知恵蔵 の解説
こちら葛飾区亀有公園前派出所
警視庁新葛飾警察署管内、亀有公園前派出所に勤務する警察官の「両さん」こと両津勘吉巡査長が主人公で、破天荒な行動を取る両津が周囲の人や地域住民を騒動に巻き込んでいくストーリー。数多くの登場人物の中で、主要な人物としては大企業「中川コンツェルン」の御曹司・中川圭一、「秋本貿易」の社長令嬢で、母はフランス人である秋本・カトリーヌ・麗子、葛飾区亀有公園前派出所勤務の巡査部長・大原大次郎が挙げられる。
ストーリーには三億円事件、ロッキード事件、阪神大震災、東京の都市開発などの時事ネタが盛り込まれている場合が多い。また、両さんが参議院選に出馬したり、プロレス団体にスカウトされたりという話もあり、世相を反映した内容で展開されている。
40年間で1度も休載がなく、連載が休むことなく続けられたことについては、作者とアシスタントともども、勤務時間を午前9時から午後8時に設定し、途中で食事の休憩を1時間ずつ2度挟み、日曜日は休みとするなど規則正しい生活を送ってきたからと秋本はインタビューで答えている。
テレビアニメは全373話。1996年6月から2004年12月まで、フジテレビ系列で、日曜日の午後7時から放送された。両津の声はラサール石井が担当。また、同系列で連載40周年スペシャルとして06年9月18日に「こちら葛飾区亀有公園前派出所~THE FINAL 両津勘吉最後の日~」が放送され、マンガ同様にテレビアニメも完結した。
実写のテレビドラマは09年8月から9月までTBS系列で放送された。両津はSMAPの香取慎吾が演じ、速水もこみち、香里奈、伊武雅刀などが出演した。テレビドラマをベースとした映画「こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE ~勝どき橋を封鎖せよ!~」は11年8月に松竹系劇場で公開された。1977年12月には両津をせんだみつおが演じる実写版映画が公開されている。
99年以降、舞台版も制作された。両津をテレビアニメで声を担当したラサール石井が演じ、脚本・演出も担当。99年、2001年、03年、06年、16年と公演が行われた。
「こち亀」と原作者の秋本は「第64回菊池寛賞」(日本文学振興会主催)を受賞。同会によると「40年間1度の休載もなく描き続け、世相・風俗を巧みに取り入れ、上質な笑いに満ちた作品を本年200巻で堂々と完結させた」ことが選定理由となっている。
(若林朋子 ライター/2016年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報