ポスティング(読み)ぽすてぃんぐ(その他表記)posting system

知恵蔵 「ポスティング」の解説

ポスティング

フリーエージェント権を持たない日本のプロ野球選手が、アメリカのメジャーリーグ移籍を希望し、所属球団がそれを認めた場合、メジャーリーグ球団が日本の所属球団から移籍の交渉権を入札で獲得する制度。
移籍を希望する選手の所属球団は、日本のコミッショナーに移籍が可能である旨を連絡し、日本側からメジャーリーグ・コミッショナーを介してメジャーリーグ全球団に告知される。獲得を希望するメジャーリーグ球団は交渉権を得るための入札金額をメジャーリーグ・コミッショナーに通知する。所属球団がその最高入札額を受諾した場合、入札球団に選手との30日間の独占交渉権が与えられ、契約交渉が始まる。交渉が成立すれば、入札金額が所属球団に支払われる。選手は移籍チームを選ぶことは出来ない。日本の球団が見返りなしに選手を失うことを防ぐため、1998年に導入された。
2011年シーズンまでに、A.ケサダ、イチロー石井一久、R.ラミーレス、大塚晶則、中村紀洋、森慎二、松坂大輔、岩村明憲、井川慶、西岡剛の11人がポスティングによってメジャーリーグへ移籍している。一方、10年にポスティングされた岩隈久志(楽天)や、11年の中島裕之(西武)のように、日本の所属球団が入札を受諾したものの、契約に至らなかったケースも出ている。
近年は、有力選手が他球団へ移籍することを防ぐために、契約する意思が薄いにもかかわらず高額で入札のみを行うメジャーリーグ球団が出現することが危惧され始めている。また、選手にとっては、契約交渉できる球団が1つのみとなるため、不利な条件に陥りやすいとの指摘もある。
12年には、青木宣親がミルウォーキー・ブルワーズへ、また、ダルビッシュ有が過去最高の入札額約5170万ドル(約39億8千万円)でテキサス・レンジャーズへ移籍することとなった。

(葛西奈津子  フリーランスライター / 2012年)


ポスティング

「ポスティングシステム」のページをご覧ください。

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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