ワイヤレス電力伝送(読み)わいやれすでんりょくでんそう

知恵蔵の解説

ワイヤレス電力伝送

電力を供給する側から一定の距離を隔てた位置にある電力を消費する機器に、電気的な接点や電線を使わず、電磁誘導などによって電気エネルギーを受け渡す方式のこと。ワイヤレス給電とも呼ばれ、鉄道乗車カードなどの非接触式ICカードを作動させるための電力供給に使われている。近年は電動歯ブラシ、電気シェーバー、スマートフォンなどの小電力機器でも利用が広がり、内蔵バッテリーの充電に用いることから、特にワイヤレス充電あるいは非接触充電とも称される。
電気は他のエネルギーに比べると搬送が比較的容易だが、受電側の機器は電力線を通して送電側に接続することが求められる。プラグとソケットのように電気的に接続する接点は正確な位置で接触させる必要があり、露出した接点は劣化や感電の恐れがある。電車などの集電器では、接点になる架線やパンタグラフが損耗したり火花が飛んだりする。ワイヤレス電力伝送では、直接の接触なしに電力を受け渡すため、これらの問題が解決できる。交通系ICカードや電子マネー、人や物の出入りを非接触のICチップで管理するRFIDシステムなどは、カードが検出器に信号を送るときに電気を使う。このための微弱電流は検出装置の側からワイヤレスで供給されている。電動歯ブラシなどの小電力機器もワイヤレスにすれば、水濡れや感電の危険のある電気接点の露出を避け、防水性や絶縁性が確保できる。毎日のように充電を繰り返すスマートフォンなどは、充電の際にケーブルの抜き差しが不要になり利便性が高まる。これらの小電力機器の給電については、多くの機器に採用される国際規格Qi(チー)や、A4WP(エイフォーダブリューピー)などいくつかの方式がある。こうした微弱電流の給電や小電力機器の充電ばかりでなく、リニアモーターカーの車内電力を賄うための電力伝送にも活用される。
Qiなどではワイヤレス電力伝送の手段に電磁誘導(MI)の現象を利用している。給電側のコイルの導線に電流が流れると、そのまわりに磁界が生じる。給電側の電流の変化に伴って磁界が変化する空間に受電側のコイルを置くと、その導線には誘導電流が起きる。こうして、直接つながっていない二つの導線の間を電気エネルギーが移動する。A4WPなどではこの方式から発展してより効率的な電力伝送を行うために、電力をやり取りする二つのコイルを高い周波数で共振させる磁気共鳴(MR)という方式を採用している。MI方式は給電する電力を大きくしやすく、周辺に及ぼす磁気の影響を容易にシールドすることができるが、二つのコイルを同じ向きに合わせるなど位置関係が限定され、給電・受電の二つのコイルは近接して置く必要がありその距離は大きくできない。MR方式は大きな電力の給電が難しく、磁気の影響をシールドしにくいが、コイルは小さくコンパクトで、比較的大きな距離でも給電でき、コイルの位置関係の自由度が高いため、1台の給電器で周辺に置いた複数台の機器に対して、同時に電力伝送することも可能である。

(金谷俊秀 ライター/2018年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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