日本大百科全書(ニッポニカ) 「按腹図解」の意味・わかりやすい解説
按腹図解
あんぷくずかい
按摩(あんま)術の一様式である腹部按摩法(按腹)の術式を図解説明したもの。1冊。太田晋齋(しんさい)著。1827年(文政10)刊。江戸初期よりこの時期まで、自己流の按摩術が乱立し、古来の疾病治療という目的を失う方向にあったものを修整しようという意図のもとに著された。このなかでは按摩について「専(もっぱ)ラ一元気ノ溜滞(りゅうたい)ヲ活溌ニシ、臓腑(ぞうふ)ヲ安住シ、腸胃ヲ調和シ、血脉(けつみゃく)ヲ融通シ、骨節ヲ和利シ、筋絡ヲ舒暢(じょちょう)シ、肌膚ヲ潤澤(じゅんたく)シ、飲食ヲ進メ、二便ヲ利シ、気力ヲ盛ニスル」と述べ、按摩術を施すことは、人体の生理的作用を円滑に運ばせ諸病の治療に適すること、とくに癇(かん)(神経病、精神病)および疝(せん)(腹痛)などには治効があると記されている。
[岡部素明]