腹痛(読み)ハライタ(その他表記)abdominal pain
coelialgia

デジタル大辞泉 「腹痛」の意味・読み・例文・類語

はら‐いた【腹痛】

腹が痛むこと。ふくつう。「急に腹痛を起こす」

ふく‐つう【腹痛】

腹部の痛み。はらいた。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「腹痛」の意味・読み・例文・類語

ふく‐つう【腹痛】

  1. 〘 名詞 〙 腹部の痛みの総称。腹部内臓の病気による症状のうちで、診断上重要な手がかりとなる。はらいた。〔羅葡日辞書(1595)〕
    1. [初出の実例]「持たが病の腹痛(フクツウ)に悩」(出典:洒落本・通言総籬(1787)自序)

はら‐いたみ【腹痛】

  1. 〘 名詞 〙はらいた(腹痛)
    1. [初出の実例]「婆っぱ、どした、と〈略〉声をかけると、なんでもないす、持病の腹痛みでなんす、とそのまま静かになった」(出典:鶯(1938)〈伊藤永之介〉)

はら‐いた【腹痛】

  1. 〘 名詞 〙 腹が痛むこと。ふくつう。はらいたみ。
    1. [初出の実例]「はらいたはらいたといふいふいそぎいぬるなり」(出典:細流抄(1525‐34)一)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

内科学 第10版 「腹痛」の解説

腹痛(急性腹症)(救急治療)

定義・概念
 腹痛とは腹部に自覚される疼痛を意味する.腹痛は消化器疾患に由来することが多いが,それ以外の要因により発症することもある.疾患の緊急性を判断し診療を行うことが重要である.急性腹症(acute abdomen)は激しい腹痛を呈する状態であり,従来は緊急開腹手術の適応とされていた.最近は画像診断機器などが進歩し,病態を正確に把握することで,不要な緊急開腹手術が回避される症例が多くなった.
分類
 腹痛の診療では,緊急性の見極め,鑑別診断,治療法の選択などを短時間に判断しなければならない.以下の4つの分類はその判断を下す際に必要な基礎知識である.
1)痛みの病態生理による分類:
腹部の痛みは病態生理学的な分類から,体性痛,内臓痛,関連痛の3つにおもに分類される.腹部疾患の多くは,これらが混在し症状を形成している.腹痛の緊急性を判断するために,痛みの性質と随伴する症状については十分な理解が必要である.
 a)体性痛(somatic pain):体性痛は持続的で局在のはっきりした強い痛みである.キリキリした鋭い痛みであり,ときに拍動性に痛む.圧痛の局在も明瞭で,腹膜刺激症状を呈する.体性痛を現す病態では腹膜炎を伴っており,緊急手術の適応を第一に考慮する.
 壁側腹膜,腸間膜および横隔膜には知覚神経が密に存在し,その自由終末に侵害受容器が存在する.捻転などの物理的刺激あるいは消化液や血液,細菌などによる化学的刺激,虚血あるいは炎症を侵害受容器が感知すると,その侵害刺激は求心経路により脊髄後根神経節を介しておもに外側脊髄視床路を上行し,視床を経て大脳皮質の体性感覚野に投射され,局在性のある痛みとして知覚される.知覚神経は腹壁にも分布するため,体性痛は筋性防御(defense musculaire,muscular defense)や反跳痛(Blumberg徴候)などの腹膜刺激症状を呈する.体動により悪化するため,患者は動かないことが多い.高齢患者や精神疾患患者の場合には体性痛であっても,症状が軽度のことがあり,明らかな腹膜刺激症状を認めないことがあるので注意が必要である.体性痛には非オピオイド系鎮痛薬やオピオイドが有効である.
 b)内臓痛(visceral pain):内臓痛は腹部の正中線上に自覚される部位感の乏しいびまん性の痛みである.疝痛 (colic pain)のように差し込むような強い痛みのこともあれば,鈍痛である場合もあり,不快感や膨満感として自覚することもある.周期的,間欠的に生じ,悪心,嘔吐,発汗,頻脈などの自律神経反射症状や情動的な反応を伴うことが多い.
 内臓には侵害受容器がまばらに存在し,管腔臓器(胃,腸,胆道,尿管など)の急激な収縮,強い伸展,虚血,炎症などによる侵害刺激を感知する.感知された刺激はおもに脊髄無髄神経により求心性に伝達され,おもに内側系の脊髄視床路や脊髄網様体路を通って伝達される.この経路はおもに,視床下部や大脳辺縁系,中脳水道周辺灰白質などに投射される.
 内臓痛は前述のように局在性のはっきりしない痛みであるが,一般には胃十二指腸や胆道系の疾患は上腹部に,小腸や結腸の疾患は臍周囲に,直腸や骨盤内臓器の疾患は下腹部に痛みを自覚する.体動によって軽快する場合があり,鎮痙薬が奏効する.
 c)関連痛(referred pain):関連痛は,内臓痛や体性痛を発する病巣とは離れた場所に感じる痛みである.放散痛や投射痛ともよばれる.内臓痛が強くなると,その痛みを伝達する神経が脊髄後核で皮膚の知覚神経と干渉し,脊髄分節のデルマトーム(皮膚分節知覚帯)上の痛みとして間違えて知覚する.たとえば,胆石の疝痛発作のときに右肩甲骨や右上腕に痛みが放散することがある.
 d)その他:末梢神経や中枢神経の直接的な障害により発生する痛みを神経因性疼痛といい,腹痛を呈することがある.痛みは,灼熱痛や電撃痛として感じられるが,腹部の触診や食事により増強することはない.帯状疱疹による痛みや,腫瘍による神経障害性疼痛などがある.
2)腹痛をきたす腹部臓器以外の疾患(表3-2-4):
腹痛は腹部臓器以外の疾患でも起こる.急性腹症の診療にあたる際は常に以下のような疾患を頭の片隅におきながら,慎重な鑑別診断を行う.
 a)循環器・呼吸器系疾患:急性心筋梗塞が上腹部の激痛で発症することはまれではない.急性心筋梗塞や肺梗塞は関連痛として腹痛が起き,通常腹部触診にて圧痛は認めない.
 大動脈瘤破裂,大動脈解離,上腸間膜動脈血栓症はまれであるが致命的な疾患である.救命のためには迅速な診断・治療が必須である.腹部大動脈瘤破裂は急激な腰背部の引き裂かれるような激痛で発症し,急性腹症から短時間でショック状態となる.上腸間膜動脈血栓症や大動脈解離は強い自覚症状のわりに腹部圧痛が軽度である.
 b)全身性疾患:腹痛を呈する疾患は多岐にわたる.頻度は高くないが,全身性エリテマトーデスでは腹膜炎を起こし急性腹症となることがある.急性ポルフィリン症や急性鉛中毒では,消化管蠕動が亢進し腸閉塞との鑑別が困難である.Henoch-Schönlein紫斑病は出血斑が出現する前に激しい腹痛を起こすことがあり,急性虫垂炎などとの鑑別が困難な場合がある.
 c)脳脊髄・神経疾患:脳腫瘍などによる中枢神経系への障害あるいは帯状疱疹などによる脊髄神経や神経根に由来する神経因性疼痛である.
 d)寄生虫症:胃アニサキス症は虫体へのArthus反応などのアレルギー反応が主因と考えられている.非常に強い上腹部痛を呈するが,内視鏡による虫体の除去により速やかに症状が消失することが多い.
3)部位による分類(表3-2-5):
腹痛の部位によりある程度, 原因疾患が想定される.急性腹症の場合,迅速に診療を進める必要があり,このような分類を頭に入れながら診察・検査を行う.
4)疾患の病態による分類(表3-2-6):
疾患の病態により大きく4つに分類される.病態による分類は治療法の選択に結びつく.
診断
 注意深い問診と身体診察が正しい診断へ到達するために最も重要である.問診と診察で疾患の緊急性を把握し,診療に必要な検査と処置を迅速に判断する.
1)問診:
問診の要点を表3-2-7に示す.急性腹症で全身状態が不良な患者,小児や精神疾患で意思疎通が困難な場合には,同居家族から情報を得る場合もある.
 既往歴,手術歴,服薬歴,アレルギー歴,飲酒歴,家族歴などを聴取する.女性の場合は月経の状況や妊娠の有無を聴取する.これまでに同じような症状で治療歴があるか,基礎疾患に何があり,どのような治療を受けていたのかなどを具体的に聴取する.腹部臓器以外の疾患でも腹痛が起こることを念頭に(表3-2-4),注意深い聴取が必要である.
 腹痛の部位により想定される疾患がある程度絞られる(表3-2-5).発症の状況,たとえば急激な発症であれば,消化管穿孔,心筋梗塞,大動脈解離,胆石性急性膵炎,尿路結石などがあり,徐々に強くなる場合は炎症を示唆する.時間経過で症状がどのように変化しているか,限局していた痛みが広がる,あるいは移動していないか.たとえば急性虫垂炎では発症当初は心窩部から臍を中心とした痛みであるが,時間の経過とともに右下腹部に限局する.痛みが持続性か間欠性かは有用な情報である.痛みを悪化させる因子,改善させる因子や,発熱,悪心・嘔吐,下痢,吐下血などの随伴する症状も聴取する.当日の排便の有無や便の性状,最近の体重変化なども重要である.
2)身体診察:
腹部の診察に入る前に,全身状態の評価を行う.意識レベル,体温,血圧,脈拍数,呼吸数などをチェックすることで疾患の緊急性をはかり,ショック状態やそれに近い状態の場合はまず全身状態の改善をはかることを優先し,並行して診察と検査をすすめる.患者の表情,姿勢,歩行できるかどうかなどは疾患の重症度を測る目安となる.眼瞼結膜や眼球結膜に貧血や黄疸がないか,脱水の有無,口臭,甲状腺腫大の有無,心雑音や不整脈の有無,肺雑音や呼吸音減弱,身体各所の動脈の触診などは手早く行う.
 腹部の診察の手順は,視診,聴診,打診,触診の順に行う.視診では出血斑や皮疹の有無,手術痕,平坦か膨隆しているか,腸管の蠕動などに注意する.鼠径ヘルニアや大腿ヘルニア嵌頓の有無を確認するためには十分に腹部を露出することが重要である.次に聴診を行うが,機械的イレウスでは典型的には金属性有響性雑音(metallic sound)が聴取される.次に打診であるが,打診や聴診を行う際には腹痛の部位を確認し,そこを最後に診察する.打診は腸管内ガスの局在や,多量の腹水の有無,肝腫大や脾腫大の有無などを鼓音と濁音の境界を調べることにより知ることができる.また,腹膜刺激症状がある場合には軽い打診により,反跳痛類似の所見を得ることができる.触診は浅い触診をまず行う.仰臥位で下肢を屈曲させ,腹部の緊張をとってから行うことが多い.重要な所見は,筋性防御,圧痛点,腫瘤の触知,反跳痛の有無である.筋性防御は腹膜炎の存在を示す所見で,軽度の触診で反射的に腹壁の緊張がみられることをいう.炎症が高度になると腹部全体の筋性防御が著しくなり板状硬(board-like rigidity)を呈する.反跳痛は腹部を手で圧迫し,その後急に手を離したときに生じる痛みであり腹膜刺激症状を意味する.通常は浅い触診を行った後で,深い触診を行うが腹膜刺激症状がはっきりしている場合には,いたずらに患者の苦痛を増悪させる深い触診を行う必要はない.直腸診はときに有用で,触診にて明確とならない骨盤内の炎症が診断できる.
3)臨床検査:
 a)血液検査:
 ⅰ)血算:貧血の有無や白血球数や白血球分画(核の左方移動)から炎症の程度を知ることができる.しかし,出血直後ではヘモグロビンヘマトクリットが低下しないことや,重症感染症では白血球数がむしろ減少することもある.
 ⅱ)生化学的検査:血清アミラーゼは急性膵炎のみならず,急性胆囊炎,消化管穿孔,イレウスでも上昇するため,特異性の高い血清リパーゼの測定が急性膵炎の診断で有用である.肝機能検査(ビリルビン,AST,ALT,ALPなど),血糖値,電解質(Na,K,Cl,Ca),腎機能(血液尿素窒素,クレアチニン)は全身状態を評価するために必要である.
 ⅲ)動脈血ガス分析:呼吸状態と酸塩基平衡を調べるために必要である.強度の代謝性アシドーシスは広範な腸管壊死など循環障害を伴う場合に認められ,その経時的変動をチェックすることは重要である.
 ⅳ)凝固系検査:緊急手術に必要とされるが,それ以外に播種性血管内凝固症候群(DIC),肝予備能の評価にも重要である.
 ⅴ)尿検査:沈渣に赤血球を認める場合は,尿路系結石や尿路系外傷を疑う.また,尿アミラーゼ値の上昇は急性膵炎の存在を示唆する.急性ポルフィリン血症では,尿中のポルフォビリノーゲンの増加がみられる.女性では,妊娠反応検査も必要に応じて行わなければならない.
4)画像診断:
近年の画像診断装置の進歩により,急性腹症診療における画像診断法の用い方,重みづけは変わりつつある.
 a)腹部超音波検査:簡便かつ非侵襲的であり,ベットサイドで腹部触診とほぼ同時に行われる.特に有用なのは右上腹部痛を呈する患者に対してであり,急性胆囊炎や胆管拡張などを迅速に診断できる.その他,小腸の拡張と液体貯留からイレウスの診断も容易であり,腸重積や急性虫垂炎,卵巣囊腫,大動脈瘤,上腸間膜動脈血栓症などさまざまな疾患を診断可能である.さらに,腹水穿刺を超音波ガイド下で安全に行い,その性状を確認することで腹腔内出血,腹膜炎,消化管穿孔などの鑑別を行うことができる.
 b)CT(computed tomography):腹部超音波で十分な診断を得ることができない場合には,次にCT検査を行う.近年進歩した多列検出器CT(multi detector-row CT:MDCT)装置により,空間分解能や解像度が上がり,急性腹症診断への有用性は最も高い.たとえば,腹腔内の遊離ガスの検出は腹部単純X線撮影より感度が高い.また,腸管の炎症の場合には壁肥厚や周囲脂肪織の炎症所見,炎症性滲出液,周囲膿瘍などを明瞭に判別でき,穿孔部分についても同定される場合がある.胆道や尿路などの石灰化結石も明瞭に描出される.さらに,造影CTを行うことで,血管病変や膵臓などの実質臓器の虚血所見を診断できる.
 c)単純X線検査:従来急性腹症の画像診断の中心的検査であったが,CT検査と比較し腹腔内遊離ガスや腸閉塞を示唆するニボー所見など検出感度が低く,かつ立位や側臥位など体位変換が必要である.無論,患者の全身状態を評価する目的の胸部X線撮影などは必要である.また,すぐにCT検査を行えない場合には積極的に行われるべき検査である.
 d)血管造影検査:腸間膜動脈血栓症の診断と治療には必須である.また,肝癌破裂などによる腹腔内出血時の血管塞栓術による止血なども可能である.
 e)消化管内視鏡検査:上部消化管内視鏡検査は吐・下血を伴う腹痛の患者の診断と治療,胃・十二指腸穿孔疑い症例の診断のために行われる.大腸内視鏡は大腸イレウスの診断と経肛門的減圧管挿入目的やS状結腸軸捻転症に対する整復術のために積極的に行われる.
治療
 急性腹症診療の要点は,直ちに何らかの処置を行う必要がある患者,待機的に処置を行う患者,保存的治療を行う患者を的確に判断し,初期治療とモニタリングを行いながら緊急手術やドレナージ術,IVR(interventional radiology)治療などを選択し行うことである(表3-2-6).
 全身状態が悪い場合,特にショック状態の患者の場合にはまず初期治療を行い,それと並行して診察・検査を行う.初期治療は呼吸・循環管理とモニタリングである.具体的には必要に応じて酸素投与や場合によってはレスピレーター管理,静脈ラインを確保し細胞外液を中心とした輸液を行うが,必要に応じて昇圧剤の投与も行う.中心静脈圧測定が必要な場合などは中心静脈カテーテルを留置する.また,尿路カテーテルを留置し正確な尿量を測定する.意識レベル,血圧,脈拍,血液酸素飽和度,尿量,体温などのモニタリングを行う.細菌性腹膜炎などの感染症が疑われる場合は広域スペクトラムの抗菌薬を投与する.鎮痛薬は,その投与により腹部所見がマスクされるため,診断が下されるまで使用しないことが従来推奨されてきた.しかし,最近鎮痛薬の投与によっても腹部所見が影響を受けないという結果が報告されており,むしろ積極的に除痛を推奨する意見がある.
 各種検査を行っても,診断や手術適応の判断がつかない場合がある.そのような場合は,繰り返し問診,診察,検査およびその評価を行い,慎重に経過観察しながら診療を継続する.[廣田衛久・下瀬川 徹]
■文献
Dang C, Aguilera P, et al: Acute abdominal pain: Four classifications can guide assessment and management. Geriatrics, 57: 30-42, 2002.井廻道夫,福井次矢 編:最新内科学大系3 内科総論3 主要症候−症候から診断へ−,pp73-81,中山書店,東京,1996.
Stoker J, van Randen A, et al: Imaging patients with acute abdominal pain. Radiology, 253: 31-46, 2009.

腹痛(症候学)

【⇨3-2-4)】[兵頭一之介]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「腹痛」の意味・わかりやすい解説

腹痛 (ふくつう)
abdominal pain
coelialgia

腹痛は腹部の病気の最も多くにみられる症状であり,患者にとっていちばんの苦痛でもある。腹痛の起り方,痛みの内容,持続の時間などから,だいたいの病気を判断することができる。腹痛は,その起り方と性質から3種類に分けられている。第1は,胃,腸,胆囊,膵臓などの内臓から発する内臓痛性腹痛であり,おもに腹の中心線上に痛みの部位があり,さしこむようなきりきりした痛み(疝痛)で周期的に起こり,手で押さえたり腹を前に曲げたりすると楽になることがある。胃,十二指腸,膵臓の場合は上腹部,小腸はへその周囲,大腸は下腹部に痛みがあることが多い。腹痛の強いときは悪心嘔吐を伴うことがある。第2は,腹膜,腸間膜から発生する体性痛性腹痛といわれるもので,腹痛の部位は限局的で,〈ナイフで刺す〉〈石うすですり砕く〉ような鋭い痛みで持続的に痛むものである。手で押さえたり体を動かすと逆に痛みは強くなることが多い。腹膜炎が代表的な病気であり,緊急手術を必要とすることが多い。第3は,放散痛といわれる腹痛である。胆石症の場合に右肩に痛みを感じたり,尿管結石では尿道や足に痛みが走ることなどがそれである。これらの3種類の腹痛が単独で,あるときは複合して腹痛となることが多く,痛みの内容を詳しく知ることが病気の診断の早道である。

医学的には急性腹症といい,上記の第2で述べた体性痛性の病気がこのうちに入る。穿孔(せんこう)性腹膜炎,腸閉塞,急性膵臓炎など緊急手術が必要な状態であることが多い。普通の食中毒や急性胃腸炎などの痛みとちがって,少しくらいの痛止めの注射(鎮痙剤)によっても痛みはおさまらず,あるいはいったんおさまった痛みがまたすぐ起こってくるものであって,自覚的にも病気の重大さに気づくことが多い。ことに胃腸の穿孔や急性膵臓炎などでは死の恐怖感があり,不安感,絶望感を伴うことがあり,痛止めよりも鎮痛・鎮静剤が効果的であることが多い。急性の腹痛を起こす病気には次のようなものがある。

胆囊内に結石が生じるもので,胆囊壁には炎症(胆囊炎)を伴っていることが多い。腹痛はいろいろの程度があるが,上腹部やや右寄りの部位(右季肋部)に圧痛があり持続的で,七転八倒の痛みと表現されている。右の背部から右肩あるいは右腕に痛みが放散する場合は,まず胆囊に関係のあるものと考えてよい。胆囊炎が強くなると,腹膜に炎症が達しその部位を手で圧迫すると痛みが増強し,腹壁の筋肉が緊張し板状の硬さになる。発熱も加わり血液の白血球も増加しているような場合は,早期に外科的手術治療をしないと危険な場合がある。
胆石

油っこい食べ物を大量にとったりした直後に胆石症と同じような腹痛が起こり,程度は強く,場合により腸管の麻痺をも合併する。痛みは上腹部から臍部にかけて持続的にみられ,左背部から肩にかけて放散することが多い。
膵炎

腹膜炎のうちで最も多いもので,胃潰瘍,十二指腸潰瘍の穿孔によって生じるもので潰瘍部が破れて腹腔内に胃内容や腸内容がもれて広範囲に腹膜炎を起こすものである。それまで潰瘍を有している人に多くみられるが,まったく潰瘍を自覚しなかった人にも突然発病することがある。突発的に起こる激しい痛みで体を動かすといっそう増強し,顔面蒼白,冷汗で血圧も低下し,いわゆるショック状態になる。腹壁は板状の硬さをもって緊張する。腹膜炎を起こした場合は,腹壁の緊張と同時に,胃内容があればもちろんであるが胃が空であっても,次から次へと嘔吐が起こり,また腸管が麻痺するために便もガスも出なくなり腹はしだいにふくらんでくる。全身状態は急速に悪化し,一見容易ならぬ病気であることがわかる。交通事故などによる内臓破裂による腹膜炎もある。いずれにしても,腹膜炎発症後1~2時間のうちに手術をしないと生命にかかわることがあるので,早期の診断と治療が重要である。
腹膜炎

激しい腹痛を伴う。腸の一部が圧迫されたり,ねじれたりして,内容物が通過不能となった状態で,腸閉塞,俗に腸捻転ともいう。圧迫やねじれによって腸管へ行く血管がしめつけられ血行が障害され血液不足となると,その部位の腸管は壊死に陥り腐敗する。このような腸閉塞を絞扼(こうやく)性イレウスといい,血行障害を伴わない単純性イレウスと区別している。腹痛は生後1~2年までの小児にみられる腸重積症やヘルニア嵌頓(かんとん)などでも起こり,短時間の間に腸は壊死に陥る。ヘルニア嵌頓はいくらか経過がよいが,幼児などで原因不明の腹痛ではまずこれを考えなければならない。絞扼性イレウスと同じように腸が壊死するものに〈腸間膜動脈血栓症〉がある。これは,老人で動脈硬化の高度な場合や,心臓弁膜症などを有する場合に突然の腹痛で発症するもので,腸間膜動脈に血栓がつまり血行障害を起こし結果的には腸の壊死につながるものである。この場合,老人であることと比較的腹痛が鈍痛であることから診断が遅れ,ショック状態で死亡することもある。単純性イレウスは,腸の血行障害がないものの腸がつまり内容の通過が障害されることであるから,放置すると,絞扼性イレウスほど急激ではないにしても,結局は同じように致命的になることが多い。イレウスのときの腹痛は,やはり疝痛が主であり,腸の収縮によって増強する強い痛みである。絞扼性イレウスになると腹膜炎と同様なショック症状を伴ってくる。老人におけるイレウスは比較的症状が軽いことが多いから手遅れにならないようにしなければならない。
イレウス

俗にいう盲腸炎である。これは下腹部の腹痛のなかでも多いものである。初めのうちは上腹部とくに胃のあたりからへそのあたりに痛みがあり,時間の経過とともに右下腹部に痛みが限局してくるもので,痛みの性質も疝痛から持続痛に変わってくる。この部分を手で圧迫すると痛みが激しくなり,軽度の発熱を伴ってくるが,39℃以上の高熱を伴うことはまれである。また下痢になることはまれで,かえって便秘に傾くことが多い。
虫垂炎

卵巣囊腫の捻転は,突然に出現する下腹部痛で始まり,実際には虫垂炎とよく似た症状であるから,女性の場合,虫垂炎が疑われるときは必ず考慮しておかねばならない。一方,子宮外妊娠の破裂は,突発する下腹部の激痛とともにショック症状,貧血症状が著しく,性器出血などがある。だいたいそれまでに妊娠の徴候がある場合が多く,したがって無月経である。虫垂炎の場合は外科的手術が必要となるが,卵巣囊腫の捻転や子宮外妊娠の破裂の場合は婦人科での処置および手術が必要となる。
子宮外妊娠

急性腹症といわれる緊急手術などを必要とするものを除いた,おなかの病気の多くにみられる症状としての腹痛がすべてこのなかに入る。痛みが軽いかあるいは自覚しない場合が多い。しかし痛みとしての自覚が少ないために重大な病気に気づかず見のがされ,気がついたときには末期的な状態の場合も多い。

中年以降に多いものであるが,30歳,20歳代にも起こることを知っておかねばならない。癌の初期は痛くないといわれているが,これは痛みとは無関係であるという意味で,癌の早期発見には痛みは関係ないことをいい表したものである。したがって癌の診断は自覚症状をまたず定期的な検診が必要である。

穿孔を起こした場合は前述したように強い腹痛があるが,そうでないときは,いわゆる空腹時痛や食後痛といわれる疝痛が断続的に上腹部とくに〈みぞおち〉にみられる。空腹時痛は十二指腸潰瘍のときにみられることが主で,夜間痛ともいわれており,食事をとると軽減することを特徴としている。胃潰瘍は食後痛といわれているが空腹時痛もみられることがある。

風邪薬や腰痛などの痛止めの薬などを安易に服用した後に,上腹部を中心に起こってくる痛みは急性胃炎による場合が多い。俗にいう〈食中毒〉は急性胃腸炎で,原因となるような疑わしい食物を食べたとか,家族内にも同様な症状が出ることなどから,それと推定できる。この場合,痛みは腹部中心線上の疝痛であることが多いが,下痢や嘔吐によって痛みが軽くなることが多い。
胃炎

腹痛として自覚するけれどおなかの病気でないものがあることも知っておかねばならない。心筋梗塞(こうそく),急性心膜炎,大動脈瘤破裂などの心臓の病気や,肺炎,胸膜炎,食道破裂などの肺や胸郭の病気が腹痛で発見されることがある。これらはそれぞれ胸痛や動悸,呼吸困難などの心臓の症状や肺の症状を合わせもっていることが多いので,早めに専門的な診察を受けることが何よりも肝要である。
執筆者:

小児の診察では最もしばしばみられる症状の一つであるが,乳児期や幼児期初期では評価が困難であることもある。大人のそれと同様に,腹痛は腹部臓器だけでなく,それ以外の臓器疾患からも起こるし,また腹痛の原因疾患が,器質的疾患か機能的疾患か,あるいは内科的治療によって治癒する疾患か外科的治療が必要かなどを鑑別しなければならない。これらの鑑別にあたっては,年齢,性別,症状の経過(急性か再発性か),疼痛の性状(発生の時期,様式,部位,性質,持続時間,放散の有無など)および腹痛以外の症状(発熱,呼吸器症状,嘔吐,下痢,泌尿器系の症状)があるかどうかなどが参考になる。

 小児の腹痛の主要原因となるものには,次のようなものがある。まず腹腔内に原因があるものとして,(1)食事過誤,虫垂炎,腸重積,ヘルニア嵌頓,腸閉塞,下痢,便秘,寄生虫,赤痢などの消化管疾患,(2)尿路感染症や結石などの尿路疾患,(3)肝炎や胆石などの肝臓,胆囊疾患,(4)脾腫,(5)膵炎,(6)卵巣,子宮疾患,(7)腹膜炎,(8)腸間膜疾患などがあり,腹腔外のものとしては,(1)横隔胸膜炎などの肺の疾患,(2)リウマチ熱や心囊炎などの心臓疾患,(3)脊髄腫瘍などの中枢神経系の疾患,(4)白血病などの血液の疾患,(5)代謝性疾患などがある。これらを年齢別にみると,乳児期早期では乳児疝痛,急性乳児下痢症,絞扼性イレウスなどがある。乳児期後半になると,とくに腸重積症に注意しなければならない。幼児学童期では虫垂炎と尿路感染症が腹痛の原因となることが多い。思春期の腹痛では,炎症性腸疾患や潰瘍性疾患,さらに婦人科的疾患も考慮に入れる必要がある。学童期の小児の約10%に反復性腹痛がみられるが,器質的原因を有するものはこのうちの10%以下である。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「腹痛」の意味・わかりやすい解説

腹痛
ふくつう
abdominal pain

腹部に発する痛みで、腹部の病変の存在を告げるきわめて一般的な症状であるが、ときには腹部以外の胸部や脊髄(せきずい)などの病変によっておこることもある。通常、腹痛は内臓痛と体性痛が基本となっており、これに関連痛(放散痛)が加わる。内臓痛とは内臓器官そのものからおこるもので、漠然とした痛みであり、部位感は明確でない。原因としては管腔(かんくう)性器官(胃、腸、胆道、尿管、膀胱(ぼうこう)など)の伸展、けいれん、拡張などがあげられる。体性痛とは壁側腹膜、腸間膜、横隔膜の辺縁部からおこる鋭い限局性の痛みで、原因としては壁側腹膜などに対する機械的・化学的刺激があげられる。また関連痛には、内臓皮膚反射や腹膜皮膚反射などがあり、内臓痛の放散で、肩から背部など一定の皮膚領域に知覚過敏や痛覚過敏のみられるものであり、痛みの激しいことを示す。腹部以外の疾患による腹痛も、関連痛の一つとみられる。

 腹痛の治療には、まず原因疾患の診断がもっとも重要である。そのためには腹痛の部位や性状、随伴症状を調べる必要がある。部位では自発痛と圧痛との関係を調べ、性状については仙痛と持続痛に分けて調べる。仙痛は内臓痛が強くなって関連痛が加わった状態で、管腔性器官の平滑筋がけいれんしておこり、間欠的に消長する場合が多い。持続痛はおもに実質器官(肝臓や膵(すい)臓など)にみられる痛みで、激しいものは体性痛に属し、管腔性器官の穿通(せんつう)や穿孔にもみられる。また、随伴症状としては悪心(おしん)や嘔吐(おうと)のほか、下痢、便秘、食欲不振、吐血、黄疸(おうだん)、排尿障害などがある。以下、部位別に述べる。(1)心窩(しんか)部痛 いわゆる上腹部痛で、消化性潰瘍(かいよう)(胃・十二指腸潰瘍)をはじめ、虫垂炎の初期、胆嚢(たんのう)疾患、膵疾患のほか、胃炎や胃下垂症などでもみられる。炎症が壁側腹膜に達したり癒着や穿通がみられると、関連痛や体性痛が加わるとともに、痛みの局在部位が移動してくる。(2)右季肋(きろく)部痛 いわゆる右上腹部痛で、肝・胆嚢・胆管疾患が主体をなし、放散痛を伴う胆石症をはじめ、軽度の鈍痛ないし圧迫感を訴える肝癌(がん)、肝炎、肝硬変、肝膿瘍(のうよう)などが含まれる。(3)左季肋部痛 いわゆる左上腹部痛で、一般に機能異常による場合が多く、空気嚥下(えんげ)症、食道裂孔ヘルニア、結腸脾彎曲(ひわんきょく)部のガス貯留などに起因するほか、膵体や膵尾、脾臓、横行結腸や結腸脾彎曲部の病変でもみられる。また、肩や上腕へ放散する関連痛を伴う場合は、心疾患や胸部疾患によることがある。(4)臍(さい)部痛 いわゆる臍(へそ)の周囲の痛みで、腸炎や回虫症など小腸の機能的・器質的疾患のほか、虫垂炎の初期にもみられる。(5)中央下腹部痛 横行結腸の一部および下行結腸の内圧亢進(こうしん)によっておこるが、骨盤内臓器疾患、性器疾患、膀胱・尿路疾患でもみられる。(6)右下腹部痛 いわゆる回盲部痛で、虫垂および回腸末端・盲腸疾患が主体となるが、右腎(じん)疾患や骨盤内の炎症、あるいは腹部神経痛による場合もある。急性虫垂炎が代表的で、ほかに潰瘍性大腸炎、女性性器疾患(卵管炎、子宮内膜炎、卵巣出血など)があり、女性性器疾患では左下腹部や中央下腹部にも痛みを訴える。(7)左下腹部痛 直腸やS状結腸の器質的疾患をはじめ、過敏性大腸症候群や左尿路系疾患、女性性器疾患などでもみられる。(8)全腹部痛 腹部全体が痛むもので、重篤な疾患によるものがあるので注意する。すなわち、急激な腹痛を主訴とし、開腹術を必要とするかどうかを速やかに決定しなければならない疾患群を総称して急性腹症という。

 また、腹痛と食事との関係をみると、十二指腸潰瘍や幽門部付近の胃潰瘍では一般に空腹時におこり、食事をとったりアルカリ剤の投与で寛解する。食後ただちに痛む場合は胆嚢疾患や胃・十二指腸の機能異常の場合が多く、胆道仙痛は食後3~5時間でおこることが多い。

 なお、小児の腹痛は成人と異なり、〔1〕腹部以外の疾患でおこることが多い、〔2〕急性腹症あるいは重篤な疾患の前駆症状としてみられるものが多い、〔3〕機能的ないし心因性の腹痛が多い、〔4〕乳児では他覚的症状から診断しなければならない、などの特徴がある。

[細田四郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

食の医学館 「腹痛」の解説

ふくつう【腹痛】

《どんな病気か?》


〈おなかをあたためて安静に。半日ほどは絶食を〉
 腹痛は、食べすぎや冷え、緊張や便秘によって起こるものから、重いものでは、急性胃腸炎や虫垂炎(ちゅうすいえん)、食中毒、胃(い)・十二指腸潰瘍(じゅうにしちょうかいよう)などが原因で起こるものまでさまざまです。
 乳幼児は、症状を言葉でうまく表現できないので、よく観察し、発熱や嘔吐(おうと)、下血(げけつ)をともなう場合は、早急に医師の診察を受けましょう。
 日常よくある軽い腹痛では、おなかをあたためること、そして半日程度の絶食と安静が回復へのかぎとなります。腹痛がおさまっても、胃腸がもとどおりに回復するまでは、おかゆやうどん、すりおろしたリンゴなど、消化吸収のよいものを少量ずつ与えるようにしてください。
 反対に、冷たい飲みものや生野菜はおなかを冷やしてしまいます。食物繊維を多く含む食品も消化が悪く、腸を刺激するので避けなければなりません。

《関連する食品》


〈下痢をともなう腹痛にはアリシンが有効〉
○栄養成分としての働きから
 食べすぎによる腹痛には、消化吸収を助けるアミラーゼを含んだ食品が有効。アミラーゼはダイコン、カブ、ヤマノイモなどに含まれます。
 ニンニクのにおい成分であるアリシンも殺菌作用や体をあたためる効果があり、下痢(げり)をともなう腹痛に有効です。おかゆをつくる際に、細かく刻んだニンニクを少量入れて炊(た)くというのもよい方法です。下痢を早く止めるには、お茶に含まれているカテキンが効きます。水分補給をかねて飲むようにしましょう。
〈ストレス性の腹痛にはビタミンB1が有効〉
 ストレスや緊張でよくおなかが痛くなる子どもは、ふだんからビタミンB1をとっておくことです。ビタミンB1には精神を安定させ、胃腸を丈夫にする働きがあり、豚肉、レバー、ウナギ、ニンニク、ネギ、ヤマノイモに多く含まれています。
〈体をあたため腹痛をやわらげるカブ〉
○漢方的な働きから
 漢方では、センブリの苦味成分が胃痛、腹痛、神経性の下痢に効果があるといわれています。
 乾燥させた全葉にお湯を注ぎ、3分ほどおいてお茶として飲ませます。ただ、センブリはにがいので、子どもには、薬効の似たウイキョウや丁香(ちょうこう)のスープのほうがいいでしょう。
 またカブは、漢方では体をあたため腹痛をやわらげる薬効があるとされています。

出典 小学館食の医学館について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「腹痛」の意味・わかりやすい解説

腹痛
ふくつう
abdominal pain

腹部の痛み。原因によって,(1) 内臓自体に起因する痛み,(2) 腹膜刺激による痛み,(3) 内臓の異常,病変が皮膚感覚に反映するものに分けられるが,混合型が多い。頻度が高いものとしては,胃,腸,胆嚢などの平滑筋のけいれんによるもの,臓器破裂や胃,腸の穿孔による持続的激痛で嘔吐を伴いやすいもの,胃炎,肝臓病,大腸炎,便秘,子宮の異常などによる持久性鈍痛などがある。虫垂炎の腹痛は著名で,多くは発熱,嘔吐,胃部の激痛から右下腹部の片側痛で発症する。また,狭心症や尿路結石,子宮外妊娠など消化器系以外の疾患による腹痛もあるので注意が必要である。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「腹痛」の意味・わかりやすい解説

腹痛【ふくつう】

腹部臓器に原因する疼痛(とうつう)が多い。臓器と疼痛部位の大略の関係は,胃・十二指腸疾患はみぞおちに,肝・胆嚢疾患は右肋骨下部に,膵(すい)疾患は左肋骨下部に,小腸疾患は臍(へそ)を中心として腹部中央に,虫垂炎は右下腹部に,大腸炎は全腹部特に左下腹部に,膀胱(ぼうこう)・女性性器疾患は下腹部に現れることが多い。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

普及版 字通 「腹痛」の読み・字形・画数・意味

【腹痛】ふくつう

腹いた。

字通「腹」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

栄養・生化学辞典 「腹痛」の解説

腹痛

 腹部の痛み.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の腹痛の言及

【胃痙攣】より

…急性膵炎による痛みは,ときに最も激しいもので,胆石,長年のアルコールの過飲などが誘因となることがある。一方,胃痙攣の中には実際に胃の強い痙攣性収縮によって痛みが起こるものがあり,鉛中毒(鉛疝痛)やニコチン中毒等の腹痛がそれに当たる。原因のいかんを問わず鎮痛には抗コリン剤が用いられるが,より強い痛みにはモルヒネなどの麻薬も必要となる。…

【急性腹症】より

…もともとは学問的に厳密に定義された内容をもつものではなく,アメリカの外科医たちが,急性の腹部疾患で突然の急激な腹痛をもってはじまり,とにかく早急に手術的処置が必要な場合に用いてきた医学用語である。したがって,手術台上で開腹した後に診断が明らかになる場合もあった。…

※「腹痛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android