知恵蔵 「攻殻機動隊」の解説
攻殻機動隊
物語の舞台は21世紀で、人体を機械化する「マイクロマシニング」というテクノロジーが発達し、日本はその技術の最先端を担っている。脳神経に素子(デバイス)を接続する電脳化技術や、義手・義足にロボット技術を導入したサイボーグ技術が発展・普及し、人体が「電脳」によってインターネットにアクセスできる社会を背景とする。人間としての証は「ゴースト」と呼ばれる心や意識や精神のようなものとしてとらえられている。
物語の主人公は、首相直轄で内務省所属の防諜機関である、攻性公安警察組織「公安9課」(通称「攻殻機動隊」)の中心人物である草薙素子(くさなぎもとこ)。生身の人間、電脳化した人間、サイボーグ、アンドロイド、バイオロイドが共存する中で、治安を維持するために公安9課が犯罪組織とどう対峙(たいじ)するかを描いている。
02年、04年、06年に制作されたテレビアニメの「攻殻S.A.C.」シリーズは、原作の物語の骨格をベースにしつつ更に踏み込んで現実的な問題をストーリーに取り入れている。薬害や高齢化社会、憲法9条改正など、より具体的に現代の日本が直面する課題に迫っている。15年4月からはTVアニメシリーズ「攻殻機動隊ARISE」の放送が決定している。
劇場版アニメは1995年公開の「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」、2004年公開の「イノセンス」、08年公開の「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊2.0」までが押井守監督作品。「イノセンス」は第57回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で上映された。11年には神山健治監督がS.A.C.シリーズを3D化した「攻殻機動隊S.A.C. SOLID STATE SOCIETY 3D」が公開された。4作目となる「攻殻機動隊 新劇場版」は15年夏に公開予定で、主人公・草薙素子の出生の秘密や、攻殻機動隊の起源が明かされる。また1995年に制作された 押井監督作品は、96年に米国ビルボード誌のセルビデオチャートで1位を獲得するなど、ハリウッド映画にも影響を与えた。
また、スティーブン・スピルバーグ監督が実写映画権を獲得、3D実写版でリメイクされる予定だが、公開時期などは未定である。英国人のルパート・サンダースを監督に迎え、スカーレット・ヨハンソンが主演すると発表されている。
(若林朋子 ライター/2015年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報