物言う株主(読み)モノイウカブヌシ

  • ものいうかぶぬし〔ものいふ〕

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

株主としての権利を行使し、企業価値が向上するよう経営の見直しを求める投資家の総称。海外では、大量に取得した株式をてこに、積極的に経営改革を迫ることから、アクティビストactivist(行動主義者)とよばれる。経営効率を高めて株価や配当を引き上げる目的で、低収益事業の売却、高収益事業の買収・合併(M&A)、経営資源の集中、コスト削減、手元資金の活用、改革に消極的な役員の退任、改革推進派の役員選任などを要求する傾向がある。投資家から資金を集めて高い利回りをねらう投資ファンドや年金基金のほか、保険会社などの機関投資家や、電力会社株を保有する地方自治体もこれに該当する。

 1980年代にアメリカで、カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)などが物言う株主として活発に活動するようになり、日本では1989年(平成1)に小糸製作所にアメリカの投資家ブーン・ピケンズT. Boone Pickens(1928―2019)が買収攻勢をかけて、物言う株主が注目されるようになった。2000年代前半には元通産官僚の村上世彰(よしあき)(1959― )率いる村上ファンドがTBS株などを買い占めて経営改革を迫り、2013年にはアメリカのヘッジファンド大手サード・ポイントThird Point LLCがソニーの映画・音楽部門の分社化を要求するなど、市場での存在感を高めていった。イギリスの投資情報会社アクティビスト・インサイトの調査によると、2015年時点で経営見直しなどを公式要求した投資ファンドの数は世界で300を超えている。

 なお、物言う株主に対し、経営に口を出さずに株式だけを保有する株主を「物言わぬ株主」(サイレントパートナー)という。日本では長く、保険会社、信託銀行などの機関投資家が株式を保有したり、企業同士で株式を持ち合ったりしながら、企業経営には口を出さない慣習が続いた。しかし経営改革を迫る外国人投資家が台頭したうえ、2014年(平成26)に金融庁が投資先企業の経営を機関投資家にチェックするよう定めたスチュワードシップ・コードを制定したことから、保険会社や信託銀行などの機関投資家も、株式総会で経営陣への反対票を投じるなど物言う株主として行動するようになっている。

[矢野 武 2016年5月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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