食用のために栽培する草本。蔬菜(そさい)ともいい,俗に青物とも呼ぶ。現在の用語法ではこのようになっているが,本来の語義からするとこれは誤用であり,また,野菜と蔬菜も同義ではなかった。菜蔬(蔬菜)は,中国の古文献に見られるごとく,食用にされる草の総称であった。単独で菜(さい)といい,蔬(そ)という場合も同じで,栽培種であれ野生種であれ,食べられる草(キノコなどを含むこともある)を指すものだった。野菜は,菜蔬の中の野生のものをいった。《遼史》太祖紀に,輺重(しちよう)隊の随伴を失った戦闘部隊の士卒たちが馬をほふり,〈野菜〉を摘んで食にあてたとあることでも明らかなように,野菜とはまさに山野に自生する菜,すなわち,食べられる野草の謂(いい)にほかならなかった。そして畑,つまり菜園で栽培されるものは園菜,園蔬と呼ばれていた。古代中国以来のこうした正確な名義は,平安時代の日本でもそのまま受けつがれ,《和名抄》は当時の食用草本の大部分を〈園菜類〉と〈野菜類〉とに区分している。ところがその後,この園菜の語がほとんど見られなくなるが,その理由ははっきりしない。江戸時代に入って本草書が多くなると体系的分類が行われるが,それらは《本朝食鑑》(1697)や《本草綱目啓蒙》(1803)が〈菜〉,《大和本草》(1709)が〈菜蔬〉とするなど,栽培種と野生種との区別をしなかった。そうした条件の中で,江戸時代の半ばすぎから,野菜の語は現在と同じ意味内容をもって使われ始めたようである。こうして野菜が園菜にとってかわったため,野菜本来の内容をカバーすることばが必要になって山菜の語を登場させた結果,野に自生するのが野菜で,山に自生するのが山菜だなどとする,こっけいな定義さえ発生するに至っている。なお,英語vegetableはラテン語vegetabilis(活力を与える)に由来する。
以下本項では主として日本における野菜について述べる。
現在の意味での野菜について史的に概観すると,平安時代のそれは現在とはかなり違っていた。すなわち,《和名抄》や《延喜式》によると,カブ,ダイコン,タカナ,カラシナ,ショウガ,ミョウガ,コンニャク,ネギ・ニラ・ノビルの類,ナス,アブラナ,フキ,チサ(チシャ),セリ,コエンドロといったもののほか,いまではまず食用とされないアザミ,フユアオイ,カサモチ(藁本(こうほん))といったものが栽培されている。ウリ類は蓏(ら)類として別扱いだが,マクワウリ,シロウリ,キュウリ,トウガンなどの名が見える。ゴボウやワラビは山菜の中に入っている。ゴボウは室町時代までには栽培され,改良されたものらしく,以後重要な野菜として盛んに用いられるようになった。江戸初期ころまでに伝来したらしいものにニンジン,ホウレンソウなどがあり,ジャガイモもそのころ伝えられたとする説がある。しかし,サツマイモが東国にまで普及するのは18世紀であり,ジャガイモもそのころやっと普及し始めた。カボチャも《本朝食鑑》あたりから姿を見せており,各種の漬菜類の多様化ともあいまって,江戸時代後期には野菜の種類は著しく拡大された。そして,明治に入って結球ハクサイやタマネギ,トマト,キャベツなどが導入されて普及し,さらに各種の西洋野菜はもとより,近年では中国野菜も色々と紹介されて,現在の食生活を支えるものとなった。
→山菜
執筆者:鈴木 晋一
農学における分類では,野菜は園芸作物の中に含まれ,さらに利用する部分によって,葉菜類(キャベツ,ホウレンソウ,レタス,セロリなど),根菜類(ダイコン,カブ,ニンジン,ゴボウなど),果菜類(キュウリ,カボチャ,トマト,ナスなど)に分けられる。アスパラガスやウドのように茎を利用するもの(茎菜類)やカリフラワーのように花茎や花序を利用するもの(花菜類)もあるが,これらは葉菜類に含めることが多い。ただし,野菜と他の作物との境界は,山菜とのそれと同様にあまり明確ではない。例えばトウモロコシ,ジャガイモ,サツマイモなどは利用目的によって食用作物にも野菜にも分類される。またイチゴ,スイカ,メロンなどは果物として利用されるが,草本植物で栽培方法に共通性があることから,生産統計においては野菜として取り扱われることが多い。
果菜類の栽培では花を咲かせて結実させることが必要であるが,葉菜類や根菜類は花芽を形成して花茎が伸びだすと(〈抽だい〉という),食用部分の品質が低下し,商品として販売できなくなる。そこで,抽だいしにくい時期に,あるいは抽だいしにくい品種を用いて栽培が行われる。例えば,ホウレンソウは長日条件下で花芽を形成して抽だいするが,春まき栽培では日長が15~16時間にならないと抽だいしない品種が用いられている。繁殖はサトイモ,ヤマノイモ,ニンニクなど,栄養繁殖を行うものもあるが,多くの野菜は種子によって行う。しかも大部分は他家受精を行うので,注意深く採種しないと,品種の均一性を維持できない。また,葉菜類や根菜類では,普通の栽培で抽だいしにくく,採種の困難なことがある。そこで,野菜の種子は,大部分が種苗会社によって生産されている。多くの野菜では,幼植物時に集約的な管理を行って生育をそろえるため,また温度を高めて初期生育を促進させ,収穫期を早めるため,苗床に種子をまいて育苗する。しかしダイコン,ニンジンなどの根菜類では移植すると岐根ができるので,育苗しないで畑に直接種子をまく。
野菜は一般に収穫後の鮮度保持が困難であり,また栽培時期が温度や日長によって限定されるため,出荷が短期間に集中する傾向があった。しかし,周年的に需要のある野菜では出盛り期をはずれると価格が高騰するので,この時期をねらって出荷する栽培法が開発され,近年では多くの野菜が周年出荷されるようになっている。果菜類の大部分は生育適温が高く,霜にあうと枯死してしまうので,冬から早春にかけてはハウスやトンネルなどの保温施設を利用して促成栽培が行われる。これに対して,いも類を除く根菜類や葉菜類の多くは霜害を受けにくく,また品種によって温度や日長に対する反応が著しく異なるので,品種や産地を変えて,露地栽培を主体に周年出荷されている。これらの根菜類や葉菜類,中でもダイコン,キャベツ,ハクサイなどは,作柄が気象条件の影響を受けやすく,年により作付面積が変動しやすいので,価格変動が大きく,暴騰,暴落が問題となることも多い。そこで,後述するように価格安定のため,指定産地における重要野菜の作付けと大消費地への出荷が計画的に推進されている。しかし,この制度は反面では連作を促すこととなり,土壌伝染性の病害対策に苦慮する産地も増えている。
栄養的にみると,大部分の野菜は水分が多く(90~95%),カロリーは低い。しかしビタミン,ミネラル,繊維素などは比較的多く含まれており,これらの給源として重要な役割を果たしている。また,野菜に多く含まれる食物繊維は,腸管の働きを活発にして消化吸収を助けるだけでなく,血中のコレステロール濃度を正常に保ち,血糖濃度の上昇を抑えるなどの効果も認められている。
執筆者:杉山 信男
野菜は日本の農業生産の中で重要な地位を占めているばかりでなく(農業産出額の約22%を占め,米,畜産に次ぐ),毎日の必需品であり,その需給の均衡と価格の安定は国民的課題である。種類が多く100を超えるが,主要野菜28種類で栽培面積の90%内外を占めている。トウモロコシ,豆類などの未成熟もの,いも類のうち生食用のものは,野菜に含めている。スイカ,メロン,イチゴなどの果実的野菜も一般には野菜に含む。野菜の生産は,所得の向上や生活水準の上昇に支えられて年々堅実な伸びを示し,1966年には,その栽培面積は70万haに達した。しかし,この年を最高に減少ないし停滞傾向を続け,近年は63万ha前後に低迷している。水田転作による野菜の作付けも増加しているが,それは野菜栽培面積の10%程度で,全体の傾向を変えるほどではない。一方,野菜の消費量は近年1600万t前後の水準で推移し,消費量は飽和に近い状態にある。例えば人口5万人以上の都市全世帯の1世帯・1ヵ年の野菜消費動向をみると,野菜消費支出(実質),野菜購入量ともに横ばいの傾向にあり,食料費支出に占める割合も低下している。総供給量を人口で割った国民1人・1年当り野菜供給量は,66年以後110kg台で推移し,その水準は,欧米各国と比較しても高い水準にある。
野菜の消費の頭打ち,生産の低迷は,産地・生産者側の市場競争を激しくし,多様なマーケティング戦略を登場させることになる。消費の頭打ちは,生産者により売れる野菜を選択させる。野菜生産の全体的な減少傾向のなかで,食生活の変化に対応して洋菜類(レタス,セロリなど),果実的野菜(メロン,イチゴなど)が増加している。また露地野菜の作型分化,施設野菜の促成・抑制栽培によって野菜供給の多様化,周年化が進んでいる。例えば,野菜用ガラス室,ビニルハウスの設置実面積はすでにオランダを上回って世界一となり,トマトの約3割,イチゴ,ピーマン,キュウリの過半数が施設栽培である(〈施設園芸〉の項参照)。この周年化の展開に対し,野菜の季節感がなくなった,エネルギー多消費作物であるなどの反省が生まれ,しゅんの野菜や省エネルギー,省資源栽培への関心が強まっている。産地・生産者側の市場競争は,結果として産地移動につながる。都市近郊の野菜産地は,農地の潰廃(かいはい),農業労働力の不足などによって中間地帯,遠隔地帯に生産の主体が移り,それぞれの立地条件をいかし主産地が形成されている。それは交通・輸送の発達,卸売市場の整備とあいまって広域大量流通体系に沿った適地適産,専作規模拡大による主産地形成であり,生産力の向上と供給の安定化に大きく貢献している。しかし反面,輸送コストの上昇,大規模卸売市場の集散市場化と転送荷の増大,消費者の鮮度要求の強さ(葉菜類などの軟弱野菜にはこの傾向がある)などから,小回りのきく地場流通(地場生産,地場消費)が再評価され,その振興も進められている。
野菜の生産は,技術が進歩したとはいえ,天候に支配されるところが大きい。年次的,季節的,さらに日々の供給変動は,それぞれに価格変動を大きくしている。この不安定な価格変動は,野菜農家の経営の発展にも,国民消費生活の安定にも大きな阻害要因となっている。とくに東京,大阪,名古屋などの大消費地で形成される野菜の価格が,全国の野菜の価格に大きな影響を与えることから,全国の主要消費地と主要産地を対象に需要に見合った安定的な供給の確保と国民消費生活の安定を図るため,1966年野菜生産出荷安定法が制定された。需要見通しに即応した野菜指定産地の計画的整備と,野菜生産出荷安定資金による低落時の価格補給制度を内容としている。野菜は収穫後も呼吸作用を営んでおり,常温下ではきわめて変質しやすい性格があり,流通上,生鮮性の保持が第1条件である。1965年物価問題が野菜に集中したころから,産地から消費地の小売店まで一貫して低温でつなぐコールド・チェーンが話題となり,価格安定に寄与することが期待された。これは,現状の卸売市場を中心とする流通機構にそぐわないことやコストがかかることなどから定着するに至らなかったが,産地予冷という鮮度維持技術は,出荷施設の整備と結びつき普及している。一方,野菜加工の一つとしての冷凍野菜は,その鮮度維持機能とともに定価販売,事前加工処理,取扱いが簡便などの理由から急速な伸びを示し,アメリカ,台湾,中国,ニュージーランドなどからの輸入が多い。
零細多数の生産農家から多種少量当用買いの多数の消費者に野菜を届ける流通経路は複雑であるが,そのなかで卸売市場が,集分荷,価格形成の機能をもち,流通の中心的な役割を担っている(〈青果市場〉の項参照)。卸売市場への出荷は,生産者個人,生産者の共販組織,産地業者などが行い,近年は農協共販が多くなっている。
卸売市場においてせりで決定された野菜の価格は,市場手数料,共販手数料,出荷経費などが控除されて農家手取り価格になり,仲卸売業手数料,小売マージンなどが加えられて小売価格となる。野菜の場合,農家手取り価格は小売価格のおよそ半分で,流通コストの小売価格に占める割合が大きい。この高い流通コストに注目し,近年,集配センターや産地直結取引など卸売市場を経由しない流通経路が選択されてきている。一般にバイパス流通と呼ばれ,予約相対取引により,生産者,消費者相互に流通コストを分け合おうとするものである。産地直結取引は,流通コストの軽減が主要な目的であるが,さらに農薬公害を回避した健康性,新鮮性の確保に重点をおく消費者運動としての展開もみられる。野菜の国内自給率は,ほぼ100%であったが,近年,タマネギ,乾燥たけのこ,冷凍野菜,漬物,瓶詰,缶詰などの輸入が増大して,94年度には86%となった。80年代初めまでの10年間に数量で3倍強,金額で2倍弱に伸びたが,農産物輸入全体に占める割合はまだ小さい。生鮮野菜は1962年貿易自由化品目に指定されたが,それによる影響は,タマネギなど一部にみられるだけである。一方,野菜とその加工品の輸出は低迷している。外国との競争力が低いこと,内需向けが有効であることなどから今後も多くは期待できない。
執筆者:小泉 浩郎
野菜は生産,消費とも地域性が強い。生鮮食料品であるから国内消費がほとんどで,貿易量は冷凍品,加工品などの形で増えてはいるものの,穀物や果物のようには多くない。しかしヨーロッパでは野菜の貿易もかなりある。消費量も,気候・土壌条件に恵まれ野菜の種類も豊富な日本(年間1人当り105kg(1995))や韓国,イタリア,スペイン,フランス,ポルトガルなど南欧諸国,アメリカなどで多く,イタリアでは年間1人当り150kgを超える。これに対して北欧,アフリカ,東南アジア,中南米の諸国では総じて少なく,年間1人当り20~30kg程度のところも少なくない。エスキモーのようにまったくといっていいほど野菜をとらない例もある。
世界の野菜生産量はFAOの資料によれば4億8700万t(1995,以下同じ)であるが,生産の多い品目はトマト7828万t,キャベツ4211万t,タマネギ3240万t,ニンジン1447万t,キュウリ1935万tなどである。トマトは調味料など加工用を主として世界的に多く栽培され,イタリア,アメリカではトマト1種で野菜生産全体の約30%を占める(日本ではダイコン,ハクサイ,キャベツの合計で野菜全体の約40%)。野菜生産の多い国は中国1億2865万t,インド6461万t,アメリカ3360万t,旧ソ連3200万t(1989-91年平均),トルコ2163万t,日本1354万tなどである。
執筆者:黒田 満
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
副食物として栽培・利用される、主として草本性植物をいう。食料として一般に青物(あおもの)、また菜(さい)とよばれるものは、古くは圃菜(ほさい)、山菜(さんさい)、野菜、水菜(すいさい)と生育する場所により区別されていた。しかし、しだいに栽培されるものと野生のものとに分けて、前者を公式的表現、たとえば官公庁用語などでは蔬菜(そさい)、民間では一般に野菜とよぶようになり、後者を山菜というようになった。最近では官公庁用語でも蔬菜の名称を廃して野菜というようになり、農林水産省などの蔬菜試験場も茶業試験場と統合、野菜・茶業試験場と改称され、さらに2001年(平成13)独立行政法人農業技術研究機構(農研機構)所轄の野菜茶業研究所となった。
[星川清親 2021年2月17日]
2016年には農研機構の野菜花き研究部門と果樹茶業研究部門になった。
[編集部 2021年2月17日]
野菜は、世界の民族によって、その食生活の形、とくに主食の違いによって種類がかなり異なっている。しかし世界の文化の共通化が進むにつれて、食生活もしだいに特性を少なくし、野菜の種類も世界共通のものが多くなってきている。たとえばキャベツ、レタス、トマト、キュウリ、タマネギ、ニンジン、ジャガイモなどは、いまやほとんど世界中の民族にとって主要野菜となっている。しかし一方で民族によってきわめて固有な野菜もまだ少なくない。たとえば日本のクワイ、ハス、タケノコ、ウドなどはヨーロッパ諸民族は野菜として食べない。中国の料理にもマコモ、オオクログワイ、キンサイなど、中国人だけが好む野菜が数多くある。
[星川清親 2021年2月17日]
野菜の種類は世界全体で200~300あるが、きわめて局地的に利用されるものや特殊なものを除くとそれほど多くはない。日本では1年を通じて約150種の野菜が食べられている。これは、ヨーロッパでもっとも野菜の種類の多いフランスの約100種、ドイツの約80種、さらにアメリカの約95種に比べると、飛び抜けて多い。日本では日本固有の野生植物から野菜化されたものは、フキ、ミョウガ、ウド、ワサビなど、わずかの種類しかないが、農業が始まった弥生(やよい)時代以来、中国大陸や東南アジア各地から、野菜をいろいろ導入して種類を増やした。これらがいわゆる和食の野菜である。またさらに江戸時代、とくに明治時代にヨーロッパの野菜類を積極的に導入した。それらが西洋野菜または洋菜類とよばれるものである。日本列島は南北に長く連なり、地理的および季節的に気候の変異が大きいので、世界各地の野菜が栽培できること、また日本人が和食、洋食、中華食と食生活に開放的であるためにさまざまな野菜が利用されることなどが、日本が世界一の野菜の種類をもつに至った原因であろう。最近は山菜やキノコ類の栽培化が進み、野菜の種類はさらに増加の傾向にある。日本では主食の米食にあったおかずとして、ダイコン、ハクサイ、ネギなどの生産・消費が多いが、食の洋風化が進むにつれ、レタス、ピーマン、トマト、タマネギなど洋菜類の消費が伸び、伝統的な和風の野菜の消費は減る傾向にある。
[星川清親 2021年2月17日]
野菜は利用する植物体の部分によって次のように分類されている。
(1)果菜類 果実を用いるもので、キュウリ、カボチャ、スイカ、メロンなどウリ科作物と、ナス、トマトなどナス科作物が多い。マメ科もインゲンマメ、エンドウ、ソラマメ、ダイズ(枝豆)など種類が多い。ほかにオクラ、イチゴなど。
(2)根菜類 根を利用するダイコン、カブ、ニンジン、サツマイモ、ゴボウ、パースニップなど。また地下部の塊茎を用いるクワイ、サトイモ、ジャガイモや地下茎のハス(蓮根(れんこん))のほか、地中で葉が肥大したり変形したタマネギ、ラッキョウ、ユリ、ネギなど(以上4種は鱗茎(りんけい))がある。
(3)葉菜(ようさい)類 葉を食べるものにはキャベツ、ハクサイ、コマツナ、タイサイ、カラシナなどアブラナ科類が多い。ミツバ、セロリ、パセリなどセリ科、レタス、フキ、シュンギクなどキク科のものもいろいろある。ほかにホウレンソウ、フダンソウやツルナ、ツルムラサキなど種類が多い。
(4)花(か)・茎菜(けいさい)類 花を食べる野菜にはカリフラワー、ブロッコリー、アーティチョーク、ショクヨウギクなどがある。茎を食べるものにはウド、アスパラガス、タケノコなど、また茎が肥大したコールラビーなどがある。
(5)香辛料野菜その他 香辛料のなかでいわゆるハーブ(香草)としてはイノンド(ディル)、チャービルなど多くのセリ科植物、さらにウォータークレス(クレソン)、セージ、マヨラナ(マジョラム)、バジルなどきわめて多くのものがある。スパイスをとる野菜としてはトウガラシ(果実)、ショウガ、ワサビダイコン(セイヨウワサビ、塊茎)、ニンニク(鱗茎)などがある。日本的な香辛料野菜にはタデ、ハマボウフウ、シソ、サンショウ、ミョウガ、ワサビなどがある。
なお、豆類の多くは完熟したものは穀物として扱い、未熟のものは野菜として扱う。トウモロコシなども未熟果用は野菜に分類される。
[星川清親 2021年2月17日]
野菜は、デンプンを主とする穀物、あるいは肉食の副食物として、栄養的にはビタミンやミネラルを補給し、酸性に傾く肉・穀食をアルカリ性で中和する効果がある。また野菜に含まれる繊維質は消化・吸収を助長し、便通をよくするなど健康上に重要な働きをする。野菜のなかには、昔は薬草とされていたものも多く、この点でも保健上の効果が大きい。野菜は生鮮食料として用いられてきたが、現在では乾燥野菜や冷凍、缶詰など加工技術の発達により保存性が増し、また栽培技術の進歩により季節的な性格が失われて、周年供給されるものが多くなった。
[星川清親 2021年2月17日]
『熊沢三郎著『蔬菜園芸各論』(1967・養賢堂)』▽『高島四郎他著『原色日本野菜図鑑』(1964・保育社)』▽『青葉高著『ものと人間の文化史43 野菜――在来品種の系譜』(1981・法政大学出版局)』
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出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報
出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報
…そのほか,木本性で,デンプン性の果実をつけるパンノキや幹からデンプンをとるサゴヤシなども,熱帯地方ではエネルギー源となる食用作物として重視されている。 食用とする園芸作物は,大きく野菜類と果物類とに分けられる。園芸作物には,集約的な栽培を必要とするものが多く,穀物にくらべると貯蔵および運搬性が悪い。…
※「野菜」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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