デジタル大辞泉
「達」の意味・読み・例文・類語
たち【▽達】
[接尾]人を表す名詞や代名詞に付く。
1 複数であることを表す。「子供達」「僕達」
2 複数の意とともに尊敬の意をも表す。
「大舟にま梶しじ貫き此の我子を唐国へ遣るいはへ神―」〈万・四二四〇〉
[補説]上代では、神・天皇・高貴な人に限って用いられた。
[用法]たち・がた・ども・ら――いずれも人が複数であることを示す接尾辞。◇「たち」は「公達」のように元来、若干の敬意を伴う表現であったが、現在では普通に「ぼくたち」「私たち」のように自称に付けたり、「犬たち」「鳥たち」のように動物にも用いるようになった。◇近ごろ「道具たち」のように物に「たち」を付けることもみられる。◇「がた」は敬意を含んだ接尾辞で、「あなたがた」「先生がた」などと用いる。◇「ども」には見下す気持ちが含まれ、「がきども」「野郎ども」のように使う。また、自称の代名詞に付くと謙遜の意を示す。「私ども」「手前ども」◇「ら」は使われる範囲が広い。「彼ら」「子供ら」のように敬意を含まない場合、「お前ら」のように蔑視を表す場合、自称の代名詞に付いて謙遜の意を表す場合、「それら」「これら」のように指示代名詞に付いて物の複数を表す場合などがある。◇敬意の程度は「あなたがた→あなたたち→お前ら」の順に低くなる。
[類語]方・共・等・連・等・等等
だち【▽達】
《「友達」の略》「友達」の俗な言い方。「まぶだち」
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たち【達・等】
- 〘 接尾語 〙
- ① 人を表わす名詞・代名詞に付いて、複数を表わす。また、そのすべてのものを含む意も表わす。上代では、神・天皇・高貴な人に限られたが、時代が下がるにつれて範囲が拡大し、丁寧な表現として用いられるようになった。「ども」「ら」に比べて敬意が強い。
- [初出の実例]「大船にま楫(かぢ)しじ貫(ぬ)き此の吾子(あご)を韓国(からくに)へ遣(や)るいはへ神多智(タチ)」(出典:万葉集(8C後)一九・四二四〇)
- 「をとこたちの心なぐさめに漢詩(からうた)に」(出典:土左日記(935頃)承平五年一月二七日)
- ② 複数の意が薄れ、軽い敬意を表わす。
- [初出の実例]「をかしかりつる、人のさまかな。女御の御おとうとたちにこそは、あらめ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)花宴)
- ③ 敬意を失って、目下の者、一人称の代名詞、また擬人化して動物などにも用いる。
- [初出の実例]「おしらるやうにてうせんのせんとうたちもあすわひよりがありそうなと申ほどに」(出典:捷解新語(1676)五)
たっ‐し【達】
- 〘 名詞 〙 ( 動詞「達する」の連用形の名詞化。「達示」と当てることもある )
- ① 江戸幕府で、老中または諸役の上司から下司または支配の者に対して発した命令。
- [初出の実例]「鞠道法令飛鳥井家え達」(出典:徳川禁令考‐前集・第一・巻二・慶長一三年(1608)七月二一日)
- ② 官公庁から国民へ、あるいは上位者から下位の者への通知・指令。通達。
- [初出の実例]「看守は遮りて其筋より未だ何等の達(タッシ)なし」(出典:妾の半生涯(1904)〈福田英子〉七)
- ③ 明治一九年(一八八六)二月以前、行政官庁が、その官庁の内部または付属の諸官庁などに発した命令。訓令。
- [初出の実例]「明治二年四月二十八日 行政官達」(出典:行政官達‐明治二年(1869)四月二八日)
だち【達】
- 〘 名詞 〙
- ① 俗語で、「ともだち」を略した言い方。
- ② 共犯者・仲間をいう、てきや・盗人仲間の隠語。〔隠語輯覧(1915)〕
- [初出の実例]「若しダチ(仲間)になりたいと思ったら」(出典:わが新開地(1922)〈村島帰之〉六)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
普及版 字通
「達」の読み・字形・画数・意味
達
常用漢字 12画
(旧字)
13画
[字音] タツ
[字訓] とおる・およぶ
[説文解字]
[金文]
[字形] 形声
声符は(たつ)。〔説文〕二下に「行きて相ひはざるなり」とするのは、〔詩、風、子衿〕「挑(たう)たりたり」の句意をとるものであろうが、(達)は通達の意。は羊の子が脱然として生まれる形。〔詩、大雅、生民〕「先づ生まるることの如し」とはの意である。は(ちやく)に従って往来通達の意。すべて情意の通達することを達という。
[訓義]
1. とおる、つらぬく。
2. およぶ、いたる、とどく。
3. さとる、かなう。
4. すすむ、あまねくする、ゆきつく、とどける。
5. つね、おおやけ、不変。
6. おおきい、わがまま、のがれる。
[古辞書の訓]
〔名義抄〕 イタル・コホス・トホル・トホス・カナフ・ヤル・タツ・ミチ・ツカハス・ツブサニ・ナラス・ユク・カヨハス・サトル/洞 ―トトホレリ・―トトホリヒラケタリ
[声系]
〔説文〕に声として撻を収める。儀礼に反するようなときに、その背を撻(う)つことが行われた。長い鞭笞(べんち)を加える意であるが、もと擬声語であろう。
[熟語]
達意▶・達学▶・達官▶・達宦▶・達鑑▶・達観▶・達眼▶・達義▶・達教▶・達暁▶・達見▶・達賢▶・達言▶・達孝▶・達才▶・達材▶・達志▶・達士▶・達視▶・達辞▶・達識▶・達者▶・達曙▶・達心▶・達人▶・達生▶・達制▶・達成▶・達声▶・達政▶・達喪▶・達聡▶・達尊▶・達旦▶・達知▶・達治▶・達度▶・達道▶・達徳▶・達能▶・達筆▶・達明▶・達要▶・達理▶・達礼▶・達練▶・達老▶・達論▶・達摩▶
[下接語]
意達・英達・栄達・下達・豁達・宦達・窮達・暁達・賢達・顕達・高達・曠達・四達・識達・夙達・熟達・俊達・上達・進達・先達・薦達・送達・聡達・速達・調達・暢達・通達・伝達・到達・特達・任達・配達・博達・八達・発達・敏達・布達・聞達・放達・旁達・妙達・明達・利達・練達
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
達 (たっし)
江戸時代,上役から下役へ,また役所から管下の者へ発せられた指示・命令。達物(たつしもの)ともいう。達書(たつしがき)として書面で令達されたほか,口頭で申し渡す口達(くたつ)/(こうたつ)もあった。幕府の法令は通常触(ふれ)もしくは達の形式で公布されたが,触が比較的広い範囲に触れ知らせるものであったのに対し,達は関係役所または関係者にのみ伝える場合に用いられた。したがって一般的な法規よりも,一回限りの具体的処分や,部内の訓令・通達というべきものが多かった。諸役から発せられた達のうちでは,老中の達がもっとも重要であり,これは将軍の裁可を経たのち,書付(かきつけ)と呼ばれる書面にして名あて人へ交付された。老中が城中で直接手交する場合もあったが,大名あてであれば留守居(るすい)を老中宅へ召じて伝達することもあり,また幕府諸役あてであれば同朋頭(どうぼうがしら)を通じて渡すこともあった。明治以後も行政官庁が下級庁や職員に対してあてた訓令,通達の類を達と称した。太政官達,東京府達などその例である。
執筆者:加藤 英明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
達
たっし
江戸時代,幕府や藩からの通達・命令を告げ知らせること。また通知された法度類。触が広範囲に触れ出される法令なのに対して,特定の部局・関係者にかぎって出されるものをいう。しかし幕府が編集した「御触書集成」は触と達の区別をせず収録している。達を記した文書を達書といい,関係者に回達された。口頭で通達される場合もあり,これを口達(くたつ)・(こうたつ)といったが,実際は口頭伝達ののち,相手に書付が渡されることが多かった。明治政府は,法令や通達を発布主体と対象によって布告・布達・達にわけ,省庁・官吏に対する訓令の類を達としている。1886年(明治19)公文式が制定されて消滅。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
世界大百科事典(旧版)内の達の言及
【太政官布告】より
…法令形式の整備は,国政の中枢機構であるこの太政官制の形成・確立に照応して進められた。明治新政府が発する法令は,維新当初の御沙汰書の形式から布告,布達,達の形式へと移っていくが,版籍奉還,廃藩置県など一連の政治変革を経て統一国家が形成されるまでの過渡的段階においては,法令の形式・名称は一定していない。1871年(明治4)7月の太政官制の改革にともない,全国一般に布告する制度・条例に関する件は太政官より発令し,その他告諭のごときは主任の官省よりじかに布達するものとされたが,各官省による布告も並行して存在していた。…
【通達】より
…上級行政機関が下級行政機関に対して命令する一形式で,文書によってなされる場合をさす。かつては達,示達と呼ばれ,また行政機関の用いる用語としては通牒と呼ばれることもある。国家行政組織法は,大臣等行政機関の長が通達を発しうることを明らかにしているが(14条2項),必ずしもこれらの者にかぎらず,階統的行政組織の上級機関であれば通達を発する権限を有する。…
※「達」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」