世界大百科事典(旧版)内のfanāの言及
【イスラム神秘主義】より
…やがてジクルの対象madhkūr,ジクルの主体dhākir,ジクルの行為dhikrという区分が消滅し,ジクルの対象である神が主体の心を完全に圧倒し包摂し尽くして,自己をまったく意識しない忘我の状態に入る。これがスーフィーの間でファナーfanā’(消滅)と呼ばれる神秘的合一体験である。それは,神そのものとの一種の触合いの体験である。…
【ジクル】より
…イスラムにおける人間の崇拝行為とは,神の賛美のことであるならば,ジクルが儀礼の主要な要素となるのは当然である。後にイスラム神秘主義において,それは一種の称名として,そのような言葉を常にあるいは集団で定期的に一定の所作を伴って繰返し口称し,それによって神を常に念じ,さらに精神の集中によって自己と神との二元的対立を超えた忘我の状態,すなわち神秘的合一体験(ファナーfanā’)に至る方法として実践されるようになる。同様なものとしてサマーsamā‘があるが,ファナーの追求のために歌や音楽を用いるなど逸脱的傾向が強い。…
※「fanā」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」