世界大百科事典(旧版)内のvanitasの言及
【アレゴリー】より
…また個々のタブローにしてもヤン・ブリューゲルの〈五感〉や〈四季〉のアレゴリー,ヨルダーンスの〈豊穣〉,ブーエの〈時に対する希望,愛,美の勝利〉といった地上的価値を賛美し,幸福な生活感情に支えられた寓意画が栄える。他面,プロテスタント国オランダでは,P.クラースの《頭蓋骨のある静物》(1630)に見られるように,卓上の時計,煙るランプ,頭蓋骨などによる〈死を記憶せよ〉の教訓,J.M.モレナールの《婦人の世界》の,召使に頭をとかさせる行為,頭蓋骨,シャボン玉などによる〈虚栄(ウァニタスvanitas)〉の戒めなど,中世にシリーズで描かれた罪源のテーマがいまや教訓画のための独立した主題となる。このほか,スペインのベラスケスの《織女たち》のように,壁にかけられた画中画的存在のタピスリーによって,技術に対する絵画芸術の勝利という主題の寓意性を暗喩する手法も愛好された。…
【死】より
…さらに14~15世紀を通じて,〈アルス・モリエンディ(往生術,死者の心得)〉が広まり,このテキストにつけられた版画には,死者の魂を奪い合う天使と悪魔や,天国および地獄の光景がリアルに描かれている。15~16世紀のドイツには,若い美女の化粧の最中に死が現れる,いわゆる〈ウァニタスvanitas(はかなさ)〉の図像が流行した。この中で最も特徴的な例として,高位にある人物の墓に,その故人の死体の腐食と崩壊のありさまをリアルに表現する〈トランジtransi〉の図像がある。…
【砂時計】より
…(2)骸骨姿の死者が生者を襲う〈死の勝利〉の図像で,〈死〉は大鎌ないし矢とともに,砂時計をもつ(ウィーリクス)。(3)17世紀オランダの静物画では,卓上の楽器,本,手さげかばん,そして〈メメント・モリ(死を記憶せよ)〉の象徴である頭蓋骨とともに,砂時計は画面全体の寓意的意味〈ウアニタスvanitas(虚しさ)〉を強調する道具となる。(4)時計は人間の生活を規則正しく導くという役割から,歯車時計の発明以前は,砂時計が〈節制〉の持物となった(A.ロレンツェッティ)。…
※「vanitas」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」