アクティビスト(読み)あくてぃびすと(英語表記)Activist

デジタル大辞泉 「アクティビスト」の意味・読み・例文・類語

アクティビスト(activist)

政治的・社会的な活動家
財政支出(政府投資拡大で内需振興を主張する積極財政論者。財政再建優先のノンアクティビストに対していう。
物言う株主

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

知恵蔵 「アクティビスト」の解説

アクティビスト

株主としての利益を最大化するための提言を投資先企業に対して行うなどして、企業の経営内容などに積極的に関わる、いわゆる「もの言う株主」のこと。資金力の乏しい個人や小グループでは発言権が限られるので、アクティビストファンドとして大きな資金力を背景に相当数の株式を取得して活動することが多い。
アクティビストは自身が株主という立場にある。それゆえ、投資先企業の経営内容を改善し、その企業価値を高めるということが、自身の利益につながる基本目的である。このため、本来的には、その存在は企業にとって有益なものであり、経営の緩みをただす指標になるなどの利点も多い。こうしたことから、企業の経営陣もアクティビストを受け入れ、対話交渉前向き姿勢を示すようになってきている。ただし、株主はあくまでも投資家であって、企業経営者ではない。特定企業の消長に永続的に腐心するとは限らず、むしろ常に効率的な投資先や資金運用先を探している。従って、配当増額や事業の切り売りや分社化による短期の増益を経営陣に求め、そのようにして高騰した株式を売却して利益を得て、別の投資先に乗り換えるということもある。こうしたことは、長期的な企業利益には反することがあり、企業経営にとって短所ともなりうる。
アクティビストの存在が内包するこうした短所とやや重なるものに、1990年前後から猛威を振るったハゲタカファンドや、かつて日本の株主総会に跳梁(ちょうりょう)した総会屋の存在がある。ハゲタカファンドは破綻(はたん)の危機に瀕(ひん)した企業の株を買いたたき、資産の売却や企業再生で巨利を得ようとするものである。ほとんど無価値なものから利益を生み出すための判断や技量が求められリスクがきわめて高い。日本にもバブル崩壊後の2000年前後にリップルウッド・ホールディングス(現RHJインターナショナル)などの外資系ファンドが乗り込み、8兆円近い公的資金が投入された日本長期信用銀行の破綻を巡り、同行をわずかな金額で買収し、数年後に再上場させて数千億円もの高値で売却したことなどが話題になった。ハゲタカファンドの手法は、企業につながる労働者や債権者など、特定株主以外の利害関係者を全く無視した合法ながらも強引なものであることが多く、大きな社会的非難を浴びた。更に、同業ファンド間の競争激化や法制度、税制変遷などにより利益も見込めなくなったため、こうした手法は現在では衰退している。これに対して、アクティビストは、潜在的な価値を有するのにそれを活用できず低迷している企業をその対象にすることになり、両者の位相には大きな差がある。総会屋は株主総会で発言するための方便としてごくわずかな株式を所有するが、企業の所有者、投資家としての株主ではない。株主総会で議事を妨害したり、逆に一般の株主を抑え込んで経営側に都合よく株主総会を乗り切る加勢をしたりというのがなりわいだ。株主の利益とは無関係に、企業から賄賂のような金品を不法もしくは脱法的に受け取ることがその目的である。このため、総会屋の存在は企業の健全な経営にとって害悪でしかなく、80年頃からは商法や会社法などによって厳しく規制され、社会から排除されていった。
アクティビストは、こうした投資や株式の世界における負の存在とオーバーラップする側面がある。また、きわめてわずかな株式しか保有せずに経営側に執拗(しつよう)に迫るアクティビストもある。このため、経営側や一般株主からは必ずしも歓迎されない場合が少なくない。しかし、漫然とした不合理な経営による業績の悪化や株価の低迷に対して、株主の立場から具体的な提言で改善を求めるといった意味で、アクティビストの活動には大きな意義がある。更に、年金基金など莫大(ばくだい)な資金を有しながら、その運用の知識や技量が不足し、「もの言わぬ大株主」に安閑としてきた機関投資家などと連携して、活動の幅を広げるアクティビストも増えてきている。従来、日本では穏健な株主が大勢を占めていた。また、経営資源を積極的に活用することを避けたり、株主への配当を抑えていたりする企業も少なくない。株式市場では、こうした企業風土に新しい風を吹き込むものとして、アクティビストの活躍に期待をかける向きもある。

(金谷俊秀 ライター/2018年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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