のみ

精選版 日本国語大辞典 「のみ」の意味・読み・例文・類語

のみ

[1] 〘副助〙 体言・体言に準ずるもの・動詞連用形・副詞格助詞などに下接する。
① ある事物を取り立てて限定する。強調表現を伴う。…だけ。…ばかり。
※古事記(712)上「故、天つ神の御子の御寿は、木の花の阿摩比能微(ノミ)坐さむ」
② (①の限定の意味合いが薄れ、強調表現のために用いられたもの) ある事物や連用修飾語の意味を強調する。
万葉(8C後)五・八八六「世間(よのなか)は かく乃尾(ノミ)ならし 犬じもの 道に伏してや 命過ぎなむ」
※源氏(1001‐14頃)乙女「顔も持たげ給はで、ただ泣きにのみ泣き給」
[2] 〘終助〙 強く言い切る漢文訓読文で用いられる。
※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)一〇「我れ恩を報せむとして、故らに礼敬することを致さくのみとのたまふ」
[語誌](1)語源については、格助詞「の」に名詞「身」が付いたものとする説がある。
(2)(一)は上代から用いられていた副助詞で、文末に用いられる場合もあったが、それは「のみ」の下に助動詞「なり」などが想定でき、まだ終助詞とはいいがたい。
(3)格助詞と重なる場合、上代では格助詞に上接する例の方が、下接するものより多いが、中古以後はその関係が反対になる。
(4)(二)は、漢文における文末助辞「耳」が限定・決定・強調に用いられ、日本語の副助詞「のみ」の用法に近いため、訓読文において文末の「耳」字を「のみ」と必ず訓じるようになり、意味も「限定」という論理性が薄れ、「強く言い切る」という情意性を表わすようになった用法。この用法はク語法、特に「まくのみ」「らくのみ」の形で用いられることが多いため、この形で固定し、「群書治要康元二年点‐七」の「禽獣、此の声為ることを知るらく耳(ノミ)」のような、終止した文に下接すると思われる例まで現われる。ただし、このようなものは、近世の朱子新注学者によってその不合理が指摘され、「まく」「らく」が除かれて「活用語連体形+のみ」の形となり、近代の文語文へと受け継がれていく〔古典語現代語助詞助動詞詳説〕。
(5)中古以後は「ばかり」が限定を表わすようになり、「のみ」の領域は侵される。中世、近世の口語では「のみ」の用例は稀になるが、消滅することはなく、現代まで生き続けている。

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デジタル大辞泉 「のみ」の意味・読み・例文・類語

のみ[副助]

[副助]種々の語に付く。
ある一つの事柄・状態に限定していう意を表す。…だけ。…ばかり。「あとは結果を待つのみである」「日本のみならず全世界の問題だ」
「ももづたふ磐余いはれの池に鳴くかもを今日―見てや雲隠りなむ」〈・四一六〉
ある一つの事柄・状態を取り出して強調する意を表す。ただもう。「色合いが美しいのみで、何のとりえもない絵だ」
「み心を―惑はして去りなむことの、悲しく耐へ難く侍るなり」〈竹取
(文末にあって)感動を込めて強く言い切る意を表す。「あとは開会式を待つのみ
いかで反逆ほんぎゃく凶乱をしづめん―」〈平家・七〉
[補説]「の身」から出て、「それ自身」というように上の語を強く指示するのが原義という。現代語では、主に文語的表現に用いられる。→のみかのみならず

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「のみ」の意味・わかりやすい解説

のみ
のみ / 鑿

木材に穴をあけたり、割ったり、削ったりする道具。歴史上、登呂(とろ)遺跡出土の木材には、のみでの加工の痕跡がみられ、法隆寺造営では数種類ののみが使われていた。古代ののみのほとんどが両刃と袋柄(ふくろえ)であった。木材の製材にのみを使って打ち割る方法がなされていて、片刃より両刃のほうが割りやすかったからであると考えられる。15世紀後半ごろ大鋸(おが)による挽割(ひきわり)製材が普及しだし、両刃からより精密な加工に適した片刃に変わっていった。

 のみは、使い方により、たたきのみと突(つき)のみの2種類に大きく分けられる。たたきのみは玄能(げんのう)でたたいて掘り、突のみは突いて表面を削る。だが、刃先の形や刃幅の寸法によって、驚くほど多彩な種類があり、のみこそが大工道具のなかで最多の点数を誇っている。たたきのみは使う目的に応じ、刃先の幅や首の長さ、柄の長さの寸法にくふうが施される。たとえば柱や梁(はり)などの大きな構造材を掘る本たたきは首が長く、道具も頑丈なつくりである。これに対して大入(おおいれ)のみ(追入(おいれ)のみ)は繊細な加工を要する造作(ぞうさく)材に使うから、刃先が薄く首も短い。さらに、刻む形により丸のみ、蟻(あり)のみ、鏝(こて)のみ、向待(むこうまち)のみ(向う区のみ)など異なる刃形を使い分ける。

 のみの構造は、穂(穂先=首の金属部分)、口金(穂と柄の装着部分)、柄(木製部分)、冠(かつら)(たたきのみの柄の末端部分)で構成されている。のみの裏には、裏透(うらすき)といってくぼんでいるところがある。裏透とは、片刃の刃物の裏側を削り取った部分で、これがあることで研ぐ面積が少なくなり研ぐのが楽になるし、また裏面が平らに研げる。裏面が平らでなければ、まっすぐに掘れなくなってしまう。

 木柄(もくえ)の装着形式には、茎(なかご)式と袋式がある。茎式は、穂部分の端部(茎)を柄に挿入した形式で、袋式は、穂部分を袋状につくり柄を挿入した形式である。15世紀ごろ、のみの構造・形状も、茎式・袋式併存、両刃・片刃併存から、柄を装着する部分が茎式で、刃部断面が片刃のものへ統一されていったと考えられる。

 のみの種類は、20世紀前半には、構造材加工用としてたたきのみ・突のみの2種17点、造作材加工用は大入のみ・向待のみ・鎬(しのぎ)のみ・平鏝のみ・掻出(かきだし)のみ・打出のみの6種24点、接合材打込穴加工用は込栓(こみせん)穴掘のみ・平鐔(ひらつば)のみ・丸鐔のみの3種3点、丸太材加工用は丸のみの1種5点で計12種49点あった。

[赤尾建蔵 2021年7月16日]


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