ぽっくり(読み)ポックリ

デジタル大辞泉 「ぽっくり」の意味・読み・例文・類語

ぽっくり

[副]
物がもろく折れるさま。「木がぽっくり(と)折れる」
人が突然に死ぬさま。「あの若さでぽっくり(と)いくとは」
柔らかくふくらんでいるさま。「木の芽がぽっくり(と)ふくらむ」
馬がゆっくり歩く音や、そのさまを表す語。「お馬の親子はぽっくりぽっくり歩く」
[類語](1ぽきりぽっきりぼきぼきぽきぽきぼきりぽきんぼきんばきばきぱきぱきめりめりみりみりばりばり折るへし折る折る折れる畳む折り畳む折り重ねる折れ曲がる折り曲げる曲がる折損屈折曲折屈曲ちぎれる切り離す張り裂ける断ち切る真っ二つばらす/(2ころり突然死急逝頓死即死死ぬ亡くなる死する没する果てる眠るめいする逝くたおれる事切れるまか先立つ旅立つ死去死亡死没物故絶命絶息永眠めい逝去長逝永逝他界昇天往生落命横死憤死夭折ようせつ夭逝ようせい息を引き取る冷たくなるえなくなる世を去る帰らぬ人となる不帰の客となる死出の旅亡き数鬼籍に幽明さかいことにする黄泉の客命を落とす人死に物化まかくたばる絶え入る消え入るはかなくなる絶え果てる空しくなる仏になる朽ち果てる失命よう臨終

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精選版 日本国語大辞典 「ぽっくり」の意味・読み・例文・類語

ぽっくり

  1. 〘 副詞 〙 ( 「と」を伴って用いることもある )
  2. 物が折れるさま、転じて、元気だった人が突然死ぬさまを表わす語。
    1. [初出の実例]「これでポックリ逝って了はないものでもない、とも思はれた」(出典:河豚(1913)〈里見弴〉)
  3. 突然消え失せたり現われ出たりするさまを表わす語。
    1. [初出の実例]「車へ乗るとポックリ落ちて仕まって、後ろから見ると頭が隠れて仕まふ」(出典:落語・初夢(1892)〈三代目三遊亭円遊〉)
    2. 「ぽっくりとひとつの記憶が浮びあがる」(出典:感情旅行(1955)〈中村真一郎〉一一)
  4. うなずいたり、軽く礼をしたりするさまを表わす語。
    1. [初出の実例]「大袈裟に一つぽっくりと礼をばする」(出典:五重塔(1891‐92)〈幸田露伴〉七)
  5. やわらかくふくらんでいるさまを表わす語。
    1. [初出の実例]「ぽっくりふくらんだ柳の芽のしたに」(出典:月に吠える(1917)〈萩原朔太郎〉くさった蛤・陽春)

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改訂新版 世界大百科事典 「ぽっくり」の意味・わかりやすい解説

ぽっくり

底をくり抜き,爪先を前のめり,表面を楕円形にした歯のない下駄。台部を漆塗りにしたり,表面に畳をつけたりする。晴着姿の少女や京都祇園の舞妓などが用いる。関東ではポックリ,パッカなどと冒頭の音をp音にする場合が多く,関西ではコッポリ,コボコボ,カッポなどと多くはk音にする。青森県ではガッパ,長野県ではポンポンと呼ぶが,いずれもこの下駄をはいて歩くときの音から名付けられた。江戸時代の《短華蘂葉》(1786)には,〈やきすぎ(焼杉)のこっぽり〉とあり,このころより出現したらしい。明治時代のぽっくりには台横に1本の縦溝が入ったものがあり,二つの台からなる中折り下駄や台底をく(刳)った舟底下駄と関連があろう。《守貞漫稿》(1853)には傾城町の禿(かむろ)が必ず用いたとあり,また女児の外出にもはかれた。明治に入ってからは,少女たちの晴着用のはきものとなった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ぽっくり」の意味・わかりやすい解説

ぽっくり

幼女や嫁入り前の娘が、和装晴れ着を着た際に履く履き物楕円(だえん)形の分厚い台の底をくりぬき、その底の中に鼻緒を利用して小さな鈴を下げ、台は前緒のほうに向かって「のめり」をつける。台の側面に色漆を塗ってこれに蒔絵(まきえ)を施し、台の表には畳表をつけ、古くは鋲(びょう)打ちにしたりして華やかにつくられた。

 江戸時代、遊里の盛んなころに禿(かむろ)たちの履き物として用いられ、明治以降、もっぱら町人の子供の履き物として人気を博した。ぽっくりということばは、古くは木製の履き物の総称木履(ぼくり)といった字音からきたものといわれたり、くりぬき下駄(げた)の特色であるその踏み鳴らす音から出たともいわれている。地方によっては「ポンポン下駄」とも「こっぽり」ともいう。

[遠藤 武]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ぽっくり」の意味・わかりやすい解説

ぽっくり

少女用の下駄一種で,七五三などの祝い事の盛装に用いる。今日,日常的には祇園の舞妓の装いにみられる。台部にはキリ,スギなどを用い,底部をくりぬいて楕円形,前のめりにして,漆塗や蒔絵を施したものが多い。喜田川守貞の『守貞漫稿』に,これをはいて歩いたときの音から由来した語とある。関西地方では「こっぽり」とも呼ぶ。広く少女の間に流行し,底に鈴をつけたものもある。吉原遊郭の遊女の下駄として底をくりぬいて軽くして用いた文化・文政時代 (1804~30) からの流れを模したものといわれている。

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百科事典マイペディア 「ぽっくり」の意味・わかりやすい解説

ぽっくり

女児用の下駄の一種。語源は木履(ぼくり)の転訛(てんか)とも,歩くときの音からきたともいう。鼻緒はビロード,台はキリ,スギなどを用い,台の底をくり,後方を丸く,前方を前のめりにする。側面は漆塗,表は布張りや畳表が多い。祇園(ぎおん)の舞妓(まいこ)などは現在も用いる。
→関連項目下駄

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世界大百科事典(旧版)内のぽっくりの言及

【下駄】より

… 下駄は連歯と差歯に分けられ,連歯のうち二つ歯を駒下駄(関西で真(まさ)下駄)といい,おいらんの道中にはくものは三つ歯下駄という。台裏をくり抜いたものはぽっくり(こっぽり)下駄で,これの低いものを舟底下駄という。台裏を斜めに切り後ろに歯のあるのがのめり下駄(神戸下駄),後ろを丸く削ったものが後丸下駄である。…

※「ぽっくり」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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