日本大百科全書(ニッポニカ) 「黒痘病」の意味・わかりやすい解説
黒痘病
こくとうびょう
ブドウおよびダイズの病気。ブドウ黒痘病はエルシノエ・アンペリナElsinoë ampelinaという糸状菌によっておこるブドウの重要な病気の一つである。葉、果実、巻きひげ、つるなどに発生する。葉の病斑(びょうはん)は初め黒色の小さい斑点であるが、のち拡大して穴があく。新芽や巻きひげでは黒くなって枯れる。果実、つるの病斑は中央部は灰白色でややくぼみ、周りは紫黒色で、ときにかさぶた状になることがある。病気にかかった果実はいつまでも堅く酸っぱい。ベノミル剤(「ベンレート」)、マンゼブ剤(「ジマンダイセン」)、ジチアノン剤(「デラン」)などを散布して防ぐ。
ダイズ黒痘病はエルシノエ・グリシネスElsinoë glycinesという糸状菌の寄生によっておこる。葉や莢(さや)の若い部分に褐色ないし黒褐色の盛り上がった病斑ができる。また新しい芽が侵されて枯れ、生育が止まる。実入りも悪く収量が少なくなる。1955年(昭和30)ごろ大発生したが、その後、抵抗性品種の栽培によって発生が少なくなった。
[梶原敏宏]