日本大百科全書(ニッポニカ) 「スナノミ」の意味・わかりやすい解説
スナノミ
すなのみ / 砂蚤
sand flea
chigoe
jigger
[学] Tunga penetrans
昆虫綱ノミ目(隠翅(いんし)目)スナノミ科に属する昆虫。アフリカ、マダガスカル島、南アメリカ大陸のおもに熱帯地域に分布し、ヒト、イヌ、ネコ、ブタ、その他の獣類に寄生して、ときに大害を与える。本種の原産地はアフリカの熱帯地域と思われるが、奴隷制により黒人とともに南アメリカ大陸へも侵入したものと考えられる。蛹(さなぎ)から羽化した直後のノミは体長1.5~2ミリメートルにすぎないが、寄主の皮下に食い入ると、寄主より吸血し、腹部第2、第3腹板の間膜が肥大していき体長8~10ミリメートルで、豆粒のように膨れ上がる。このように急激に腹部の膨張する現象をフィソガストリーphysogastry(膨腹性)またはネオソミーneosomyとよぶ。本種では雌雄ともにフィソガストリーがみられるが、ほかのスナノミ科のノミ、たとえば中国、日本に分布するネズミスナノミT. caecigenaなどでは雌だけにみられる。膨腹の結果は、ヒトの足裏、家畜類の足裏や腹部などに被害を与え、放置すると化膿(かのう)したりして家畜は不眠症などに陥る。
[阪口浩平]