改訂新版 世界大百科事典 「チタンカーバイド」の意味・わかりやすい解説
チタンカーバイド
titanium carbide
チタンの炭化物で,炭化チタンともいう。化学式TiC。融点は3193±56℃,比重は4.9,ビッカース硬さは約3200。TiC粉末と結合用金属粉末にモリブデンMoまたはモリブデンカーバイドMo2Cを加えてつくったTiC基超硬合金は切削工具に用いられる。金属の酸化物や炭化物などをコバルトCo,ニッケルNiなどで結合した焼結体を一般にサーメットと呼ぶが,日本の工具関係者では,サーメット工具といえばこのTiC基の工具を指す。なおサーメットcermetとは,セラミックスceramicsと金属metalの英語から合成した語である。TiCはタングステンカーバイドWCに比べて硬度・融点が高く,耐酸化性・耐溶着性に優れ,鉄との摩擦係数も低い。WC基超硬合金工具と比較してTiC基のそれは,高速切削での工具摩耗量が少なく,得られる仕上面もよい。問題点は,もろさと急熱急冷に弱いことである。WCを母材として,その上に数μm厚さのTiC薄膜を被覆した工具も使われている。母材の靱性(じんせい)と表面硬質膜の耐摩耗性を利用したものである。TiCはWC上に被覆しやすい材料でもある。
執筆者:今中 治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報