生命を維持するために体のなかでは多くの物質の化学変化が行われています。たとえば食べ物として外から摂取された物質はさまざまな分解や合成をへて、体の成分や生きるために必要な物質、エネルギー源となり、不要になったものは排泄されます。このような一連の化学変化を代謝と呼びます。先天性代謝異常症とは、体のなかの特定の物質代謝が生まれながらにして正常にはたらかないために、体にとって好ましくない状態がもたらされる遺伝性の病気です。
体のなかではアミノ酸、糖質、脂質をはじめとして多くの物質代謝が営まれており、これらの物質代謝が損なわれた状態をそれぞれ先天性アミノ酸代謝異常症、糖質代謝異常症、脂質代謝異常症などと分類しています。
先天性代謝異常症の障害が生じる機序(仕組み)を模式的に示します。AからDまでの正常の代謝経路を考えます(図40)。各段階の反応は
その結果、Cもしくはその前の物質のBなどが生体内に過剰に蓄積し、毒性を発揮することで生体機能に障害を与えます。これが大部分の先天性代謝異常症の原因です。一部には、生成物のDが欠乏するために障害を生じるような病気も知られています。
先天性代謝異常症の症状は多岐にわたっています。脳は機能が複雑な組織であるので障害を受けやすく、多くの先天性代謝異常症では知能障害やけいれんを伴います。
また、肝臓や
大浦 敏博
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
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