僧侶の職名。禅宗では〈いの〉〈いのう〉という。起源は僧団の事務的管掌者をさす梵語の羯磨陀那。中国では,僧衆を統理する意味で綱維の維と,羯磨陀那の那をとって,維那という役職を設けて僧官制に組み入れた。維那は都維那(ついな)/(ついの)ともいうが,元来は都(中央)をつかさどる維那の意であったらしい。授事とも訳す。日本の寺院制度では上古から中古にかけて大寺院の僧綱は上座・寺主・都維那で構成されていた。維那は各宗派において事務当局の責任を具体的あるいは象徴的に示す用語とされ,法要の場においては僧衆の進退や威儀をつかさどる重要な役割とされ,読経などでは先唱し,回向もつかさどる。禅宗では六知事の一つとして独自の展開がみられるが,僧衆の修行を督励・監視し,堂内の衆務を総覧する役位と規定されている。紀綱とも称し,大衆の法悦を誘発させるので悦衆ともいう。
執筆者:高橋 美都
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…起源は僧団の事務的管掌者をさす梵語の羯磨陀那。中国では,僧衆を統理する意味で綱維の維と,羯磨陀那の那をとって,維那という役職を設けて僧官制に組み入れた。維那は都維那(ついな∥ついの)ともいうが,元来は都(中央)をつかさどる維那の意であったらしい。…
…すなわち禅院内を教学方面の西班と経済関係の東班に分かち,寺院の経理や荘園経営は東班の禅僧に行わせた。東班の最高位を都聞(つうぶん)または都官と呼び,その下に都寺(つうす),監寺(かんす),副寺(ふうす),維那(いのう),典座(てんぞ),直歳(しつすい)の六知事を置いて,これらの禅僧を東班衆と総称した。中国では副寺の下に現地の経営者である荘主がおり,荘主もまた都荘と副荘に分かれ,その下に諸荘監収がおり,甲幹荘甲(日本の名主に相当)を支配し,最下層に耕作民たる佃戸(でんこ)が位置した。…
…住職という呼称は,今日では宗派を問わず多く用いられているが,歴史的にみると,寺院最高位の僧職の呼称は時代により宗派により,またそれぞれの寺院によって,さまざまの異称や尊称がある。南都系や平安仏教系寺院では寺主(じしゆ),維那(いな),院家(いんけ),隠元(いんげん),浄土真宗や日蓮宗(法華宗)や時宗では上人(しようにん),禅宗では方丈,和尚,住持,長老(ちようろう)などの,住職をさす尊称がそれである。また,由緒ある大寺院ではその寺固有の歴史的呼称もある。…
…比丘とは乞食者(パーリ語のビックbhikkhu)の意味で,仏教の修行者が元来,出家・遊行を旨とし,托鉢(たくはつ)すなわち鉢を持って食を乞うて生活する沙門(しやもん)であったことに由来する。修行者はまた,教団内の役割に応じて,上座(大衆を統率する),維那(寺務をつかさどる),阿闍梨(あじやり)(大衆の教育に当たる),和尚(弟子を養育する)等とよばれ,あるいは法師(在家信者へ説法。布教者),瑜伽師(ゆがし)(禅師。…
※「維那」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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