翻訳|jet engine
ガスタービンで発生させた動力を定常流動している作動流体の運動エネルギーの増加として取り出し,その際流体を加速する力の反力として直接に推力を発生する形式のエンジン。定常流動定圧燃焼ガスタービンの一種であるターボファンエンジン,ターボジェットエンジン,ラムジェットエンジンと,間欠流動定容燃焼ガスタービンの一種であるパルスジェットエンジンに分けられる。広義にはガスタービン系航空エンジンを総称してジェットエンジンということもあり,この場合にはガスタービンで発生した動力を,軸動力として取り出し,それによってプロペラを駆動して推力を発生するターボプロップエンジンや,ヘリコプターの揚力あるいは推力を発生するローター(回転翼)などを駆動するターボシャフトエンジンを含める。これらはすべて定常流動定圧燃焼ガスタービンに属する。ここでは広義のジェットエンジンについて述べる。なお,ロケットエンジンもその推進の原理は狭義のジェットエンジンと同じであるが,燃料の燃焼に必要な酸素を大気から取り入れる必要がない点で異なる。
→ロケット
航空エンジンは第2次世界大戦末期にターボジェットエンジンが一部で実用され始めるまでは,すべて今日の自動車用エンジンと同様のピストンエンジンであった。ピストンエンジンはその作動原理から,重量や大きさ当りの発生動力,1基当りの最大発生動力に限度があり,馬力当り重量0.5kgf/ps,1基最大出力4000ps程度である。さらに発生した軸動力でプロペラを駆動し推力を発生しなければならないが,プロペラのブレード先端部の対気速度は,航空機の飛行速度とブレード周速度とのベクトル和となるので,飛行速度が音速に達するかなり以前に音速となり,衝撃波が発生してプロペラ効率が非常に低下する。このようなピストンエンジン・プロペラ推進の特性から航空機の性能は制限を受け,飛行速度もマッハ約0.5が限度である。
ジェット推進そのものはかなり早くから知られていたが,それがガスタービンの応用としてのジェットエンジンに具体化されるのは1930年代以降のことである。ガスタービンについては20世紀初頭から本格的な研究,開発が行われており,構造が簡単で,原理的には単位出力当りの重量・容積を小さくできるという長所をもっていたが,耐熱材料の未発達のため,燃焼ガスのタービン入口温度が低く制限され,また流体力学の未発達のため圧縮機やタービンの効率も悪かったので成功せず,永くその性能はピストンエンジンに及ばなかった。しかし技術の進歩,とくにターボチャージャー(排気タービン駆動過給機)などの発達に伴い,内部流体力学や高比強度材料,耐熱材料などが進歩し,タービン入口温度を高くできるようになり,圧縮機やタービンの効率がよくなるとガスタービンの実用化が始まった。37年にはイギリスのF.ホイットルがターボジェットエンジンの地上試運転に成功,41年にはこのエンジンを搭載したグロスターE28/39が飛行に成功した。一方,ドイツではハインケル社によって1930年代後半からターボジェットエンジンの開発が進められ,イギリスよりも早く39年にジェット機の飛行が実現していた。そして第2次大戦末期,まだ鋼系の耐熱材料しかなく,タービン入口温度は今日に比べ低い700℃程度であったが,高高度飛行時には大気温度の低下により熱効率も流量当り発生動力もかなり高くなって(後述するが,ガスタービンの熱効率は,燃焼ガスのタービン入口での温度と圧縮機入口での空気の温度との比が大きいほどよくなる),高速時の推力と重量との比がよくなり,ピストンエンジン・プロペラ推進では実現不可能であったマッハ0.5の壁を破ることができた。ひとたびジェット機が実用され始めるとその進歩は速く,たちまち高亜音速飛行がふつうとなり,アフターバーナーの導入により遷音速飛行や超音速飛行が行えるようになった。この時点でピストンエンジンは航空原動機としての生命を終わり,その王座をガスタービン系エンジンに譲ることとなった。
→ガスタービン →超音速飛行
ガスタービンでは圧縮過程や膨張過程の効率が決まると,サイクルにおける最高の温度と最低の温度との比,すなわち(タービン入口温度)/(大気温度)に対して,熱効率や流量当り発生動力を最良にする最適圧力比が決まる。その最適圧力比はタービン入口温度が高くなり,(最高温度)/(最低温度)が増すとともに大きくなる。また航空用ガスタービンでは,圧縮過程は空気取入口における飛行機速度によるラム圧縮(機速で流入した空気の速度が下がる際に圧力が上昇して圧縮される現象)と圧縮機による機械的圧縮とからなるが,前者は飛行速度とともにその2乗に比例して急激に増し,超音速飛行時には非常に大きくなる。すなわち航空用ガスタービンの陸舶用ガスタービンと大きく異なるところは,高高度での大気温度の低下と高速飛行時のラム圧の増大とを利用できる点である。航空用であるから当然発生動力,または推力当りの重量や大きさの小さいこと,短時間始動停止や急加減速運転の可能なこと,きびしい環境の下での姿勢や速度,高度の急激な変化を伴う激しい機体の運動に対しても安全確実に運転ができること,信頼性が大きいこと,耐久性や整備性のよいことなどが要求される。
また,航空機の社会における重要性が増し,使用が増すとともに燃料消費量低減要求はますます強くなり,さらに空港周辺では排気中の有害成分や騒音などの公害が大きな問題となり,それらに対する対応も強く求められている。以上の多くの要求に応ずる過程で航空用ガスタービンはガスタービン技術をリードすることとなり,陸舶用の分野でも航空転用型ガスタービンが多く使われている。
さて性能向上のためには何よりもタービン入口温度の向上が必要である。耐熱材料やその製造加工法は非常に進歩し,今日ではコバルト系やニッケル系などの超耐熱合金の多結晶,一方向凝固,さらには単結晶の空冷タービン翼が用いられ,空気冷却法や耐熱耐食断熱セラミックコーティングの進歩などとあいまって,1350~1500℃のタービン入口温度が可能となった。圧縮機は容積流量の小さい場合遠心型が,容積流量の大きい場合軸流型が使われ,タービンはふつう軸流型であるが,ごく容積流量の小さい場合には内向き半径流型が使われる。また高軸流速度,遷音速翼列による高い段当り圧力比,翼端間隙(かんげき)制御などにより軽量化と高効率化が進んだ。
タービン入口温度が上述のように高くなると,それに対応するガスタービンの最適圧力比も30~40と高くなる。高圧力比高温ガスタービンでは圧縮機タービン系が1軸の場合には始動が困難となるので,圧縮機静翼を多数段可変節にしたり,低圧圧縮機を低圧タービンで,高圧圧縮機を高圧タービンでそれぞれ独立に駆動するような形式の多軸化を行ったり,それらを適当に併用したりする必要が生ずる。多軸化の場合,陸舶用と異なり,低圧軸の外側に同一中心線のまわりに回転する中空の高圧系の軸をおく方式(スプール形式)がとられ,前面面積を増さず軽量小型化がはかられる。
改善されたとはいえ,タービン入口温度は,圧縮された高温空気とジェット燃料との可燃混合気の燃焼温度よりは低く制限される。このため燃焼器は,一般ガスタービンと同様,燃焼室に入った圧縮空気を内筒に入る燃焼用とその外側を流れる冷却用とに分け,燃焼によって生じた高温燃焼ガスを外側の冷却用空気と適当に混合して所要のタービン入口温度とする,いわゆる複室燃焼室方式が用いられる。点火は始動時のみ火花点火で行う。航空用ジェットエンジンに用いられる燃焼器の場合,広範囲かつ急激に変化する環境や急激な加減速の下で,確実に燃焼効率よく圧力損失少なく燃焼でき,さらに前面面積が小さく軽量小型であることがとくに要求される。ふつうは圧縮機とタービン間の動力伝達軸の周囲などの環状空間に設けられ,形式には,数本の筒状燃焼室よりなるキャン型,環状燃焼室内に数本の筒状内筒を設けたキャンニュラー型,環状燃焼室内に環状内筒を設けたアニュラー型があり,今日ではアニュラー型が多い。高出力時に黒煙が見えたこともあったが,現在では目に見えるような煙は排出されず,低出力時の炭化水素,一酸化炭素,高出力時の窒素酸化物の排出が公害問題となっており,排出ガス規制が強化され,それに対応して二段燃焼,二重アニュラーなど,内筒の改良が進められている。なお,推力を増強させるためのアフターバーナーは,燃焼室の後ろにノズルがあるだけで,タービンのような加熱温度の制限を受けるものがないので内筒はない。
ジェットエンジンは,始動,停止,急加減速,外部環境の急変などに対し,圧縮機サージングやフレームアウト(失火)などを起こすことなく,安全確実に出力レバー一つで運転できなければならない。このため,所要のエンジン各部の状況を計測し,それらを用い最適の燃料流量制御のみならず,圧縮機静翼可変節など可変部の制御を行う制御装置が必要で,現在では機械的な方式に代わって電子制御方式が採用されるようになってきている。
取入口より吸入した空気を圧縮機で圧縮したのち,燃焼室に導き,これに燃料を加えて燃焼させ,得られた高温高圧の燃焼ガスを,圧縮機駆動用のタービンを通したのち,ジェットノズルからジェットとして噴出させる形式のジェットエンジン(図)。
ジェット機の総合効率,すなわち燃料の燃焼により生ずるエネルギーのうち推進に有効に利用されたエネルギーの割合は,エンジン熱効率と推進効率との積となる。推進効率は,ジェットの噴出速度をVj,飛行速度をVとすると,2/(1+Vj/V)で表される。ターボジェットエンジンの場合,Vjが大きいため超音速飛行での推進効率はよいが,高亜音速飛行時にはVに比べVjが過大となって推進効率が低下するという短所がある。
ターボジェットエンジンのもつ上述のような短所を改善するため,噴出するジェットの速度を低くしたものがターボファンエンジンである。圧縮機駆動用タービンを出た燃焼ガスを,さらに別のタービンに導いてエネルギーの一部を軸動力にかえ,その分だけジェットの噴出速度を減らすとともに,得られた軸動力で大口径大流量軸流圧縮機であるファンを駆動する。今日のターボファンエンジンのほとんどはフロントファンエンジンで,エンジン最前面にあるファンで圧縮された空気は,直接ファンノズルへバイパスされ噴出されるものと,主原動機であるコアエンジンの圧縮機,燃焼器,圧縮機駆動用タービン,ファン駆動用タービンを通りジェットノズルより噴出されるものとに分けられる。前者の流量と後者の流量との比をバイパス比という。ターボファンエンジンでは,Vjはファンノズルよりの空気噴出速度とジェットノズルよりの排気噴出速度との流量平均値となるので,バイパス比によって変わり,バイパス比が大きいほどVjは低下する。したがってタービン入口温度と飛行速度に応じて総合効率をよくする最適のバイパス比が決まる。今日では高亜音速ジェット機には高バイパス比ターボファンエンジンが,高亜音速と超音速とを両用する軍用ジェット機には低バイパス比ターボファンとアフターバーナーとの組合せが使われている。アフターバーナー付きターボファンエンジンには,ファン空気のみダクト燃焼器で加熱するものと,ファン空気,エンジン排気の両者とも再加熱するものとがある。ターボファンエンジンはターボジェットエンジンに比べればジェットの噴出速度も低く騒音は少ないが,空港周辺では騒音公害が大きな問題となり規制が強化されている。ターボジェットエンジンではジェットによるジェットノイズがもっとも大きい騒音源であるが,高バイパス比ターボファンエンジンではファンやタービンより発するファンノイズ(回転ノイズ)のほうが大きいので,動翼・静翼間の間隔を離すなどして騒音発生を減らすとともに,ファンの前後やタービン後などの流路の内・外周壁に,孔あきハニカムなどの共鳴型吸音板を張り騒音の放射を低減する。
超音速でマッハ数が大きくなると,取入口ラム圧縮のみでそのサイクル最高温度に対応する最適圧力比が得られる。これを利用して圧縮は取入口におけるラム圧縮のみで行い,圧縮機および圧縮機駆動用のタービンをなくしたジェットエンジンがラムジェットエンジンである。基本的には空気取入口,燃焼室,ジェットノズルのみで構成され,構造は簡単であるが,高い飛行マッハ数でないと圧縮圧力比が大きくならないので,低速では性能が悪い。また静止推力もないので,自力では離陸できず,超音速巡航速度までブースターロケットなど他の推進装置により加速しなければ実用できない。
空気取入口直後に,逆止弁をもった燃焼室を設け,その後方に,適当な長さのジェットパイプをつけた簡単な構造のジェットエンジン。前方取入口でラム圧縮され逆止弁を開いて燃焼室に入った空気は,噴霧されている燃料と混合し,適当な量の可燃混合気ができると定容的に燃焼する。その際逆止弁を閉じると高温燃焼ガスはジェットパイプを通じて後方に膨張噴出する。燃焼室内の圧力が下がると前方の逆止弁が再び開き空気が燃焼室に入る。ラムジェットエンジンと異なり静止推力があるが,振動と騒音が大きく,逆止弁の耐久性も短く,大きさ当りの推力や熱効率もそう大きくないので,今日ではほとんど用いられない。
いずれもガスタービンで発生した動力を軸動力として取り出すエンジンであり,重量当りの出力はピストンエンジンの2倍以上に達する。ターボプロップエンジンの場合,軸動力でプロペラを駆動して推力を得るとともに,一部の推力を排気ガスからも得ている。所要のプロペラ回転数まで減速する減速歯車が不可欠である。プロペラによる制約のため高亜音速飛行には使用できないが,飛行に必要な推力馬力は航空機の抵抗係数が一定なら速度の3乗に比例するので,滞空時間をとくに必要とするものには有利となる。さらに最近では,高比強度複合材や遷音速空気力学の進歩により,外径を小さくするためブレード枚数を多くし,翼弦長の大きい薄翼や後退翼型ブレード先端形状を用い,マッハ0.8くらいまでの高亜音速時では,現用ターボファンエンジンより推進効率をよくしうるプロップファンエンジンも開発,研究されている。
ターボシャフトエンジンはヘリコプターのトランスミッションを介してローターや尾部ローターなどを駆動するので,エンジン本体の出力軸減速歯車はないものもあり,あっても減速比は小さい。ターボプロップエンジン,ターボシャフトエンジンはエンジン本体部は同一のものもある。ガスジェネレーター(圧縮機,燃焼器,圧縮機駆動用タービン系)と,プロペラやローターを駆動する低圧出力タービン出力軸は別軸にするものが多い。ガスジェネレーターは多軸の場合はスプール形式にされるが,出力軸はスプール形式をとらず別軸で排気側より出力を取り出すこともある。
執筆者:八田 桂三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
機関内部に空気を取り入れて燃料と混合・燃焼させ、高温・高圧のガスをジェットとして後方に噴き出すことで、その反動によって推力を得るエンジン。一般に航空機に搭載されるが、飛行速度や用途に応じて動作原理の異なる複数の種類に分類される。ロケットとは異なり、外部から空気を取り入れて酸化剤として用いるため、空気のない宇宙空間では作動できない。
[佐藤哲也 2026年2月13日]
現代的なジェットエンジンの開発は、1930年代に始まった。1930年、イギリスのフランク・ホイットルがターボジェットエンジンの基本構想を考案し、特許を取得した。一方、ドイツではハンス・フォン・オハインHans von Ohain(1911―1998)がハインケル社のもとでエンジンを開発し、1939年に世界初のジェット機「ハインケルHe178」が初飛行した。第二次世界大戦末期には、ドイツの航空機メーカー、メッサーシュミット社が開発したジェット戦闘機「Me262」が実戦配備された。戦後、ジェットエンジンの技術は各国で急速に発展し、1949年にはイギリスで世界初のジェット旅客機「デ・ハビランドDH106 コメット」が初飛行した。1950~1960年代にはアフターバーナー(再燃器)付きエンジンやターボファンエンジン(後述)が登場し、燃費の向上や騒音の低減が進み、1980年代以降はさらなる燃費向上や環境性能の改善が進められている。
[佐藤哲也 2026年2月13日]
ジェットエンジンの基本構造は、前方から順に、空気取入口(吸気)、ファン・圧縮機(圧縮)、燃焼器(燃焼)、タービン(膨張)、ノズル(排気)となっており、これらが連続的に運転される。空気取入口は、エンジンに取り込まれた空気を減速し、コアエンジン(圧縮機、燃焼器、タービン)などが効率よく作動できる状態にする役割がある。音速以下では空気の流れが比較的安定しているため、亜音速機の空気取入口は比較的シンプルな構造となっている。一方、超音速機では、音速を超えた空気を効率よく亜音速まで減速させる必要があるため、空気取入口の内部には、空気を段階的に減速させるための衝撃波を意図的に発生させる流路構造が設けられている。また、飛行速度の変化に対応するため、形状可変の空気取入口や、余分な空気を逃がすバイパスドアが用いられることもある。ターボファンエンジンでは大型のファンが配置され、取り込まれた空気のうち一部をコアエンジンに送り、残りをコアエンジン外側にバイパスさせて後方へ排出する構造となっている。圧縮機は、複数の回転翼(ローター)と静止翼(ステーター)から構成され、ローターで空気に仕事を与えて加速し、ステーターで整流しながら速度エネルギーを圧力に変換し、段階的に圧力を高める。燃焼器は、軽量で燃焼効率の高い環状型(アニュラ型)がおもに採用されているが、複数の筒状燃焼器を並べた缶型や、缶を環状に配置した環状缶型もあり、用途や機体サイズに応じて使い分けられる。内部には保炎器や冷却・希釈空気用の孔(あな)が設けられ、温度制御と燃焼安定性を実現する。タービンは圧縮機と同様にローターとステーターをあわせた段(ステージ)から構成され、燃焼ガスのエネルギーを効率よく機械的回転エネルギーに変換する。このエネルギーで、ファンと圧縮機を駆動し、残りのエネルギーを推進力とする。タービンはきわめて高温のガスにさらされるため、耐熱合金で冷却孔(こう)付き翼などが用いられる。ノズルは流れを加速するために、下流側にいくにつれ断面積が小さくなる先細ノズルが使用されるが、軍用機などでは細くなったあとに広がった先細末広ノズル(ラバールノズルともいう)を用いて超音速ジェットをつくる。一部の軍用機では、タービン後流に再度燃料を噴射して燃焼させるアフターバーナーを装備することで、短時間で大きな推力を得る。ジェットエンジンにはこれらの主要要素に加えて、燃料供給系、潤滑系、発電装置、始動器、冷却系などの補機類が付属しており、エンジン全体の運転や安全、機能の維持に不可欠な役割を果たす。これらの作動は、現代ではFADEC(ファデック)(全電子式エンジン制御装置)によって統合的に制御されている。
[佐藤哲也 2026年2月13日]
ジェットエンジンは、燃料を燃焼させて発生した高温・高圧ガスを後方に噴出し、その反動で推力を得る推進機関である。この用語には「狭義」と「広義」があり、狭義では、ガスタービン式かつ連続燃焼型で、燃焼ガスのジェット噴射によって直接推力を得るエンジンをさす。これにはターボジェットエンジンやターボファンエンジンが該当する。広義には、空気を吸入して燃料と混合・燃焼し、噴射によって推力を得るすべての空気吸い込み式推進機関が含まれ、これにはターボプロップエンジン、ターボシャフトエンジン、ラムジェットエンジン、パルスジェットエンジンなども含まれる。
①ターボジェットエンジンturbojet engine
ジェットエンジンの基本形態であり、圧縮機、燃焼器、タービン、ノズルから構成される。エンジンで得られた高温・高圧ガスを100パーセント、ジェットのエネルギーとして後方に噴射し、その反動で推進力を得る。構造が比較的単純で、とくに超音速域で効率が高いため、1950~1960年代の戦闘機や初期のジェット旅客機で用いられた。現在は燃費や騒音の低減に優れたターボファンエンジンが主流だが、ミサイルや一部の超音速実験機ではいまなお使用されている。さらに、極超音速飛行への応用を目ざし、吸入空気を冷却し圧縮効率を高める「予冷ターボジェットエンジンpre-cooled turbojet engine」の研究開発も進められている。
②ターボファンエンジンturbofan engine
ターボジェットエンジンをコアエンジンとし、その前方に大型のファンを取り付けた構造をもつ。燃焼ガスによる推力に加えて、ファンによって加速された空気の運動エネルギーがおもな推力源となっている。ファンを通過する空気のうちコアエンジンを通らず外側を流れる空気の量とコアエンジンに送られる量の比をバイパス比といい、この値が大きいほど燃費と静粛性に優れる。近年の民間旅客機用エンジンでは、バイパス比は10以上に達しており、なかには15に達する超高バイパス比エンジンの開発も進んでいる。一方、戦闘機などには高速性に優れた低バイパス比のターボファンエンジンが用いられる。近年では、タービンとファンの間に減速ギヤを入れてそれぞれを最適な回転数で運転するギヤードターボファンなども実用化されている。
③ターボプロップエンジンturboprop engine
ターボジェットエンジンにプロペラを組み合わせた構造をもち、タービンのエネルギーを減速装置を介してプロペラの回転力にかえ、主推進力とする。従来型のターボプロップは燃費に優れる一方で、巡航速度が比較的低速(時速600~700キロメートル)である。将来の超高効率推進技術として、オープンローター(open rotor)型ターボプロップの研究開発も進められている。これは、ターボファンのようにナセル(外殻)で覆われたファンではなく、外部に露出した大径の反転回転プロペラを用いることで、ターボファンに匹敵する巡航速度と、ターボプロップ並みの燃費性能の両立を目ざすもので、次世代の中長距離旅客機向けエンジンとして期待されている。
④ターボシャフトエンジンturboshaft engine
構造的にはターボプロップエンジンと類似しているが、推力を得るのではなく、回転軸からの出力を取り出すことを目的としている。エンジンの後方にあるフリータービンが燃焼ガスのエネルギーを受けて回転し、その動力を回転軸を通じて外部装置に伝達する。おもな用途はヘリコプターのメインローターの駆動であるが、VTOL(ブイトール)(垂直離着陸)機への適用例もある。
⑤ラムジェット/スクラムジェットエンジンramjet/scramjet engine
ターボエンジンとは異なり、圧縮機による機械的圧縮を行わず、高速で吸入した空気を空気取入口内部でせき止めて圧縮する(ラム圧縮)。圧縮された空気は燃料と混合されて燃焼し、高温・高圧の燃焼ガスがノズルから噴射されることで推進力を得る点は、ターボジェットエンジンと同様である。回転部をもたないため構造は簡素だが、静止状態では吸気・圧縮ができず、通常はマッハ0.5~2程度の飛行速度が必要とされる。ラムジェットエンジンでは、燃焼器に入る空気を亜音速まで減速して燃焼を行うが、より高速(マッハ5以上)での飛行では減速時の損失が大きくなるため、燃焼器内部で超音速状態のまま燃焼を行うスクラムジェットエンジンが使用される。これらのエンジンは、宇宙輸送機や極超音速航空機などへの応用が期待されている。
⑥パルスジェットエンジンpulsejet engine
前述のエンジンは連続作動方式であるのに対し、パルスジェットエンジンは間欠的な燃焼によって推力を発生させる。構造は単純で、吸気弁、燃焼器、排気ノズルからなり、吸気・燃焼・排気のサイクルを高頻度で繰り返すことにより、脈動的に推力を生み出す。旧来のパルスジェットエンジンは騒音が大きく、燃費も悪いという欠点があり、実用範囲は限られていた。近年では、より高効率・高推力を目ざす「パルスデトネーションエンジン(PDE)」の研究が進んでいる。PDEは、爆轟波(ばくごうは)(デトネーション波)を利用して瞬間的に高温・高圧の燃焼を行うことで、より高い熱効率を実現し、将来の超音速・極超音速飛行への応用が期待されている。
[佐藤哲也 2026年2月13日]
ジェットエンジンの燃料は、高エネルギー密度、低凍結点、安定性に優れる石油由来のケロシン系(民間機用のJet A-1や軍用機用のJP-8など)が主流である。近年は脱炭素化の要請から、廃油や植物由来のSAF(サフ)(Sustainable Aviation Fuel。持続可能な航空燃料)、水素などの導入も進められており、既存エンジンとの適合性や安定的な供給体制の確保が鍵(かぎ)となっている。
[佐藤哲也 2026年2月13日]
民間機用ジェットエンジンは、燃費の向上、騒音の低減、NOx(窒素酸化物)排出の抑制を目的として、さまざまな技術革新が進められてきた。燃費の向上においては、ファン翼形状の最適化、材料技術や冷却技術の進展によって圧縮機の圧力比とタービン入口温度を高め、エンジンの熱効率を改善している。さらに、バイパス比の増加によって推進効率が向上し、燃費の改善に大きく貢献している。騒音の低減においては、バイパス比の増加に加え、排気ノズルにシェブロン形状(鋸歯(きょし)形状)を導入することでジェット騒音の低減が図られている。NOx排出の抑制においては、リーンバーン(希薄燃焼)などの燃焼技術の導入が進められている。一方、軍用機用ジェットエンジンでは、燃費よりも高推力・高加速性能や機動性が重視されており、アフターバーナーの搭載やタービン入口温度のさらなる昇温化、高応答性が求められる。また、近年はステルス性や高高度・超音速域での運用に対応するための設計技術も進展している。
[佐藤哲也 2026年2月13日]
ジェットエンジンは今後も環境性能と燃費性能の両立を目ざして進化を続けていくと期待される。民間航空分野では、ターボファンエンジンのさらなる高バイパス比化やギヤードターボファンによる効率改善に加え、電動モーターと組み合わせたハイブリッド推進も注目されている。さらにSAFや水素燃焼に対応した燃焼器設計や材料技術の進化が期待される。一方、将来の極超音速輸送や宇宙輸送に向けて、スクラムジェットエンジンやパルスデトネーションエンジンなどの研究が進んでいく。その他、オープンローターの使用や機体に小型推進ユニットを複数配置した分散推進といった、機体との統合を前提とした新しい推進コンセプトも検討されており、ジェットエンジンは用途や速度域に応じて、今後も多様な進化を遂げていくと考えられる。
[佐藤哲也 2026年2月13日]
『内藤健編著『最新・未来のエンジン――自動車・航空宇宙から究極リアクターまで』(2019・朝倉書店)』
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…構造の簡単さよりも燃料経済を重視する大型のガスタービンでは,熱交換器のほかに,圧縮機とタービンを高圧側と低圧側に二分割して,それぞれの間に,空気の温度を下げて,高圧圧縮機の駆動動力を減少させるための中間冷却器およびガスの温度を上げて,低圧タービンの出力を増加させるための再熱器を加えて熱効率の向上を図っている。 以上のような軸出力として動力を取り出すもの以外にも,ガスタービンには,タービンは圧縮機のみを駆動し,ガスのもっている残りのエネルギーはジェットノズルで膨張させて高速のジェットとして後方に噴出し,その反動で推力を得る,いわゆるジェットエンジンもある。また,原動機そのものとしてではなく,内燃機関と組み合わせ,内燃機関の排気ガスでタービンを回し,その動力で圧縮機を駆動して機関給気の加圧用に使用する過給用の排気タービンや,単にガス発生器として使用し,そのガスでタービンを回して動力を取り出すフリーピストンガスタービンもガスタービンの一種である。…
…燃料の燃焼熱を利用する内燃式熱機関である。航空エンジンには,ピストンエンジンやターボプロップエンジンのように動力を軸動力の形でとり出す軸出力型エンジンと,ターボジェットエンジンやターボファンエンジンのように前方から吸い込んだ空気を後方へ高速の噴流として噴出し,その際の運動エネルギーの増加の形で動力をとり出すジェット出力型エンジン(いわゆるジェットエンジン)がある。後者は前方より吸い込んだ空気を航空機の速度より速い速度で後方に噴出し,その際の加速力の反力としてエンジン自身で直接推力を発生するが,前者では軸動力でプロペラを回し,プロペラを通る空気流を後方に加速して推力を得ている。…
…航空機からの騒音はエンジン騒音と機体騒音から成る。ジェットエンジンの場合,エンジン騒音は勢いよく後方に噴出される高温高圧の多量のガスがまわりの空気をかき乱すために生ずるジェット音と,エンジン内のファンや圧縮機などが高速で回転するための機械音などから成り,一般にプロペラエンジンの場合より騒音が著しく高い。機体騒音は主として離着陸のときに出したフラップや脚が空気をかき乱して発生するもので,現在のところ,ジェットエンジン騒音ほど問題になってはいない。…
… 抵抗の少ない,高速でも安定して飛行する機体形態とともに,超音速機にとってたいせつなのは,超音速で十分な推力を発生する推進システムである。とくに空気を吸入するジェットエンジンの場合には,空気取入口と排気ノズルの形状が重要になる。空気取入口は,機外を流れる超音速の気流から必要量だけの空気を取り入れて,それを亜音速に減速してエンジンに供給しなければならない。…
…人間が乗って空気の中を飛ぶ乗物を総称して航空機といい,その中で,ジェットエンジン,プロペラなどの推進装置の力で前進し,その際,固定翼(回転したり,羽ばたいたりすることのない翼)に生ずる動的な上向きの空気力,すなわち揚力によって自分の全重量を支えて飛ぶものが飛行機である。航空機には,飛行機のほか,推進装置のないグライダー,回転翼の揚力を利用するヘリコプター,空気より軽いガスをいれた袋に働く空気の静浮力を利用する気球,飛行船などいろいろの種類がある。…
…イギリスの航空技術者。ジェットエンジンの発明者として知られているが,ジェットエンジンそのものはドイツでも同じころに開発されている。イギリス空軍士官学校に在籍中にその着想を得,卒業後も研究を続けて1930年ジェットエンジンの特許をとった。…
※「ジェットエンジン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
乞巧奠〈公事十二ケ月絵巻〉〘 名詞 〙 陰暦七月七日の行事。乞巧は技工、芸能の上達を願う祭。もと中国の行事であるが、日本でも奈良時代以来、宮中の節会(せちえ)としてとり入れられ、在来の棚機津女(たなば...