辺・方(読み)へ

精選版 日本国語大辞典 「辺・方」の意味・読み・例文・類語

へ【辺・方】

[1] 〘名〙 (時に濁音化して「べ」の形でも用いられる)
① あたり。ほとり。そば。
古事記(712)中・歌謡「をとめの 床の辨(ベ)に 我が置きし つるぎの太刀 その太刀はや」
海辺岸辺。海などの岸に近いあたりをさしていう。⇔
書紀(720)神代下・歌謡「沖つ藻は 陛(ヘ)には寄れども さ寝床も 与はぬかもよ 浜つ千鳥よ」
[2] 〘語素〙 (普通「え」と発音され、濁音化して「べ」ともなる) (名詞、または動詞の連体形に付く)
① そのあたり、その方向などの意を表わす。「片(かた)え」「後(しり)え」「行(ゆ)くえ」「海辺」「沖べ」など。
② その頃(ころ)の意を表わす。「春べ」「夕べ」「去(い)にしえ」など。
[補注](1)この「へ」は、上代特殊仮名遣では、甲類の仮名が使われている。これと非常によく似た意味・用法をもつ、乙類の「へ(上)」があるが、一応、別語と見るべきであろう。→「上(へ)」の補注。
(2)この「へ」は、格助詞「へ」の源にもなっている語。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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