思う(読み)オモウ

デジタル大辞泉 「思う」の意味・読み・例文・類語

おも・う〔おもふ〕【思う/想う/憶う/念う】

[動ワ五(ハ四)]
ある物事について考えをもつ。考える。
㋐判断する。信じる。「これでよいと―・う」「そうは―・わない」「自分の―・ったとおりに行動しなさい」
㋑決心する。決意する。「新しく事業を始めようと―・う」「―・うところがあって酒を断つ」
㋒あやしむ。疑う。「変だと―・った」「そんなことがあるはずはないと―・っていた」
眼前にない物事について、心を働かせる。
推量する。予想する。「この本はいくらだと―・うか」「―・わぬ事故
㋑想像する。「―・ったほどおもしろくない」「夢にも―・わなかった」
㋒思い出す。追想する。回顧する。「亡き人を―・い悲しくなる」「あのころを―・えば隔世の感がある」
願う。希望する。「―・うようにいかない」「背が高くなりたいと―・う」
心にかける。心配する。気にする。「君のことを―・って忠告する」「このくらいの暑さは何とも―・わない」
慕う。愛する。恋する。「故郷を―・う」「心に―・う人」
ある感じを心にもつ。感じる。「別れは悲しいと―・う」「歓待されて心苦しく―・った」
表情に出す。そういう顔つきをする。
「もの悲しらに―・へりしが子の刀自とじを」〈・七二三〉
考える[用法]
[可能]おもえる
[下接句]蚊の食う程にも思わぬ人を思うは身を思う人を人とも思わない人を見たら泥棒と思え糸瓜へちまの皮とも思わない老驥ろうき千里を思う我と思う
[類語](1考える思い巡らす尊敬おぼし召す謙譲存ずる/(2㋐㋑)想像する推測する予想する/(2㋒)思い浮かべる思い出す思い返す追想する回想する回顧する想起する/(3望む願う念ずる/(4思いやるおもんばか哀れむいとおしむほだされる痛ましい痛痛しいいたわしい可哀そう忍びない見るに忍びない見るに堪えない身につまされる不憫ふびん気の毒/(5恋する恋う慕う愛する好くめる焦がれる愛慕する思慕する恋慕する惚れこむれる見惚れる惚れ惚れ一目惚れ懸想けそう目尻を下げる思いを掛ける気がある惚れる惚れっぽい多情浮気移り気気が多い熱し易く冷め易い気移り心移り色気違いマダムキラーレディーキラー好き者助平すけべい漁色女好き男好きプレーボーイ女たらし女殺し好色好色家色好み鼻下長びかちょう手が早いちゃら浮気者艶福艶福家放蕩ほうとう蕩児とうじ遊蕩ゆうとう色魔女狂い男狂い

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「思う」の意味・読み・例文・類語

おも・うおもふ【思・想・憶・懐】

  1. 〘 他動詞 ワ行五(ハ四) 〙 何か具体的な考えや感情を心にいだく。
  2. ( はたから見た様子を示す語が上にあって ) そういう顔つきをする。(気持を)顔に表わす。
    1. [初出の実例]「小金門(をかなと)物悲しらに 念有(おもへり)し 吾(あ)が子の刀自(とじ)を」(出典:万葉集(8C後)四・七二三)
    2. 「わざと思ひ立ちて宮仕へに出で立ちたる人の、物憂がり、うるさげに思ひたる」(出典:枕草子(10C終)七九)
  3. 物事を理解したり、感受したりするために心を働かす。断定、推量、回想など種々の心の働きにいう。
    1. (イ) あることについて、これこれだと考える。判断する。思慮する。
      1. [初出の実例]「帰りける人きたれりといひしかばほとほと死にき君かと於毛比(オモヒ)て」(出典:万葉集(8C後)一五・三七七二)
    2. (ロ) そうだと深く信じこむ。また、自信をもつ。
      1. [初出の実例]「世の中に見えぬ皮衣のさまなれば、是をとおもひ給ひね」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
      2. 「われとおもはん人々は寄りあへや」(出典:平家物語(13C前)四)
    3. (ハ) ある事の起こる前に、その事について想像する。予想する。また、こうだろうと推量する。
      1. [初出の実例]「於毛波(オモハ)ぬに 横しま風の にふふかに おほひ来ぬれば」(出典:万葉集(8C後)五・九〇四)
      2. 「これまでくだるべしとは、かけてもおもはざりき」(出典:平家物語(13C前)一〇)
    4. (ニ) 過ぎてきたことをふりかえって心に浮かべる。回想する。追想する。
      1. [初出の実例]「苛(いら)なけく そこに於望比(オモヒ)(かな)しけく ここに於望臂(オモヒ) い伐(き)らずそ来る 梓弓(あづさゆみ)(まゆみ)」(出典:日本書紀(720)仁徳即位前・歌謡)
    5. (ホ) 物事に対して、自然にある感情をいだく。感慨をもよおす。感じる。
      1. [初出の実例]「道の後(しり) 古波陀嬢子(こはだをとめ)は 争はず 寝しくをしもぞ 愛(うるは)しみ意母布(オモフ)」(出典:古事記(712)中・歌謡)
      2. 「目に見えぬ鬼神をもあはれとおもはせ」(出典:古今和歌集(905‐914)仮名序)
  4. ある対象に心を向ける。そちらへ強く心がひかれる。
    1. (イ) こうしたいと願う。希望する。こうしようと決心する。決意する。
      1. [初出の実例]「枕(ま)かむとは 吾(あれ)はすれど さ寝むとは 吾は意母閇(オモへ)ど」(出典:古事記(712)中・歌謡)
    2. (ロ) 物事を心にとめる。気にかける。また、あれこれと心配する。心を悩ませる。
      1. [初出の実例]「山峡(やまがひ)に咲ける桜をただ一目君に見せてば何をか於母波(オモハ)む」(出典:万葉集(8C後)一七・三九六七)
      2. 「是程国の恥をおもふ大臣、上古にもいまだきかず」(出典:平家物語(13C前)三)
    3. (ハ) 慕わしく感じる。恋しがる。愛する。また、大切にする。
      1. [初出の実例]「於毛比(オモヒ)つつ寝(ぬ)ればかもとなぬばたまのひと夜もおちず夢(いめ)にし見ゆる」(出典:万葉集(8C後)一五・三七三八)

思うの語誌

( 1 )「面(おも)」に「ふ」を付けて活用させたものとして、原義を「顔に現われる」の意とする説がある。また、一説に「重(おも)」に「ふ」を付けて活用させたもので、何も考えない心の静かな状態に対して、物を思う意識を「重い気分、気持」ということで表現したものだという。
( 2 )「考える」は、「筋道を立てて客観的に判断する」という頭のはたらきを表わすもので、それに達するまでの過程に重点がある。一方、「思う」は思考や感情の具体的内容に重点がかかり、主観的、感情的な要素が強くはいっている。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の思うの言及

【心】より

…当時はまだ〈なさけ〉という語は発生しておらず,知,情,意にわたる精神活動が総じて〈こころ〉と呼ばれたわけだが,なおそこに知,情,意を区別する意識もきざしつつあったとみられる。 〈こころ〉に深くかかわる語に,〈こころ〉のはたらきをいう〈思う〉がある。〈思う〉も〈こころ〉と同様に多面的な精神作用を包括する語だが,しばしば〈恋う〉と同義に用いられるように,情緒的な含意が強い。…

※「思う」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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