[1] 〘自サ変〙 つう・ず 〘自サ変〙
① 道路などがある地点まで達する。道筋がつながって、ある地点まで行けるようになる。また、交通機関が通る。とどく。つながる。
※海道記(1223頃)豊河より橋本「駅路東に通ぜり」
※思ひ出す事など(1910‐11)〈
夏目漱石〉一二「東京への汽車が略通
(ツウ)ずる様になった頃」
② 物事がある道筋にそって動いて行く。電流・大小便などが通る。
※
日葡辞書(1603‐04)「ショウベンガ tçûzuru
(ツウズル)」
③ 意思、感情、ことば、ものの意味などが相手に伝わる。また、それらを理解する。
※金刀比羅本保元(1220頃か)下「上の心に下通(ツウ)ぜずして終滅亡に及びき」
※正法眼蔵(1231‐53)画餠「一法纔(わず)かに通ずれば万法通ず」
※
蘭学事始(1921)〈菊池寛〉七「いや、お待ちなされい、文意は通じても、詩義が通じ申さぬ」
④ ものごとを詳しく知る。詳しい知識を持つ。精通する。悟る。
※虎明本狂言・楽阿彌(室町末‐近世初)「両頭を切断してより尺八寸のうち古今につうず」
※吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉二「西洋の事情に通ずる者が古史伝説を考究し」
⑤ 広くゆきわたる。世間一般に通用する。
⑥ 共通する。意義が同じ、あるいは類似する。
※史記抄(1477)八「今此は即祚てありさうなぞ、祚と阼と通して用るか」
⑦ 互いに信頼する。親しく交わる。味方となる。また、ひそかに敵方などと結ぶ。内通する。
※伝光録(1299‐1302頃)阿難陀尊者「聞持すといへども心もし通ぜずんば、徒にとなりの宝を算ふるがごとし」
※
太平記(14C後)一六「東国王化に順ひて、御方に通ずる者少なかりければ」
⑧ 男女が情をかわす。密通する。
※今昔(1120頃か)二「我今、何の故にか釈種として、奴婢の生ぜる王と通ぜむと」
※花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉二九「誤て密夫に通じ父母の怒りに遇ふて」
⑨ 運がひらける。出世する。栄達する。
[2] 〘他サ変〙 つう・ず 〘他サ変〙
① 道路などをある地点まで通す。道筋をつける。つなげる。とどかせる。
※読本・椿説弓張月(1807‐11)拾遺「曲路一径を通(ツウ)じて、両山屏風を建たるごとく、道幅僅に一丈には過ぎざりけり」
② 使者などを目的地に行かせる。また、物などを相手に差し出したり、手紙を届けたりする。「刺を通ずる」
※太平記(14C後)一九「国々へ潜に使を通して、旧功の輩(ともがら)をあつめられけるに」
※日葡辞書(1603‐04)「インシンヲ tçǔzuru(ツウズル)」
③ 伝える。知らせる。告げる。また、物事を理解させる。
※
浮世草子・西鶴織留(1694)六「内証から旦那殿へ通
(ツウ)じ」
④ 広く全体に物事を及ぼす。行きわたらす。すべてを包括する。「一年を通じて」
※尋常小学読本(1887)〈
文部省〉一「全部通じて七冊とす」
⑤ 互いに信頼して心をかよわせる。「気脈を通ずる」
※今昔(1120頃か)五「其の時に、此の心を通ずる烏、此の御行を見て、驚き騒て」
⑥ 媒介とする。なかだちとする。「ラジオを通じて訴える」
※思ひ出す事など(1910‐11)〈夏目漱石〉二「其後も副院長を通(ツウ)じてよろしくと云ふ言伝が時々あった」
⑦ 物事をある道筋に従って動かす。とおす。