歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「太平記菊水之巻」の解説
出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報
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…なお,明治以降には,《高時》(《北条九代名家功》),《大森彦七》《女楠》など,のちに新歌舞伎十八番の中に入れられる諸作が,河竹黙阿弥や福地桜痴の手によって作られた。また,その他,近世には,幕府をはばかって,赤穂浪士の敵討や由井正雪の事件を《太平記》の世界に仮託,脚色するという方法が一般化し,前者に当たるものとしては,1710年大坂竹本座の《兼好法師物見車》および《碁盤太平記》,48年(寛延1)8月竹本座の《仮名手本忠臣蔵》,66年10月竹本座の《太平記忠臣講釈》,由井正雪の事件を扱った作品では,1759年(宝暦9)9月竹本座の《太平記菊水之巻》などが演ぜられている。ただし,それらは,太平記物とは別に,忠臣蔵物,由井正雪物として扱われるのが普通である。…
…この作では,正雪の生い立ちから武者修行,森宗意軒に妖術を習い,江戸に出て楠不伝の家を奪い,丸橋忠弥ら4800人の浪人を集めて謀反を起こす様が描かれ,これに宮城野,信夫(しのぶ)の仇討をとりまぜ,大衆性に富む読物として流布し,講釈でも行われてきた。当代の事件を出版または劇化することが法規に触れるため,舞台化は困難を伴ったが,1729年(享保14)2月竹本座で竹田出雲ら作の《尼御台由井浜出(あまみだいゆいのはまいで)》の浄瑠璃が上演され,正雪は奇井中節の名で登場,ついで歌舞伎では57年(宝暦7)1月大坂姉川座《けいせい由来記(こんげんき)》に志井常悦として登場,また59年9月竹本座の浄瑠璃《太平記菊水之巻》(近松半二ら作)は南北朝に世界をとり,宇治常悦の名で,足利転覆を企てたが最後は南北朝和合を条件として自害する結末となっている。ほかにその改作物《嗚呼忠臣楠氏籏(ああちゆうしんなんしのはた)》(1771年12月,豊竹座),宮城野,信夫の仇討を主筋とした《碁太平記白石噺(ごたいへいきしろいしばなし)》(1780年1月,江戸外記座)などの慶安事件物があるが,いずれも仮名で登場,1870年(明治3)3月守田座での《樟紀流花見幕張(くすのきりゆうはなみのまくばり)》(河竹黙阿弥作)によって,初めて法的に解禁され,通称《慶安太平記》の名で,以来しばしば上演される。…
※「太平記菊水之巻」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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