことすくなし」(出典:古今和歌集(905‐914)仮名序)
      2. 「只栄利にのみ走りて士家の風なきは、即(スナハチ)尼子の家風なるべし」(出典:読本・雨月物語(1776)菊花の約)
  3. [ 3 ] 〘 副詞 〙
    1. 即座に。すぐに。
      1. [初出の実例]「時に武甕雷神登(スナハチ)高倉に謂て曰く」(出典:日本書紀(720)神武(寛文板訓))
      2. 「ある時、獅子王・羊・牛・野牛の四つ〈略〉いのししに行きあひ、則是を殺す」(出典:仮名草子・伊曾保物語(1639頃)中)
    2. その所、または、その時にちょうどあたって。まさに。
      1. [初出の実例]「狩衣のくびかみにさすとおもひつる針は、すなはち大蛇ののうぶへにこそさいたりけれ」(出典:平家物語(13C前)八)

即ちの補助注記

本来、ある時を示す名詞であったが、「即」「乃」「便」「則」「輒」などの訓読語として用いられたことで、それらの語の元来の意味、用法をも併せ持つようになったと思われる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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