日本大百科全書(ニッポニカ) 「天心独名流」の意味・わかりやすい解説
天心独名流
てんしんどくみょうりゅう
近世剣術の一流派。流祖は根来独身斎重明(ねごろどくしんさいしげあき)(1605―82)。天心独明流とも書き、裏芸に真妙(しんみょう)流柔術をあわせ教授した。重明は紀州根来の人、初め亀井八九郎といい、兄平右衛門忠雄(ただお)とともに、伊藤典膳忠也(てんぜんただなり)に従って一刀流兵法を学び、剣の奥旨を究めた。のち兄は一刀流忠也(ちゅうや)派2代を継ぎ、弟は廻国(かいこく)修行を経て、1658年(万治1)二本松藩主丹羽長次に仕えたが、63年(寛文3)致仕して江戸へ出て道場を開き、名を根来独身と改め、流名を天心独名流と称した。多くの門人のうち、関宿(せきやど)藩主久世大和守広之(くぜやまとのかみひろゆき)、水戸藩に継承された凉天覚清(りょうてんかくせい)流の祖堀口亭山貞勝(ていざんさだかつ)らが傑出した。
[渡邉一郎]