日本大百科全書(ニッポニカ) 「サイムンドル」の意味・わかりやすい解説
サイムンドル
さいむんどる
Sæmundr Sigfússon inn fróði
(1056―1133)
アイスランドの歴史家。フランスに学び、帰国後オッディに学校を興す。アーリ・ソルギルソンに先だつ、この国最初の歴史家とされる。ハラルド美髪(びはつ)王(ハラルド1世Harald Ⅰ。?―931?、在位885?~931?)からマグヌス善王(マグヌス1世Magnus Ⅰ。1024―1047、ノルウェー王(在位1035~1047)、デンマーク王(在位1042~1047))までのノルウェー王の年代記をラテン語で書いたといわれるが、今日に伝わっていない。子のロプトルが、ノルウェーのマグヌス裸足(はだし)王(マグヌス2世。1073―1103、在位1093~1103)の娘と結婚したことが、年代記を書いた理由かと推定される。また、孫のヨウン・ロプトソンは、のちにノルウェー王朝史『ヘイムスクリングラ』を書いたスノッリ・スツルソンを養育している。サイムンドルがスノッリに与えた影響は大きく、アイスランドの学問の父とよばれるにふさわしい。
[谷口幸男 2022年5月20日]
『山室静著『アイスランド』(紀伊國屋新書)』