翻訳|jet engine
ガスタービンで発生させた動力を定常流動している作動流体の運動エネルギーの増加として取り出し,その際流体を加速する力の反力として直接に推力を発生する形式のエンジン。定常流動定圧燃焼ガスタービンの一種であるターボファンエンジン,ターボジェットエンジン,ラムジェットエンジンと,間欠流動定容燃焼ガスタービンの一種であるパルスジェットエンジンに分けられる。広義にはガスタービン系航空エンジンを総称してジェットエンジンということもあり,この場合にはガスタービンで発生した動力を,軸動力として取り出し,それによってプロペラを駆動して推力を発生するターボプロップエンジンや,ヘリコプターの揚力あるいは推力を発生するローター(回転翼)などを駆動するターボシャフトエンジンを含める。これらはすべて定常流動定圧燃焼ガスタービンに属する。ここでは広義のジェットエンジンについて述べる。なお,ロケットエンジンもその推進の原理は狭義のジェットエンジンと同じであるが,燃料の燃焼に必要な酸素を大気から取り入れる必要がない点で異なる。
→ロケット
航空エンジンは第2次世界大戦末期にターボジェットエンジンが一部で実用され始めるまでは,すべて今日の自動車用エンジンと同様のピストンエンジンであった。ピストンエンジンはその作動原理から,重量や大きさ当りの発生動力,1基当りの最大発生動力に限度があり,馬力当り重量0.5kgf/ps,1基最大出力4000ps程度である。さらに発生した軸動力でプロペラを駆動し推力を発生しなければならないが,プロペラのブレード先端部の対気速度は,航空機の飛行速度とブレード周速度とのベクトル和となるので,飛行速度が音速に達するかなり以前に音速となり,衝撃波が発生してプロペラ効率が非常に低下する。このようなピストンエンジン・プロペラ推進の特性から航空機の性能は制限を受け,飛行速度もマッハ約0.5が限度である。
ジェット推進そのものはかなり早くから知られていたが,それがガスタービンの応用としてのジェットエンジンに具体化されるのは1930年代以降のことである。ガスタービンについては20世紀初頭から本格的な研究,開発が行われており,構造が簡単で,原理的には単位出力当りの重量・容積を小さくできるという長所をもっていたが,耐熱材料の未発達のため,燃焼ガスのタービン入口温度が低く制限され,また流体力学の未発達のため圧縮機やタービンの効率も悪かったので成功せず,永くその性能はピストンエンジンに及ばなかった。しかし技術の進歩,とくにターボチャージャー(排気タービン駆動過給機)などの発達に伴い,内部流体力学や高比強度材料,耐熱材料などが進歩し,タービン入口温度を高くできるようになり,圧縮機やタービンの効率がよくなるとガスタービンの実用化が始まった。37年にはイギリスのF.ホイットルがターボジェットエンジンの地上試運転に成功,41年にはこのエンジンを搭載したグロスターE28/39が飛行に成功した。一方,ドイツではハインケル社によって1930年代後半からターボジェットエンジンの開発が進められ,イギリスよりも早く39年にジェット機の飛行が実現していた。そして第2次大戦末期,まだ鋼系の耐熱材料しかなく,タービン入口温度は今日に比べ低い700℃程度であったが,高高度飛行時には大気温度の低下により熱効率も流量当り発生動力もかなり高くなって(後述するが,ガスタービンの熱効率は,燃焼ガスのタービン入口での温度と圧縮機入口での空気の温度との比が大きいほどよくなる),高速時の推力と重量との比がよくなり,ピストンエンジン・プロペラ推進では実現不可能であったマッハ0.5の壁を破ることができた。ひとたびジェット機が実用され始めるとその進歩は速く,たちまち高亜音速飛行がふつうとなり,アフターバーナーの導入により遷音速飛行や超音速飛行が行えるようになった。この時点でピストンエンジンは航空原動機としての生命を終わり,その王座をガスタービン系エンジンに譲ることとなった。
→ガスタービン →超音速飛行
ガスタービンでは圧縮過程や膨張過程の効率が決まると,サイクルにおける最高の温度と最低の温度との比,すなわち(タービン入口温度)/(大気温度)に対して,熱効率や流量当り発生動力を最良にする最適圧力比が決まる。その最適圧力比はタービン入口温度が高くなり,(最高温度)/(最低温度)が増すとともに大きくなる。また航空用ガスタービンでは,圧縮過程は空気取入口における飛行機速度によるラム圧縮(機速で流入した空気の速度が下がる際に圧力が上昇して圧縮される現象)と圧縮機による機械的圧縮とからなるが,前者は飛行速度とともにその2乗に比例して急激に増し,超音速飛行時には非常に大きくなる。すなわち航空用ガスタービンの陸舶用ガスタービンと大きく異なるところは,高高度での大気温度の低下と高速飛行時のラム圧の増大とを利用できる点である。航空用であるから当然発生動力,または推力当りの重量や大きさの小さいこと,短時間始動停止や急加減速運転の可能なこと,きびしい環境の下での姿勢や速度,高度の急激な変化を伴う激しい機体の運動に対しても安全確実に運転ができること,信頼性が大きいこと,耐久性や整備性のよいことなどが要求される。
また,航空機の社会における重要性が増し,使用が増すとともに燃料消費量低減要求はますます強くなり,さらに空港周辺では排気中の有害成分や騒音などの公害が大きな問題となり,それらに対する対応も強く求められている。以上の多くの要求に応ずる過程で航空用ガスタービンはガスタービン技術をリードすることとなり,陸舶用の分野でも航空転用型ガスタービンが多く使われている。
さて性能向上のためには何よりもタービン入口温度の向上が必要である。耐熱材料やその製造加工法は非常に進歩し,今日ではコバルト系やニッケル系などの超耐熱合金の多結晶,一方向凝固,さらには単結晶の空冷タービン翼が用いられ,空気冷却法や耐熱耐食断熱セラミックコーティングの進歩などとあいまって,1350~1500℃のタービン入口温度が可能となった。圧縮機は容積流量の小さい場合遠心型が,容積流量の大きい場合軸流型が使われ,タービンはふつう軸流型であるが,ごく容積流量の小さい場合には内向き半径流型が使われる。また高軸流速度,遷音速翼列による高い段当り圧力比,翼端間隙(かんげき)制御などにより軽量化と高効率化が進んだ。
タービン入口温度が上述のように高くなると,それに対応するガスタービンの最適圧力比も30~40と高くなる。高圧力比高温ガスタービンでは圧縮機タービン系が1軸の場合には始動が困難となるので,圧縮機静翼を多数段可変節にしたり,低圧圧縮機を低圧タービンで,高圧圧縮機を高圧タービンでそれぞれ独立に駆動するような形式の多軸化を行ったり,それらを適当に併用したりする必要が生ずる。多軸化の場合,陸舶用と異なり,低圧軸の外側に同一中心線のまわりに回転する中空の高圧系の軸をおく方式(スプール形式)がとられ,前面面積を増さず軽量小型化がはかられる。
改善されたとはいえ,タービン入口温度は,圧縮された高温空気とジェット燃料との可燃混合気の燃焼温度よりは低く制限される。このため燃焼器は,一般ガスタービンと同様,燃焼室に入った圧縮空気を内筒に入る燃焼用とその外側を流れる冷却用とに分け,燃焼によって生じた高温燃焼ガスを外側の冷却用空気と適当に混合して所要のタービン入口温度とする,いわゆる複室燃焼室方式が用いられる。点火は始動時のみ火花点火で行う。航空用ジェットエンジンに用いられる燃焼器の場合,広範囲かつ急激に変化する環境や急激な加減速の下で,確実に燃焼効率よく圧力損失少なく燃焼でき,さらに前面面積が小さく軽量小型であることがとくに要求される。ふつうは圧縮機とタービン間の動力伝達軸の周囲などの環状空間に設けられ,形式には,数本の筒状燃焼室よりなるキャン型,環状燃焼室内に数本の筒状内筒を設けたキャンニュラー型,環状燃焼室内に環状内筒を設けたアニュラー型があり,今日ではアニュラー型が多い。高出力時に黒煙が見えたこともあったが,現在では目に見えるような煙は排出されず,低出力時の炭化水素,一酸化炭素,高出力時の窒素酸化物の排出が公害問題となっており,排出ガス規制が強化され,それに対応して二段燃焼,二重アニュラーなど,内筒の改良が進められている。なお,推力を増強させるためのアフターバーナーは,燃焼室の後ろにノズルがあるだけで,タービンのような加熱温度の制限を受けるものがないので内筒はない。
ジェットエンジンは,始動,停止,急加減速,外部環境の急変などに対し,圧縮機サージングやフレームアウト(失火)などを起こすことなく,安全確実に出力レバー一つで運転できなければならない。このため,所要のエンジン各部の状況を計測し,それらを用い最適の燃料流量制御のみならず,圧縮機静翼可変節など可変部の制御を行う制御装置が必要で,現在では機械的な方式に代わって電子制御方式が採用されるようになってきている。
取入口より吸入した空気を圧縮機で圧縮したのち,燃焼室に導き,これに燃料を加えて燃焼させ,得られた高温高圧の燃焼ガスを,圧縮機駆動用のタービンを通したのち,ジェットノズルからジェットとして噴出させる形式のジェットエンジン(図)。
ジェット機の総合効率,すなわち燃料の燃焼により生ずるエネルギーのうち推進に有効に利用されたエネルギーの割合は,エンジン熱効率と推進効率との積となる。推進効率は,ジェットの噴出速度をVj,飛行速度をVとすると,2/(1+Vj/V)で表される。ターボジェットエンジンの場合,Vjが大きいため超音速飛行での推進効率はよいが,高亜音速飛行時にはVに比べVjが過大となって推進効率が低下するという短所がある。
ターボジェットエンジンのもつ上述のような短所を改善するため,噴出するジェットの速度を低くしたものがターボファンエンジンである。圧縮機駆動用タービンを出た燃焼ガスを,さらに別のタービンに導いてエネルギーの一部を軸動力にかえ,その分だけジェットの噴出速度を減らすとともに,得られた軸動力で大口径大流量軸流圧縮機であるファンを駆動する。今日のターボファンエンジンのほとんどはフロントファンエンジンで,エンジン最前面にあるファンで圧縮された空気は,直接ファンノズルへバイパスされ噴出されるものと,主原動機であるコアエンジンの圧縮機,燃焼器,圧縮機駆動用タービン,ファン駆動用タービンを通りジェットノズルより噴出されるものとに分けられる。前者の流量と後者の流量との比をバイパス比という。ターボファンエンジンでは,Vjはファンノズルよりの空気噴出速度とジェットノズルよりの排気噴出速度との流量平均値となるので,バイパス比によって変わり,バイパス比が大きいほどVjは低下する。したがってタービン入口温度と飛行速度に応じて総合効率をよくする最適のバイパス比が決まる。今日では高亜音速ジェット機には高バイパス比ターボファンエンジンが,高亜音速と超音速とを両用する軍用ジェット機には低バイパス比ターボファンとアフターバーナーとの組合せが使われている。アフターバーナー付きターボファンエンジンには,ファン空気のみダクト燃焼器で加熱するものと,ファン空気,エンジン排気の両者とも再加熱するものとがある。ターボファンエンジンはターボジェットエンジンに比べればジェットの噴出速度も低く騒音は少ないが,空港周辺では騒音公害が大きな問題となり規制が強化されている。ターボジェットエンジンではジェットによるジェットノイズがもっとも大きい騒音源であるが,高バイパス比ターボファンエンジンではファンやタービンより発するファンノイズ(回転ノイズ)のほうが大きいので,動翼・静翼間の間隔を離すなどして騒音発生を減らすとともに,ファンの前後やタービン後などの流路の内・外周壁に,孔あきハニカムなどの共鳴型吸音板を張り騒音の放射を低減する。
超音速でマッハ数が大きくなると,取入口ラム圧縮のみでそのサイクル最高温度に対応する最適圧力比が得られる。これを利用して圧縮は取入口におけるラム圧縮のみで行い,圧縮機および圧縮機駆動用のタービンをなくしたジェットエンジンがラムジェットエンジンである。基本的には空気取入口,燃焼室,ジェットノズルのみで構成され,構造は簡単であるが,高い飛行マッハ数でないと圧縮圧力比が大きくならないので,低速では性能が悪い。また静止推力もないので,自力では離陸できず,超音速巡航速度までブースターロケットなど他の推進装置により加速しなければ実用できない。
空気取入口直後に,逆止弁をもった燃焼室を設け,その後方に,適当な長さのジェットパイプをつけた簡単な構造のジェットエンジン。前方取入口でラム圧縮され逆止弁を開いて燃焼室に入った空気は,噴霧されている燃料と混合し,適当な量の可燃混合気ができると定容的に燃焼する。その際逆止弁を閉じると高温燃焼ガスはジェットパイプを通じて後方に膨張噴出する。燃焼室内の圧力が下がると前方の逆止弁が再び開き空気が燃焼室に入る。ラムジェットエンジンと異なり静止推力があるが,振動と騒音が大きく,逆止弁の耐久性も短く,大きさ当りの推力や熱効率もそう大きくないので,今日ではほとんど用いられない。
いずれもガスタービンで発生した動力を軸動力として取り出すエンジンであり,重量当りの出力はピストンエンジンの2倍以上に達する。ターボプロップエンジンの場合,軸動力でプロペラを駆動して推力を得るとともに,一部の推力を排気ガスからも得ている。所要のプロペラ回転数まで減速する減速歯車が不可欠である。プロペラによる制約のため高亜音速飛行には使用できないが,飛行に必要な推力馬力は航空機の抵抗係数が一定なら速度の3乗に比例するので,滞空時間をとくに必要とするものには有利となる。さらに最近では,高比強度複合材や遷音速空気力学の進歩により,外径を小さくするためブレード枚数を多くし,翼弦長の大きい薄翼や後退翼型ブレード先端形状を用い,マッハ0.8くらいまでの高亜音速時では,現用ターボファンエンジンより推進効率をよくしうるプロップファンエンジンも開発,研究されている。
ターボシャフトエンジンはヘリコプターのトランスミッションを介してローターや尾部ローターなどを駆動するので,エンジン本体の出力軸減速歯車はないものもあり,あっても減速比は小さい。ターボプロップエンジン,ターボシャフトエンジンはエンジン本体部は同一のものもある。ガスジェネレーター(圧縮機,燃焼器,圧縮機駆動用タービン系)と,プロペラやローターを駆動する低圧出力タービン出力軸は別軸にするものが多い。ガスジェネレーターは多軸の場合はスプール形式にされるが,出力軸はスプール形式をとらず別軸で排気側より出力を取り出すこともある。
執筆者:八田 桂三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
機関内部で加圧・加熱された流体をジェット(噴流)としてノズルから噴出させ、その反動で推進力を得る機関。ロケットエンジン、イオンエンジンも広義のジェットエンジンに含まれるが、普通は空気を吸い込み燃料を燃焼させて高温ガスをつくる熱機関をいう。したがってジェットエンジンは大気圏内でしか使用できない。
[吉田正武]
現在のような空気を圧縮してその中で燃料を燃焼させるジェットエンジンは効率の高い圧縮機とタービンができてから実現し、ガスタービンの発達とともに実用になった。初めは戦闘機をより高速にする目的で1930年代からイギリス、ドイツなどで実用化の研究が始まり、イギリスのフランク・ホイットルは1937年に遠心型の圧縮機を用いたジェットエンジンを試作し、1941年には飛行に成功した。ドイツでも1939年には、ハンス・フォン・オハインHans von Ohain(1911―1998)が設計した遠心型圧縮機をもつジェットエンジンによる飛行に成功し、第二次世界大戦後のジェット機時代につながった。
[吉田正武]
空気取入口、圧縮機、燃焼器、タービン、ジェットノズル、アフターバーナー、燃料供給装置で構成される。空気取入口は空気の流速を遅くし、圧力を高めて圧縮機に導くところである。超音速で飛行する場合は、空気取入口の中央にコーン状の突起をつけるなどして、大きな衝撃波を2、3段に分けて効率、圧力を高めるくふうがなされている。圧縮機は軸方向に回転羽根車と静止羽根の組を多数並べた軸流型と、半径方向に空気を流す遠心型があり、吸入した空気をディーゼルエンジンと同程度まで圧縮するために多くの段階を経て圧縮する。超音速飛行の場合には、超音速流を急速に音速以下の流れにすれば圧力が上昇するので、圧縮機をもたないジェットエンジン(ラムジェットエンジンという)もある。燃焼器は普通は管形のものを8、9個程度用いる。ドーナツ状(環状)の燃焼室も使用される。燃料は燃焼室の上流(一次燃焼室)に噴射され燃焼する。その後、二次空気を入れ燃焼ガス温度を低くしてタービンに導く。タービンは圧縮機を駆動するためのもので、軸流型、遠心型の2種があり、圧縮機よりも段数は少ない。ラムジェットは圧縮機がないのでタービンもない。ジェットノズルは、ジェットの流速を飛行速度に最適なように制御する部分で、可変面積のノズルが多く使われる。ジェットエンジンではノズルを出たジェット噴流がその高度の大気圧に等しいのが理想的で、ジェットが大気圧になるように面積を調節する。また、離陸距離の短縮や機動性向上のために噴出方向を変えられる可変ノズルも使用されている。アフターバーナーは、タービン通過後の燃焼ガスに燃料を加えてふたたび高温にする装置で、推力を増加でき、大推力を短時間必要とするときに用いられる。燃料供給系はポンプと噴射ノズルからなるが、これは他の調節部分と連動し、最適なエンジン運転状態を保つように制御される。
[吉田正武]
ジェットエンジンは、構造および機能上から次の6種類に分類される。
(1)ターボジェットエンジンturbo-jet engine もっとも普通に使用されてきたエンジン。吸入した空気を圧縮機で圧縮し、燃焼室で燃料を噴射し燃焼させ、タービンを駆動したあと、ジェットとしてノズルから噴出する。アフターバーナーをもつものも多い。ジェットエンジンの主力であったが、大型飛行機用として燃料消費量の少ない大推力エンジンの要求が高まるとともに、中型、小型に限定されてきている。
(2)ターボプロップエンジンturbo-prop engine ターボジェットにさらにプロペラ駆動用のタービンをつけ、推力の大部分をプロペラで発生するエンジン。ジェットエンジンというよりも、ガスタービンの一種と考えられる。大出力往復動機関では重くなるので、大型、中型のプロペラ機に多く使用されている。
(3)ターボファンジェットエンジンturbo-fan-jet engine ターボジェットのおもに圧縮機の前に一組以上の羽根車と整流翼をもつダクテッドファンducted fanをつけ、吸入した空気の一部分をターボジェットに入れ、ターボジェット出口で残りの空気を混合するか、そのままターボジェットのノズルとは別に噴出するエンジン。ファン駆動のためタービンを通過したガス温度が低下し、ジェットノズル出口で大気温度に近くなって効率があがるほか、ファンにより大きな推力が得られるので全体の熱効率が高くなる。大推力、低燃料消費量の特性から、ジェットエンジンの主力となっている。これはターボファンエンジン、バイパスジェットともいわれる。
(4)ラムジェットエンジンram-jet engine 飛行速度が高速になると、空気取入口からの流路形状で流速を遅くするだけで圧力と温度が十分に上昇し、圧縮機がなくても燃料を燃焼させられる温度になる。ラムジェットはこの原理による。圧縮機もタービンも不要で超音速機に適したエンジンである。しかし低速ではエンジンとして働かないので、他のエンジンによって加速してもらう必要がある。このため内部にターボジェットをもつものがある。高速でのみ有用なエンジンなので、あまり使用されていない。
(5)パルスジェットエンジンpulse-jet engine 前端に自動弁をもち、エンジン内部の圧力が低くなると空気を吸入する。燃焼させるとジェットがノズルから噴出し、エンジン内の圧力が低くなる。外から空気が自動弁を通って吸入され、流速が遅くなって圧力、温度が上昇する。燃料を噴射するとさらに圧力が上昇して自動弁が閉じ、ジェットがノズルから噴出する。したがって間欠燃焼機関であるが構造が簡単で、兵器、模型に用いられた。しかし推力が小さいので、一般には用いられていない。
(6)リフトエンジンlift engine VTOL(ブイトール)機(垂直離着陸機)、STOL(エストール)機(短滑走離着陸機)用で、離陸時、一時的に垂直方向の推進力を得るためのジェットエンジン。重量に対する推力の比を大きくすることだけが特徴のターボジェットである。なお、主エンジンのノズルの向きを下方にも向けて垂直方向の推力を生む場合もある。
[吉田正武]
ジェットエンジンに用いられる燃料はオクタン価、セタン価はあまり問題ではなく、蒸発損失の少ないこと、発熱量の大きいことなどが主たる要求事項である。現在は灯油にガソリンを混合したJP‐4が標準的に用いられている。
[吉田正武]
ジェットエンジンは定期的に分解整備を行うので整備の容易なことが必要条件で、信頼性はこの定期整備でも確保される。このほかに、エンジンの重量当りの推力が大きいこと、前面面積当りの推力が大きいこと、燃料消費の少ないこと、推力制御の容易なことなどが要求され、とくに戦闘機などでは比推力を大きくするためにアフターバーナーを用いる。また、性能を左右するものに空気取入口があり、空気吸入の容易なように空気流速、圧力などを調整する重要な役割を担っている。最近の大型ジェットエンジンは、ファンだけを通す空気が燃焼器に入る空気の3倍程度のバイパス比をもつ大推力、低燃料消費量、大口径のターボファンジェットで、飛行機の胴体外に装着される場合には、前面面積の小ささの重要度は小さくなっている。一方、小型小推力のジェットエンジンも着実に開発され、1人乗りの小型機にも用いられるようになってきた。
[吉田正武]
構造的にはターボファンジェットが広い範囲で使用され、小型機にも使われるようになると思われる。またジェットエンジンはガスタービンと同様にタービン入口の燃焼ガス温度の高いほど熱効率がよくなるので、金属以外の耐熱性の高い材料が使用され、また圧縮機でも金属以外の軽量材料が実用化されるだろう。燃料としてJP‐4などの石油燃料以外に水素を燃料として使用することが予想されており、水素燃料の貯蔵、運搬方法が研究されている。
[吉田正武]
『富塚清著『内燃機関の歴史』新改訂版(1984・三栄書房)』▽『John Robert DayEngines ; The Search for Power(1980, The Hamlyn Publishing Group Ltd.)』
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…構造の簡単さよりも燃料経済を重視する大型のガスタービンでは,熱交換器のほかに,圧縮機とタービンを高圧側と低圧側に二分割して,それぞれの間に,空気の温度を下げて,高圧圧縮機の駆動動力を減少させるための中間冷却器およびガスの温度を上げて,低圧タービンの出力を増加させるための再熱器を加えて熱効率の向上を図っている。 以上のような軸出力として動力を取り出すもの以外にも,ガスタービンには,タービンは圧縮機のみを駆動し,ガスのもっている残りのエネルギーはジェットノズルで膨張させて高速のジェットとして後方に噴出し,その反動で推力を得る,いわゆるジェットエンジンもある。また,原動機そのものとしてではなく,内燃機関と組み合わせ,内燃機関の排気ガスでタービンを回し,その動力で圧縮機を駆動して機関給気の加圧用に使用する過給用の排気タービンや,単にガス発生器として使用し,そのガスでタービンを回して動力を取り出すフリーピストンガスタービンもガスタービンの一種である。…
…燃料の燃焼熱を利用する内燃式熱機関である。航空エンジンには,ピストンエンジンやターボプロップエンジンのように動力を軸動力の形でとり出す軸出力型エンジンと,ターボジェットエンジンやターボファンエンジンのように前方から吸い込んだ空気を後方へ高速の噴流として噴出し,その際の運動エネルギーの増加の形で動力をとり出すジェット出力型エンジン(いわゆるジェットエンジン)がある。後者は前方より吸い込んだ空気を航空機の速度より速い速度で後方に噴出し,その際の加速力の反力としてエンジン自身で直接推力を発生するが,前者では軸動力でプロペラを回し,プロペラを通る空気流を後方に加速して推力を得ている。…
…航空機からの騒音はエンジン騒音と機体騒音から成る。ジェットエンジンの場合,エンジン騒音は勢いよく後方に噴出される高温高圧の多量のガスがまわりの空気をかき乱すために生ずるジェット音と,エンジン内のファンや圧縮機などが高速で回転するための機械音などから成り,一般にプロペラエンジンの場合より騒音が著しく高い。機体騒音は主として離着陸のときに出したフラップや脚が空気をかき乱して発生するもので,現在のところ,ジェットエンジン騒音ほど問題になってはいない。…
… 抵抗の少ない,高速でも安定して飛行する機体形態とともに,超音速機にとってたいせつなのは,超音速で十分な推力を発生する推進システムである。とくに空気を吸入するジェットエンジンの場合には,空気取入口と排気ノズルの形状が重要になる。空気取入口は,機外を流れる超音速の気流から必要量だけの空気を取り入れて,それを亜音速に減速してエンジンに供給しなければならない。…
…人間が乗って空気の中を飛ぶ乗物を総称して航空機といい,その中で,ジェットエンジン,プロペラなどの推進装置の力で前進し,その際,固定翼(回転したり,羽ばたいたりすることのない翼)に生ずる動的な上向きの空気力,すなわち揚力によって自分の全重量を支えて飛ぶものが飛行機である。航空機には,飛行機のほか,推進装置のないグライダー,回転翼の揚力を利用するヘリコプター,空気より軽いガスをいれた袋に働く空気の静浮力を利用する気球,飛行船などいろいろの種類がある。…
…イギリスの航空技術者。ジェットエンジンの発明者として知られているが,ジェットエンジンそのものはドイツでも同じころに開発されている。イギリス空軍士官学校に在籍中にその着想を得,卒業後も研究を続けて1930年ジェットエンジンの特許をとった。…
※「ジェットエンジン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
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