世界大百科事典(旧版)内のHiraṇya-garbhaの言及
【インド神話】より
…《リグ・ベーダ》にはまた若干の創造神話が見られる。祈禱主神ブラフマナスパティ(ブリハスパティ)とかビシュバカルマン(毘首羯磨)を万物の創造者とする説や,創造神が黄金の胎児(ヒラニヤ・ガルバHiraṇya‐garbha)として太初の原水の中にはらまれて出現したとする説がある。また,神々が万有そのものである原人プルシャPuruṣaを犠牲獣として祭祀を実行し,もろもろの世界を形成したという,諸民族の間に見られる巨人解体神話と共通な説もある。…
【リグ・ベーダ】より
…このような雑然とした多神教の世界に飽き足らず,唯一絶対の最高神,宇宙創造の根本原理を探究しようとする傾向がしだいに強まり,《リグ・ベーダ》の最新層である第10巻には,唯一の絶対者からの宇宙創造を説く,いわゆる哲学的賛歌が数編認められる。黄金の胎児からの宇宙創造を説く〈ヒラニヤ・ガルバHiraṇya‐garbhaの歌〉(10巻121編),プルシャPuruṣa(原人)の身体各部分から万物が生成されたとする〈プルシャ・スークタPuruṣa‐sūkta〉(10巻90編)などがそれであるが,なかでも,中性的原理である〈かの唯一なるものtad ekam〉から全宇宙が展開したと語る〈ナーサディーヤ・スークタNāsadīya‐sūkta〉(10巻129編)は,《リグ・ベーダ》における絶対者の探究,いわゆる哲学的思索の最高潮を示している。このような《リグ・ベーダ》後期の傾向は,のちのウパニシャッドにおける梵我一如の思想をはじめ,インド思想の大勢を支配することとなった一元論的あるいは一神論的思潮の萌芽となった。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」