朝日日本歴史人物事典 「武陽隠士」の解説
武陽隠士
江戸後期の武士。閲歴も不詳であるが,江戸在住の浪人ながら,比較的余裕のある生活をしていたと考えられ,家業は公然とは人にいえない名目金の取り立てや公事訴訟の相談など,実入りの多い仕事かと推定され,随筆『世事見聞録』(1816序,7巻8冊)の著者として知られる。本書は各巻を武士,百姓,町人などと身分別に分け,それぞれの階層が内包する矛盾や弊害などを詳しく記述しつつ,爛熟した化政時代の世態や人情,風俗を鋭く批判,攻撃し,単なる随筆に終わらないところに特徴がある。
(宇田敏彦)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報