化学辞典 第2版 「ヨードシル塩」の解説
ヨードシル塩
ヨードシルエン
iodosyl salt
化学式から,IO+を陽イオンまたは陽性基として含む化合物と定義されるが,多くは分子または高分子型の化合物である.【Ⅰ】(IO)2SO4は,I2 または I2 + HIO3を濃硫酸と反応させると得られる.0.5水和物は黄色の結晶である.同様に,I2 とHNO3から,IONO3が得られる.【Ⅱ】フッ化物(iodosyl fluoride)は2種類ある.
(1)三フッ化ヨードシル(iodosyl trifluoride):IOF3(199.90).I2O5を沸騰したIF5に溶かし,冷却すると得られる.無色の結晶.I原子のまわりにF3Oが,孤電子対を含めて三方両すい型に結合している.O原子と孤立電子対は赤道面上,F原子はアキシアルに計2個,赤道面上に1個統合している.I-O約1.82 Å,I-F約1.73 Å(赤道面),1.83,1.90 Å(アキシアル).∠F-I-O約98°.吸湿性があり,110 ℃ でIO2FとIF5に分解する.[CAS 19058-78-7].
(2)五フッ化ヨードシル(iodosyl pentafluoride):IOF5(237.90).IF7にH2O,SiO2,I2O5などを反応させると得られる.無色の液体.I原子のまわりはF5Oが正八面体型に結合している.I-O約1.71 Å,I-F約1.86 Å(Oのトランス位),1.82,1.72 Å(O-I-F軸に垂直な四角平面).∠I-O-I約98°.融点4.5 ℃.[CAS 16056-61-4]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報