改訂新版 世界大百科事典 「オオカナワラビ」の意味・わかりやすい解説
オオカナワラビ
Arachniodes amabilis(Bl.)Tindale var.fimbriata K.Iwatsuki
関東以西の低地の林内や林縁に普通なオシダ科の常緑多年生シダ植物。根茎は短く横走し,3~4枚の葉をつける。葉は2回羽状複生,濃緑色で硬紙質,3~7対の側羽片と,同形の頂羽片が発達する。葉片は平行四辺形に近く,鋭鋸歯の先は短刺状となる。胞子囊群は葉片の辺縁に近くつき,包膜は円腎形で,縁の一部が毛状に伸びる。湿った土壌を好み,スギの造林のさいの指標植物の一つとされることがある。母種のヤクカナワラビA.amabilis(Bl.)Tindaleは,インドから中国を経て屋久島まで分布している。近縁種にシビカナワラビA.hekiana Kurata(日本特産)やミドリカナワラビA.nipponica(Ros.)Ohwi(ヒマラヤ,中国,日本に分布)がある。カナワラビ属Arachniodesは東アジアに約50種が知られ,コバノカナワラビA.sporadosora(Kunze)NakaikeやホソバカナワラビA.exilis(Hance)Chingは沿岸部のシイ-タブ林に多い。ハカタシダA.simplicior(Makino)Ohwiには濃緑色の葉面に黄緑色の鮮やかな斑がはいるものがあり,世界中で観賞用とされている。
執筆者:光田 重幸
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報