…閻魔は冥府の王として仏教とともに日本に入り,恐ろしいものの代名詞とされたが,地蔵菩薩と習合して信仰対象にもなった。奈良時代には閻羅王と書かれ,まれに閻魔国とも書かれている(《日本霊異記》)。閻羅は閻魔羅闍(えんまらじや)Yama‐râjaの略で,閻魔王の意味である。…
…道教内部にあっても,仏教の影響を受け,また民間伝承も取りこんで,唐代にはすでに八地獄,二十四地獄,三十二地獄といった地獄の組織化がなされている。また唐末ごろには,道教・仏教や民間信仰をごちゃまぜにした地蔵十王の地獄が形成され,そこでは閻羅王も泰山府君も同等の地位で死者を取り調べる裁判官として登場する。 中国的な地獄の第1の特徴は,現世の裁判制度をそのまま反映し,地獄にも官僚制的な要素が多く付随することであろう。…
…したがって沙門の姿で表される。中国の偽経《預修十王生七経》では,罪人は死後に十人の王の役所を通過するとされ,日本の偽経《地蔵十王経》ではそのうちの閻羅(閻魔)王が地蔵の化身とされる。【定方 晟】
[日本における地蔵信仰]
正倉院写経文書によれば,日本にはすでに奈良時代に《十輪経》など地蔵経典は伝来していた。…
…死後の迷いの世界を幽冥とするのは仏教本来のものではなく,道教の冥府(めいふ)の信仰との習合によるものである。閻羅王(または閻魔王,閻魔)をはじめとする十王や多くの冥官(冥府の役人)によって亡者は罪を裁かれ,それ相応の苦しみに処せられると信じられるようになったのは,おそらく中国の唐末期,9世紀後半からであろう。冥途における閻羅王の断罪から亡者を救う地蔵菩薩の信仰や,年に1度,中元の季節に亡者がこの世の家族のもとへかえって供養をうけるという盂蘭盆(うらぼん)会,亡者を救うための施餓鬼(せがき)の法会,年回忌の法要・供養等は,すべて冥途における亡者の,苦しみから逃れたいという願いによるものである。…
※「閻羅王」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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